脂肪腫,血管脂肪腫
脂肪腫 lipoma
- 脳にできても,何でもないのでほっておくものです
- ちょっと難しいのですが,WHOの脳腫瘍分類ではmesenchymal, non-meningothelial tumorsに分類される脳腫瘍です
- 脳の軟膜から発生します
- 良性腫瘍であり,大きくなりません
- 見つけたら正確に診断だけして何も治療しません
- 経過観察の必要もありません
- 脳槽といって髄液が入っている隙間にできます,小脳橋角槽,鞍上槽,四丘体槽,迂回槽などです
- 脊髄にできるものは,脳とは全く違うので,脊髄の専門家に聞いてください
- 脊髄にできるものでは二分脊椎に合併するものが多いです
- 脳にできるもので,症状を出すのはものすごくまれです
- ですから,治療をしなければならないことは滅多にありません
- 脳梁の形成異常を合併することが多いです
- 頭蓋内の脂肪腫は摘出する必要がありませんが,もし摘出しようとしても脳や脳神経に強く癒着(浸潤)していて剥がすことができません
脳梁の脂肪腫
小児にみつかって?しまった脂肪腫です。左のT1強調画像では高信号(白く)に見えます。右の脂肪抑制画像では,脂肪の高信号は抑制されて低信号(黒く)に見えます。これで診断は終わりです。
何にも悪いことはしないのでほっておきます。左のFLAIR画像でも白く見えます。右のT1強調矢状断層では,脳梁の低形成(異形成)が見られます。
少し専門的ですが,この脳梁の形成異常は何の症状も出しません。脳梁は一見,低形成に見えるのですが機能は正常です。理由は,胎生早期に脂肪腫がここにできてしまうので,脂肪腫の軟膜への癒着によって,脳梁の発育伸展が妨げられるだけだからです。前の方にただ単に引き攣れているだけです。
大脳鎌の脂肪腫と石灰化
前頭部大脳鎌の脂肪腫です。周囲に強い石灰化が見られます(左側のCT)
病理
腫瘍ですが,病理は単なる正常脂肪組織と同じです。ヒアリン化した小血管と結合織の隔壁を有し,石灰化を伴うことがあります。
血管脂肪腫 angiolipoma
- 極めてまれですからあまり考えに入れなくてもよい腫瘍ですし,手術前に診断することはかなり難しいです
- 豊富な血管組織に脂肪組織を伴う腫瘍です
- これは本質的には脂肪腫ではなく,血管腫に脂肪組織が混じっているものと解釈されます
- 過誤腫 hamartomaと呼ばれる良性腫瘍に相当するもので,増大しません
- 頭蓋底に近いトルコ鞍近傍腫瘍 parasellar tumorとして発見されることが多いです
- 症状がなくて偶然発見される,あるいは血管腫としての症状を呈します
- 画像診断は,動静脈期奇形や血管腫の中に脂肪組織が混じっているような画像が特徴です,もともと血管腫です
- 病理所見では,境界明瞭な腫瘍で腫瘍被膜の内側に毛細血管組織が豊富に認められます
- フィブリン血栓が見られることが特徴です
- 年齢とともに間質の結合組織の比率が増加します
- 治療が必要な時は血管腫として対応します