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リハビリテーションケア

利用者・家族のリハビリテーションへの希望の把握

Q:リハビリテーション希望がない場合の必要性の伝え方
リハビリテーション希望はないが、ナースとして必要性を感じる場合には、必要性を利用者・家族・ケアマネに説明し、介入できるようにしています。リハビリテーションの必要性はあるけれど、利用者や家族から希望がない場合、どこまで必要性を伝えていけば良いのでしょうか?

A1:高齢者の場合、リハビリと聞くと運動練習を思い出して、「もう年だからいらない」「なにもしたいことはない」とおっしゃることがあります。だからといって、何もしないでいることは廃用を進めてしまうので、看護師としては何とかしたいという気持ちになりますよね。リハビリテーションに対するやる気が出ないときとは目標が見えない、目標が高すぎて到達できないと感じる、自分の力を信じられない、自尊心が低下している、自分がしている感じを持てない、していることの意味や価値を見いだせない、このような時であるといわれています(遠藤淑美、超リハ学、P4-5、文光堂、2005)。運動練習に意味を感じられないようなとき、看護師としては高齢者の興味のあること、好きなこと、大切にしていることを一緒に考え理解し、そこに引き付けた生活機能の拡大を狙って活動範囲を広げることから始めるのが効果的という研究結果もあります(湯浅、2005)。リハビリテーションの希望は高齢者だけで作ることはできず、看護師や家族との相互作用で一緒に作っていくものととらえてみるとよいかもしれません。リハビリテーション看護の永遠のテーマである、リハビリテーションの希望が見いだせないときのかかわり方について、さらにこの場で対話していけるとよいと思います。

A2:リハビリテーションが必要と思われた理由を具体的にして、アプローチされてはいかがでしょうか。「このままではいけない」とか「もっといろんなことができるのでは?」など考えられたのではないでしょうか。例えば、臥床時間が長い利用者さんに「少し起きてみましょうか?」「座ってお茶でも飲みませんか?」「座ってお庭でも眺めましょうか?」とアプローチするのも一つの手段です。起きる→座位保持をする→お茶を飲む→お茶を飲みながら庭を眺める…少なくとも臥床している状態から次のステップにつながっています。このプロセスが「リハビリテーション」なのです(このプロセスの中に様々な技術が必要ですが)。リハビリテーションはPT、OT、STなどのいわゆるリハ専門職だけが行うものではありません。むしろ、利用者さんの生活をしっかり見ていらっしゃる看護師が行う方が効果的であることが多いのです。ですから、冒頭に記述した「リハビリテーションの必要性」を自分の中で具体的にイメージし、「リハビリテーション」という言葉を使わずにアプローチしてみるのも、次につながる有効な手段かと思います。

ADLを維持・拡大する

Q:認知症高齢者の援助方法
70歳代、女性。腰部圧迫骨折を三回繰り返し、左大腿部に神経痛があるが、自宅内を四つん這いで移動し、入浴や排泄は自立。アルツハイマー型認知症が軽度あるためか「面倒くさい」と言われリハビリに対しての意欲が低い状態。本人も家族も短距離の介助歩行と現状維持を目標にしていますがこのままだと徐々にADLが低下して寝たきりになっていうのではないかと、娘さんが心配されています。訪問看護が週に2回入り、股関節周囲の硬くなった筋肉をほぐしていますが、効果を実感されていません。認知症がある高齢者の援助方法について教えて頂きたいです。

A:認知症をお持ちになっていて、なんとか家で暮らしておられる方の場合、「運動練習」を進めても、おっしゃる通りに、これをやると将来こうなるから今を頑張ろうというような論理的な思考が難しいので、意欲につながらないことが多いと思います。まずは身体内部の環境、物理的、人的な環境について再度アセスメントしてみましょう。
ポイントを挙げます。過労状態、疲労状態かどうか?なにか疲労を誘発するイベントがなくても筋力が低下してくると、これまで通りの運動量でも疲労状態に陥りやすいと思います。新しくなにか薬が投与されていないか→動きにくくなったり、ぼんやりしてしまう作用のある薬は思いのほか多いです。内臓の疾患や循環器、呼吸器などに異変はないか、神経痛が悪くなっていないか、またほかに痛みのある部位はないか、腰痛はどうでしょうか。栄養状態はどうでしょう。食べることができているでしょうか。栄養状態は倦怠感に直接的につながります。夜は眠れているでしょうか、睡眠が乱れると余計動きが鈍くなります。まだ色々とあると思いますが、とりあえず運動を阻害する要因の有無を点検しましょう。環境的にはどうでしょうか。娘さんとの関係で動きたくなくなる要因はないでしょうか。看護の方向性としては、動くことが面倒な状態では運動練習に取り組むことは難しいので、疲労を軽減して全体的に活動量をキープするように生活リズムを整えていくことを行う。次に活動耐性を上げていく、この時も下半身だけというのではなく、全身の動きを引き出せるように「動きたくなる」「動かなくてはいけない」環境をつくることが重要と思います。動きたくなくなる要因を探索して減らす。股関節だけでなく全身のストレッチやマッサージを行う、というように、心地よく動ける状況を整えて動いていただくことで、動こうとする(運動でなくてもよい)意欲がわいてくることがあります。
認知症のある方のリハは生活リズムを活性化し、全体的な運動量をキープすることが基本と思います。詳しくは、「中島紀恵子、石垣和子監修、酒井郁子、北川公子、佐藤和佳子、伴真由美編集:高齢者の生活機能再獲得のためのケアプロトコール、日本看護協会出版会、2010」の「生活リズム調整援助」の章をご参照いただけると活動耐性の低下へのケアプロトコールがあります。ご参考になるかもしれません。

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