訪問看護師応援サイト

排便ケア

初期アセスメント

Q:ブリストル便形状スケールとは
ブリストル便形状スケールとはどういうものでしょうか?

A:URLで申し訳ありませんが、以下のサイトにブリストル便形状スケールが載っています。
http://www.carenavi.jp/jissen/ben_care/shouka/shouka_03.html
Reply:便の硬さが7段階になっているのですね。スタッフやヘルパーと表現を統一して記載すると、情報共有がスムースになりそうです。

排便コントロール方法の検討

Q:神経障害の利用者の排便ケア
頸椎症術後、神経因性膀胱、糖尿病の寝たきり高齢者の排便ケアについてご相談があります。その方は、週に3回の訪問の中で、摘便をして便を出しています。下剤および浣腸はご本人の拒否により実施していませんでした。その方の便の性状は指にひっかからない泥状便で、摘便に非常に時間がかかります。肛門の括約筋の緊張がなく、おなかに力は入るようなのですが自然排便は難しい感じです。娘さんが食事の準備はしてくれますが、便のことについては(精神疾患があることもあり)何もしません。便が出ていれば連絡が入ります。経済的なこともあり訪問時間が限られ、30分訪問で便だけ出して帰るといった感じです。便が指にひっかからないため出しても出してもすっきり出ず、時間がかかり、結局全部でないため訪問回数を増やしたり、サービスの時間を増やしたりといった状況です。この状況をなんとかするために、何かアドバイスがありましたらよろしくお願いいたします。スタッフ間の話し合いの中で、一度何とかして座らせてみようという話がありました。ポータブルトイレを誰かからもらい、すべりをよくする移乗のための敷物を使って、まずは二人がかりで座らせ、肛門周囲のマッサージなどしながら重力を使って排便を促してみるということです。本日、浣腸を一度したそうですが、摘便よりは量が出ても、やはり出しきれないということでした。

A:ポータブルトイレに座らせてみるとのこと、その後いかがでしたでしょうか。神経障害により排便が難しいこともありそうなので、重力の活用、体位の工夫は取り組むべきことと思います。また、食事内容はいかがでしょうか。食事、排便のパターンがつかめるといいですが、娘さんの協力は今以上は難しそうですね。ショートステイなどを利用する機会があれば、その時に食事や薬剤の調節などをトライして、ケア方法を探る機会にもなりそうです。

Reply: 実は私が受け持ちナースではなく、臨時で何度か訪問していたので相談した事例です。受け持ちナースが数年かかわるなかで、浣腸や下剤は嫌だという本人の希望を尊重し、ずっと摘便をしていたため、ポータブルトイレに座って便をだしてみようという便出しプロジェクトに受け持ちナースも本人も難色を示していました。はじめはポータブルトイレをみせて座ってもらうところから始めようかと別のスタッフと作戦を立てているうちに、ある事件が起こりました。バルンカテーテルから尿が流れてこないという緊急コール。バルンカテーテルが閉塞しており、入れ替えたところ600ml流出。ついでに摘便したところ(午前中に受け持ちナースが摘便しているのですが)、沢山出たというのです。この事件をきっかけに、受け持ちナースの考えが変わり、寝たままじゃいけない、動かなきゃいけないということに気付き、ポータブルトイレ導入に前向きになったのです。先日、受け持ちナースとポータブルトイレを持って行ったところ、車いすに乗って移動することには了承してくれましたが、便の出し方は今までどおりを希望し、ポータブルトイレは断固拒否でした。つまり、本人はまったく困っていないからです。車いすに座っただけで汚い尿が排出され、その効果に本人も大満足。今はまだ、本人がやっと離床に動き出したところ止まりです。食事内容の見直しは、経済的な問題かつ介護力のなさで難しいという結論でした。

A:下剤や浣腸が嫌なのは、どうしてでしょうか。おなかが痛くなる、後で出ると困るなどがあるかもしれません。ポータブルトイレに座るのが習慣づいて、座薬などを併用してすっきり出るという感想が持てればいいのですが。ご本人の満足感が得られるようにしながら、時間をかけながら関わっていくケースだと思います。

Q:ALSの利用者の排便ケア
ALSの利用者です。ALSのため座位がとれません。現在、訪問前日にラキソベロン10滴、訪問時に浣腸+摘便施行しています。便は泥状+有形のものが少しで量的にはさほど出てはいません。今日から胃瘻よりLG21(ヨーグルト)、酸化マグネシウムを注入予定です。それまで約半年間、酸化マグネシウム、ビフィズス菌が入っていませんでした。そのためか、排便ケアでは量が少なく、左下腹部に便塊と思われるものが触れ、本人も痛みを訴え、排便ケアに時間がかかり、双方が大変な思いをしてきたそうです。次回、二週間後の往診時に酸化マグネシウム、ラックビーを以前の処方どおり、処方していただく予定ではいます。質問は、この左下腹部に触診で触れる(医師は便塊だと言っています)ものが、だんだん大きくなり、それは可動性がなく、痛みがあります。その便塊と思われるものを出したいのですが、何か、前述の状況を踏まえてアドバイスはありますでしょうか。ラキソベロンは、以前下痢になったので10滴にしているそうです。先週までは、毎日10滴使っていたそうですが、反応はなかったそうです。水分は1000ml以上、ラコール800ml注入しています。

A:「左下腹部に触診で触れる(医師は便塊だと言っています)ものが、だんだん大きくなり、それは可動性がなく、痛みがあります」というものが、可動性がないとのことから、本当に便塊なのか、が気になっています。本当は、画像などでも調べられるとよいと思います。また、マグネシウム、ラックビーに変更してから、いかがでしょうか?

Reply:経管栄養から高生存ビフィズス菌を注入し三週間ほどが経った頃です。また、並行して行った酸化マグネシウム朝晩は二週間で中止になりました。水様便が家族には困るとのことで中止。受け持ちナースは水様便じゃなくて泥状便だと言っていましたが。ほかに並行して週二回の訪問前日にラキソベロン10滴与薬を行いました。さっそく数日で、今までみられなかった砂利のようなものがたくさん便に混じって出るようになったとのことでした。しかもそれは毎回だそうです。酸化マグネシウムを入れていた時期は毎日排便があり、入れなくなってからは訪問看護の日だけだそうです。腹部の便塊は、見た目は変わっていません。

A:ご家族は、水様便でなければ対応可能なようですね。水様だと、おむつ交換が難しいので困る、ということでしょうか。また、ラキソベロンにて、砂利のようなもの(便の一部?)が出たとのこと。腸内環境が整ってくるとよいのですが。

Q:上行結腸癌の利用者の排便ケア
高齢女性、上行結腸がん術後(ストーマ造設なし、癌細胞残存あり)、グループホーム入居中。これまで身体的に特に問題なく過ごされていました。ただ、排便コントロールがなかなかつかずに、わざわざ摘便のためだけに病院受診されていたそうです。先日、初めて訪問したのですが、10日ぶりとのことで大量に軟便を排出しました。るいそう著明で28kg程度、肛門括約筋がほとんどないような感じでペラペラ、肛門は狭く、マッサージしても広がらず、痔があるとのことで摘便を痛がり、少し出血してしまうような状況でした。また、便の性状が粘土状で指に便がひっかからず、肛門を広げることもできないことから摘便は無理でした。そこで、ポータブルトイレに座らせて、肛門周囲をマッサージしながら、ご本人にも協力してもらい、絞り出すような(牛の乳搾りのような?)手つきで出した次第です。ご本人は痛いし、疲れるし…もっといい方法はないものだろうかとご相談した次第です。大建中湯、マグミット、プルーン、野菜ジュース、青汁、ビフィズス菌(市販)、甘酒などおなかによさそうなものは豊富に持っています。

A:粘土状の便の摘便、難しいと思います。軟便の場合、「示指の手掌側を直腸背面(仙骨尾骨側)に向け、尾骨側に肛門を広げ、示指爪側に便を乗せて誘導する」方法でうまく便をリードして、出す方法もあるようです。以下の参考文献をご紹介します。
・山田正己、田中靖代:安全で苦痛の少ない摘便法、EBNURSING、9(3)、2009.
・西村かおる:アセスメントに基づく排便ケア、中央法規出版、2008.
しかし粘土状ですと、するするとは出てこないかもしれませんね。便の形状を整えること、できるだけ座る形にして重力をつかうことが大切ですが、すでに工夫をされているようですね。

Q:脳挫傷後片麻痺の利用者の排便ケア
50歳代、男性。脳挫傷の後遺症(片麻痺と失語症)。経管栄養での食事。ADLは、ほぼ寝たきりで、介助にて車椅子に移乗する程度。週に2回訪問看護にて排便ケアをおこなっています。現在、マグミット2錠朝夕とケア前日にラキソベロンを7滴内服しています。便が硬めに移行し、マグミットを3錠に増量すると泥状便が1日に2回~3回出てしまいました。マグミットを2錠に戻し、ラキソベロンを増やすと頻回の排便はありませんが、ケア時にスッキリ排便がありません。また、最近グリセリン浣腸に対しての反応が鈍くなってきています。水分量も内服薬も変化はないのですが、便の性状にぶれがあります。便を軟らかくして、毎日でも排便がある事は良いことですが、ご家族の負担が大きくなり、大変なのが現実。以前は色々な薬も試してみたそうなのですが、そのたびに下痢にみまわれご家族がまいってしまった様で、積極的に下剤の変更などは希望していません。

A1:自然排便と家族の負担の間との兼ね合いをとるのは、訪問看護の永遠の課題だと思います。排便時のすっきり感がないとのことでしたが、体位などはどのようにされているでしょうか?これも人手が必要ですが、車いすに移乗できるとすっきり感はかなり違うことが、高齢者ケア施設の事例でも明らかになっています。座薬の反応がよい人であればこの方法も良いと思いますが、過去に試されましたか。また経管栄養の内容、水分の調整で工夫ができる可能性はないでしょうか。

A2:便性状を安定させるという目的で、整腸剤の内服や腸内細菌を活性化させるようなサプリメントや経管栄養から注入できるようなものを検討してみるのはどうでしょうか。

Reply1:経管栄養の内容はエンシュアリキッド1250ml+白湯1000ml/日です。排便ケアはベッド上でグリセリン浣腸、腹部マッサージ、車椅子でトイレに移動、トイレで排便、指診にて残便があったら摘便と、いう感じです。腸内環境のこと、私も奥様にお話しているのですが、なかなか受け入れていただけず。と言うのも、今まで色々な栄養を試したり内服の変更があるたびに、ものすごい下痢にみまわれたご経験があり、ファイバーやビオフェルミンなどの導入には積極的にはなれないようです。奥様としては、できるだけ新しい物を取り入れるのでなく、今行っている事などで、何とかならないものか、とお考えのようです。いろいろとケアを工夫したいのですが、いまいち新しい物を導入できないという現状のため、なかなか改善しません。ご家族と一緒に納得のいく排便を目指していますが、難しいです。

A3:下痢や便失禁で大変な経験をしたことのあるご家族の場合、下剤の変更などに慎重になるお気持ち、とてもよくわかります。そうしますとケアの方向性としては、訪問時にご本人にすっきり排便していただき、かつ、奥さんが思わぬ排便などで大変な気持ちにならないような方法でしょうか。他の下剤(漢方薬含む)や座薬などを含めて試して、その方にあったものを見つけられるとよいのですが、薬の調整が難しいとなると、非薬物的ケアの工夫でしょうか。訪問前に奥さんにおなかを温めておいていただくことなどは、また負担になってしまうでしょうか。排便時の体位は腹圧がかけやすくなっているでしょうか(足底が床につき、やや前傾になって膝を曲げる、便座の高さが合い、前方に手すりがあるとしっかりと腹圧をかけることができます)。PT、OT、薬剤師など、多職種と話し合うことでも、よいアイデアが出てくるのではないかと思います。

A4:排便の調整は本当に難しい課題だと思います。またご家族の意向もうなずけるものであり、訪問看護師としても悩ましいですよね。以前似たような介護者さんのいるお宅に訪問看護しておりましたが、そのときは薬に対する不信があったので、「薬とは違う」ということを説明したうえでオリゴ糖を使用し、若干の改善が見られました。質問者さまの利用者さんはファイバーの導入も難しいようですので、直接お役にたつかどうかはわからないですが。またマグミットを液状の形態に変更し、微調整を試みることは可能でしょうか。形が変わっても、薬効自体は同じであることを納得していただければ、日々の便に合わせた調整ができるのではないかな、とも思います。どちらにしてもご家族の了解が必要ですので、時間がかかるかもしれませんが。私自身、このような方にどうかかわればよいか悩んでおりますので、また変化があれば教えていただければうれしいです。

Reply2:この方は脳挫傷の後遺症で、片麻痺と失語症があります。聴理解は良いのですが混乱があり、意思疎通が上手く取れません。健側の足の使い方がうまくなく、立位が取れません。体格はよいです。イボ痔もあり摘便時に痛がります。排便時はシャワーチェアを使い座位姿勢です。マグミット2錠朝夕と週2回の排泄ケア前日にラキソベロンを7滴内服しています。最近グリセリン浣腸に対しての反応が鈍くなってきています。排便がその場では出なく時間がたってからチビチビ出ており、ご家族の負担が大きく不満にもなってきています。そこで教えていただきたいことは、エンシュアリキッド1250ml/日+ケロリーメイトゼリー180ml/日では便量はどのくらいでしょうか。痔に対して、浣腸や摘便の刺激はどのような影響があるのでしょうか。浣腸・摘便をやり続けるのがいいのでしょうか。ご家族の介護負担もあるので、排泄行動(下肢の機能も含めて)や排泄パターンを見直したいと思っています。

A5:このケースは多角的に、多職種の視点を入れて考えたいケースです。排便量など私の方も調べてみます。

A6:薬の調整等につきましては、薬剤師さんを巻き込んでみてはいかがでしょうか?お近くにそのような方がいらっしゃるかどうかはわからないですが、在宅療養に理解があり、熱心にかかわる薬剤師さんも増えてきているようです。うまく巻き込むことができれば、地域の資源として今後も活躍していただけると思います。

Reply3:ご家族と相談し、排便状態の観察をすることにしました。ラキソベロンと浣腸は中止し、いつ、どのような便が、どのように出たかを書いてもらっています。ラキソベロンを中止しても軟便なのでカマを少し減らしています。胃瘻から飲むヨーグルトを少しずつ開始しています。座位バランスの練習もしています。PTの方と話し合い排便姿勢を保つリハビリを検討する予定です。シャワーチェアの検討も今後したいと思います。ただ問題は便失禁が2日に1回位あり、家族の方の負担が不満に変わりつつある事です。理解を得るように話を聞いていこうと思います。イボ痔から出血がありました。量は少ないのですが初めてで家族の方は驚かれました。痔の方の浣腸や摘便について教えてください。

A7:下剤をいったん切って観察してみるという方法は有効だと思います。記録で状況を把握できるようになると、ご家族も納得しやすいと思います。痔の方の浣腸や摘便についての回答は少しお待ちいただければと思います。参考文献:日常生活活動(以下ADL)に対する作業療法―特にトイレ・排泄に関して千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科准教授 安部能成 作業療法を含む医学的リハビリテーションにおいて、ADLは重要な位置を占めている。そのADLの中でも、トイレあるいは排泄は、食事と並んで基盤をなすと考えられている。なお、トイレに関する、理学療法・作業療法・看護のアプローチの違いについては、文献6)p.16表1-7を参照。 まず、第一の問題がある。「トイレ」といった場合は便器や手摺、部屋、床などの環境面を示すのに対し、「排泄」といった場合は、患者さん(対象者)御本人の排泄能力を対象としている。この区分けにより、その対応も異なっている。男性には小用と大用の異なる2つの排泄方法があるが、女性は1種類というように性差もある。第二に、トイレにせよ、排泄にせよ、総論として一般論を述べる場合と、疾患(障害)を前提として具体的に検討する場合に分かれる。総論では、トイレの構造、便器、スイッチ、ペーパーホルダー、手摺などの構造物、床面積や材質、段差などが概論として述べられる。しかし、目の前の対象者に関する具体的介入は書かれていない。これに対して各論では、同じ排便であったとしても、脳卒中片麻痺の場合、脳性麻痺の場合、脊髄損傷による対麻痺の場合、関節リウマチの場合など、身体的動作の特性あるいは活動水準に合わせた記述となっている。しかし、上述のことを勘案した場合、教科書、実践書、及び、関連論文まで範囲を広げても、良いものは殆どない、というのが実情である。これらを踏まえまして、お尋ねにお答え致したいと存じます。排泄には排尿と排便が含まれますが、一回の尿量については、文献6)p.101をご参照ください。ご質問の症例は、エンシュアリキッド1250ml/日+カロリーメイトゼリー180ml/日であり、一日の必要量としては1200~1500mlといわれておりますので、充分な量を取られているようですが、食物ではありませんので、宿便・便秘の傾向は強まると思います。立位が取れないので、歩行も不可能でしょうから、腸管の蠕動運動も低下しているものと思われます。通常200~400mlが1日の便塊の量のようですが、これ以下になっているのではないでしょうか?私は、立位不能の患者さんには斜面台を用いた他動的立位活動を実施し、腸管の蠕動運動を高め、排便促進のリハビリテーションを実施したことがあります。この症例は多発性骨髄腫で歩行不能となっており、完全臥床生活で移動は全て車椅子でした。浣腸・摘便をやり続けるのがいいのでしょうか?蠕動運動の促進という観点からみると、浣腸・摘便を続けると内臓筋の活動は減弱しますので、望ましくないと思います。可能なら、腹圧を高めるための身体活動、文献7)p.39-40等を行うのは如何でしょうか? ご家族の介護負担もあるので、排泄行動(下肢の機能も含めて)や排泄パターンを見直したいと思っています。一般的に自動運動を加えることにより、排泄行動を支える体力、筋力、持久力、呼吸力、などを向上させる方が良いと思われます。
―文献―

  • 土屋・今田・大川編集、日常生活活動(動作)第3版、p.50、医歯薬出版、1992
  • 初山泰弘監訳、ケアラーズハンドブック、p.108-116、南江堂、1999
  • 山根・中村・神作・荻原編集、移ることの障害とアプローチ、p.29-40、三輪書店、2004
  • 鶴見隆正編集、日常生活活動学・生活環境学第2版、p.86-88、p.219-220、p.256、p.267、医学書院、2005
  • 生田宗博編集、ADL第2版、p.51、p.72、p.114、p.206-212、p.217-224、三輪書店、2005
  • 千住秀明監修、橋本・天満編集、日常生活活動(ADL)第2版、p.101、神陵文庫、2007
  • 坂本親宣、プロの技術で家庭リハビリ、p.39-40、p.57-58、p.122-125、ミネルヴァ書房、2007
  • 伊藤利之・鎌倉矩子編集、ADLとその周辺第2版、p.15、p.66-68、p.101、医学書院、2008
  • 日本作業療法士協会監修、作業療法学全書[改訂第3版]第11巻日常生活活動、p.21-23、協同医書、2010

A8:神経内科の医師に浣腸についてご意見をいただきましたので、お知らせいたします。

  • 浣腸については、現場の先生方等からの口伝えで連用で依存性が出てきてしまうと聞いておりましたが、今回改めて日本医薬品集を見てみましたら「重要な基本的注意」として「連用による耐性の増大等のため効果が減弱し、薬剤に頼りがちになることがあるので長期連用を避ける」と書いてありました。これにどれだけの根拠があるのかまではわかりませんが、今回改めて文書で確認できました。
  • 自律神経障害が出てくる多系統萎縮症の方の便秘に、大健中湯が効果ありとの論文をみたことがあり、大腸を定常的に動かしてあげる目的で持続的に使っている方もいます。

痔の方についてですが、本にうまくあたれない状況です。

摘便・浣腸時の注意点

Q:巨大結腸の利用者の排便ケア
脳梗塞由来の麻痺と認知症があり、寝たきりで、尿・便意共にない女性でした。酸化マグネシウム・ラキソベロンを使っていましたが自力での排便は不可能で、2回/週のペースで訪問し、浣腸後、ポータブルトイレでの摘便を行っていました。直腸が大きく拡がっており、そこに多量の便が溜まってしまう状態でした(食欲旺盛な方でした)。摘便時、非常に痛がり、毎回申し訳なく思いながら訪問していました。便は普通~やや軟便でコントロールされていたと思います。このように、薬剤で便が調整されていても自力で排泄できず、摘便をとても痛がる方の場合、どのようなことに留意していたらより安楽なケアを提供できたでしょうか。今後のために、もしよい案がありましたら教えていただければと思います。

A:X線写真などに基づく正確な診断がないとわかりませんが、巨大結腸の状態になっていた可能性も考えられますね。巨大結腸とは、便がうまく出せないために大腸が異常に広がり、巨大な便が詰まることであり、脳血管障害も原因疾患となります。ケアとしては、定期的な排便となるようにする、下剤を管理する(便性を軟らかくする)、食事を管理する(ガスの発生が多くなる食品や便秘に傾くような食事とならないようにする)があります(参考:西村かおる、アセスメントに基づく排便ケア、中央法規出版、2008)。ケアとしては、便を出しやすい体位をみつけてスムースな排便環境を整えること、食事を見直すなどの方法があります。

Reply:おそらく巨大結腸であっただろうと思われます。便の硬さのコントロールについては、やや柔らかめだったものの、家族の負担軽減のために看護師訪問時以外での排便を避けようとしていました。ご本人のことを考えると、もう少し柔らかくできればよかったかもしれないです。限られた時間とタイミングで安楽なケアを行う難しさを感じました。次のケアに活かしていきたいと思います。

運動管理の助言

Q:排便体操について
ADLの高い利用者で、ベッド上座位で可能な排便体操を行っていました。どんな体操なのかは拝見することができなかったのですが、そのような体操があるのでしたら教えてください。

A:排便体操について自身は多くを試したことはないのですが、ユニチャームが運営する以下のホームページにいろいろ載っています。
http://www.carenavi.jp/jissen/ben_care/taisou/validity.html
この中でみなさんがよく試されるのは、おなかののの字マッサージではないでしょうか?排便体操の効用としては、下剤の中止または減量、排便習慣の確立、便の変化、その他(おならが増え、膨満感による苦痛が減少した、排便体操の効果が自覚できたことで、利用者の積極性・参加意欲の向上が確認できた)が挙げられています。その他、腹臥位療法も着目されていますが、その効用のうち、「便秘の予防と改善」「尿便失禁の防止」「認知障害の改善」「全身的改善」は、経験的には認められるもののまだ科学的には証明されてはいないそうです。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02868_04
皆さんも、このような下剤以外の便秘予防・改善方法をご存知でしたら、お寄せいただきたいと思います。

頻回の便失禁、水様便への対応

Q:便を出し切る排便処置
寝たきり・寝たきりに近い患者さんに排便処置後、便が少しずつもれ出るのが続くことがあり、看護師がいないときにそれが起きるとご家族の負担になってしまいます。訪問時間以内にすっきり排便を促し、その後は排便しないという状況を作りたいのですが、どなたかお知恵を拝借できませんか。

A:私自身、便終了後の便失禁は在宅療養者と家族の大きな負担であることから、熟練訪問看護師や家族介護者が便を出し切る排便処置を行う工夫を行っていることを耳にしたことから、過去に卒業研究の学生とその技術の明確化と検討を行ったことがあります。 便失禁を予防する技術として、「肛門が閉じる」「腸がおりる・とじる」「粘液が出る」の3つを摘便終了時の目安として、その後の便失禁との関連を調べました。 その結果は以下のとおりです。

  • 「粘液が出る」という摘便終了の目安がみられた摘便では、みられなかったときよりも便失禁が有意に少なかった。
  • 「粘液が出る」は浣腸を実施した場合にのみ発生した。
  • 「腸がおりる・とじる」という目安がみられた摘便では、便失禁が少ない傾向がみられた。

実践への示唆として、「浣腸をする場合、粘液が出るまで摘便を実施することが、便失禁予防に役立つ可能性がある」ことがわかりました。
―文献―
タイトル:摘便後の便失禁を予防する看護実践モデルの作成および適用による実証的検討
著者:三輪真理、辻村真由子、鈴木育子、石垣和子、山本則子
日本看護技術学会誌8巻1号Page84-92(2009.04)

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