Breast and Endocrine Surgery
科長挨拶
患者さん一人ひとりに最善の治療を
- がんゲノム情報に基づき、手術・放射線・薬物などを組み合わせた個別化治療を行っています。
- 患者さんの考え方やライフスタイルにあわせて治療方針を決定します。
東京大学医学部附属病院 乳腺内分泌外科 病院教授
東京大学大学院医学系研究科 乳腺内分泌外科学 准教授
田辺 真彦

乳がんや甲状腺がんの治療は、そのバイオロジーの解明に基づき、年々進化を遂げています。具体的には、多遺伝子発現アッセイに基づく治療の個別化、がん増殖メカニズムに着目した分子標的治療薬の開発、遺伝性乳がん卵巣がん(Hereditary Breast and Ovarian Cancer; HBOC)をはじめとする遺伝性腫瘍への対策などが挙げられます。
乳がんの治療は、局所治療(手術療法・放射線療法)と全身治療(薬物療法)に大別されます。かつては、しこりの大きさやリンパ節転移で規定される病期(ステージ)が重視されていましたが、現在では、乳がんサブタイプ分類に基づいた治療が基本となり、さらには、多遺伝子発現アッセイによる再発リスク評価も保険診療で実施できるようになりました。また、遺伝性乳がん治療をはじめとして、乳がん治療の個別化も進んでいます。乳がんの特徴(個性)と進行度に応じた治療計画を立て、再発リスクを低減し、根治を目指します。さらには、整容性、妊孕性温存希望、生活の質、家庭やお仕事との両立など、患者さんおひとりおひとりの生き方や考え方、ライフスタイルに応じて治療方針を相談し、決定しています。
甲状腺がんの治療も、手術・放射線・薬物など様々な治療を組み合わせることが必要です。手術の範囲や時期を、甲状腺がんの種類や病期に基づいて検討します。また、微小がん、がん疑いの腫瘍、良性腫瘍、副甲状腺腺腫に対する手術も行う場合があります。いずれにおいても患者さん個別の希望や状態を考慮して決定することが重要です。
私たちは、治療のゴール(根治を目指すこと)に加え、このような一連の治療方針決定プロセスも重要視して最善の治療を目指しています。がんの特徴(個性)に応じた治療が推奨される時代となり、がんゲノム情報に基づくプレシジョンメディシンの発展に伴い、今後ますます治療の個別化が進むことが予測されます。がんの個性も重要ですが、治療を受ける患者さんひとりひとりの個性がより大切なことは言うまでもありません。全人的かつ包括的な真のプレシジョンメディシンを目指して心のこもった治療を心がけていきます。