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仙台市の遺伝カウンセリング事業について

仙台市の遺伝カウンセリング事業について

                             (室月 淳 2012年9月28日)

仙台市では医療・健康相談のひとつとして遺伝カウンセリング(遺伝相談)を受けつけています.わが国では'70年代から'80年代にかけて各地に行政主導の遺伝相談システムがつくられ,主に保健所を中心とした地域ぐるみの保健サービスの一環として遺伝相談が行われるようになりましたが,仙台市でも1983年に遺伝相談事業が始まり,現在も青葉区保健福祉センターで月に1日の予約制で行われています.

遺伝カウンセリングの目的は,遺伝についての不安や悩みをもつ市民に対してカウンセリングを行い,自分自身で適切な判断ができるように支援することにあります.具体的な対象として,疾患が遺伝性のものかどうかで悩んでいる方,結婚等に際し遺伝の問題に悩んでいる方,親族等に遺伝性と思われる疾患があり子どもへの影響を心配する方,そのほか遺伝についての相談が必要と思われる方などがあげられます.

案内方法としては,毎月の市政だより(写真1)や仙台市のホームページ,あるいはチラシ(写真2)を各区相談窓口や関係機関窓口で配布したり,母子健康手帳交付時に全員へわたしたりしています.

写真1. 市政だより(2012年8月号)

写真2. チラシ「遺伝カウンセリング(遺伝相談)のお知らせ」

 一次相談は各区保健福祉センターが常時受け付けており,その相談で解決すれば終了となりますが,必要に応じて専門の遺伝カウンセラーによる二次相談が行われることになります.遺伝カウンセラーは東北大学病院や宮城県立こども病院などの遺伝専門医が担当しています.二次相談の実施は月一回で3件までの予約となります.

市民のさまざまな疑問や悩みに対応し,適切な判断や自己決定ができるようにするための場であることが本事業の意義と役割です.また相談内容にあわせた保健・福祉の情報提供や,本人や家族に対して継続的な支援を行なう保健活動としての意義があります.最終的には疾病や障害を受け止め積極的に生きていくことへの支援をめざしています.

近年は難病を対象とした医療は高度先進医療を標榜する専門医療機関に集中する傾向があり,また地域保健活動も保健所機構の変革によって以前のような活動性が失われつつある現状があります.実際に仙台市の遺伝相談事業における二次相談は長いあいだ年間30〜40件台を推移してきましたが,この数年は10〜20件台に落ち込んでいます.しかしこういった高度先進医療の時代においてこそ,先端医療と住民の日常生活との間の乖離を埋めるためにこそ地域保健活動の重要性が増すと考えられます.

またこれまでは保健師による地域保健活動の中で遺伝カウンセリングのニーズが掘り起こされ,専門医療につながるケースがしばしば見られてきました.最近ではインターネットによる医療アクセスが増加する傾向にありますが,情報格差の問題すなわち情報弱者と呼ばれるひとびとや,本当に必要な人が適切な専門医療や遺伝カウンセリングを受けられるかという視点で考えますと,地域保健サービスとしての遺伝カウンセリングの重要性は決してなくなることはないと考えられます.

参考

佐藤幸子,高橋宏子,鈴木清子,他:仙台市遺伝相談の実施状況.臨床遺伝研究1996;18:99-106

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カウンタ 2643(2012年9月29日より)