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新しい切迫早産治療薬レトシバンについて

新しい切迫早産治療薬レトシバンについて

                                (室月 淳 2015年11月27日)

以下の文章は,2015年11月14日(土)に順天堂大学医学部附属順天堂医院でおこなわれた第9回日本早産予防研究会学術集会でおこなった講演の抄録です.

 

新しい切迫早産治療薬レトシバンについて−非ペプチド型オキシトシン受容体拮抗剤

レトシバンは切迫早産治療薬として新しく開発された非ペプチド性オキシトシン受容体拮抗剤non-peptide oxytocin receptor antagonistである.ヨーロッパで主に使用されているペプチド性のアトシバンとは特性が異なり,オキシトシン受容体にたいする選択性が高くなっている.またほかの切迫早産治療薬にくらべると副作用がきわめて少ないという利点をもつ.北米でおこなわれたレトシバンの第2相試験の結果はすでに論文で発表されているが,48時間の投与でプラシーボ群と比較して8.2日間の有意の妊娠延長効果が得られた.それにくわえて新生児予後にも改善を認めていた.周知のとおり,現在存在する子宮収縮抑制剤のいずれも新生児予後を改善できるほどの有意の妊娠延長効果がなく,母体へのステロイド投与のための短期間の時間稼ぎとして使われているにすぎないのが世界的なコンセンサスであった.第2相試験の結果をみるかぎり,レトシバンの妊娠延長効果はこれまでの治療薬が成し得なかったもので,現在予定されている第3相試験でも同様の結果がでるようであれば,世界の切迫早産治療のスタンダードを根本的にかえる可能性がある.

これまで日本における切迫早産の治療は,アクティブではない症例も含め,既存の治療薬を長期間にわたり漫然と投与すされることが多く,エビデンスを軽視したやや過剰医療の傾向にあった.レトシバンはshort term tocolysisによって新生児予後改善が期待できるほどの妊娠延長効果が得られることを前提に開発されており,仮に日本で認可されることになれば,単純に切迫早産の治療薬がかわるのみならず,治療方法や治療対象がかわっていくことになるだろう.切迫早産治療そのものを考えなおす重要な意義をもっている. 

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カウンタ 14476(2015年11月27日より)