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各論のレジュメ2

各論のレジュメ2

 アペール(アペルト)症候群

疾患について

Apert症候群は,頭蓋骨早期癒合,特徴的な顔貌,すなわちcraniofacial dysostosisと,手足の対称的な合指趾症を主症状とする遺伝性疾患である.1906年にフランスの医師 Apertがはじめて報告した.現在は,FGFR-related craniosynostosis syndrome(ほかにMuenke症候群,Crouzon症候群,Jackson-Weiss症候群,Pfeiffer 症候群,Beare-Stevenson症候群が含まれる)に分類される.尖頭,突出した前額,眼間開離,眼球突出などの特徴的な顔貌,合指趾(2, 3, 4指趾の完全癒合),おおきな母指趾などの特徴を有する.頻度は1/100,000 - 500,000出生.性差なし.いずれの人種にも認められる.

遺伝カウンセリング

常染色体優性遺伝であるが,ほとんどすべての例においてde novoで発症する.両親になんらかの症状がみとめられなければ,次子再発リスクはほぼ無視していよい(手足などに軽微な症状がないかどうかをよく調べる).原因遺伝子として線維芽細胞増殖因子受容体2(fibroblast growth factor receptor 2: FGFR2)遺伝子(遺伝子座位:10q26)が同定されている.Apert症候群では,98%以上に本遺伝子に変異を認め,2か所のホットスポット(Pro250ArgとSer252Trp)にほぼ限局する.父の高年齢と新生突然変異の明らかな相関がみとめられる(孤発例における父親の平均年齢は高い).

従来より超音波検査などでの出生前診断報告は多い.遺伝子診断も技術的には可能.

 

 自閉症スペクトラム

疾患について

古典的な自閉症とアスペルガー症候群に共通する特徴として,社会的コミュニケーションの困難や,狭い興味と繰り返しの行動などがあげられ,近年は自閉症スペクトラムとしてとらえられるようになっている.自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder; ASD)といわれることもある.ただし自閉症スペクトラムは「障害」というよりは「神経学的に非定型」であると認識されるようになっており,一部のひとには才能を生じさせることもあるといった事実を包含するものである.

遺伝カウンセリング

自閉症スペクトラムの背景に遺伝的素因があることは双生児の研究によって確められている.一卵性双生児の場合,どちらかが自閉症であれば,もう一方が自閉症スペクトラム症状をもつ確率は60-90%といわれる.二卵性双生児では両方が自閉症状である確率は5-10%程度である.家族内の関連症状が考えられていて,ほかの兄弟が自閉症やアスペルガー症候群でなかったとしても,ディスクレシアや言語発達遅滞など関連した発達上の問題をもっている可能性があり,これを幅ひろい自閉症の表現型(Broad autism phenotype; BAP)とよぶことがある.GeneReviews?のASDの記述によると,特発性の場合は多因子疾患と考えるのが一般的で,次子の経験的再発率は5-10%,いわゆる BAPは10-15%とされている.同胞が罹患者のとき,クライアントの子が自閉症スペクトラムとなる経験的危険率は,多因子遺伝の原則から考えると第2度近親はかなり下がることが予想されるが,ただし報告データはない.

自閉症スペクトラムを特定する遺伝子や生物学的マーカーは,一部の染色体異常などによるものをのぞくとまだみつかっていないため,出生前スクリーニングや出生前診断は現時点で不可能である.自閉症やアスペルガー症候群の特徴は,そういったひとたちのアイデンティティの中心的な部分になっており,それが困難というよりは長所もあると感じているひとたちにとっては,出生前診断は自分たちの存在を脅かすと感じるかもしれない.また社会はヒトの遺伝子プールから潜在的に価値のある遺伝子を失ってしまうおそれもある.

クライアントと話をするときは,自閉症スペクトラムの遺伝的背景や経験的危険率だけではなく,以下のことを説明してもいいかもしれない.自閉症スペクトラムは困難なところばかりではなく,非常にすぐれた細部への注意,専門性をうみだす深い集中力,非常にすぐれた記憶力,パターンをみつけだす特異的な能力などの才能を導き出している面もある.疾患の持つ幅の広さを理解していただく必要があり,その幅広さは正規分布としてあらわれ,対人関係の得意・不得意,粘り強さなど,誰でも個性として持っている部分が極端になると疾患概念になるといった説明も可能である.

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カウンタ 5291 (2013年3月3日より)