第3脳室脊索腫様膠腫 コルドイド・グリオーマ chordoid glioma
コルドイド・グリオーマ
chordoid glioma of the third ventricle
- 視床下部・第3脳室前半部にできる境界明瞭なグリオーマです
- 終板 laminaterminalisから発生するとされています
- ゆっくり大きくなります
- 成人,年齢中央値45歳くらいに発生する腫瘍です
- 閉塞性水頭症を生じた場合の症状は頭痛と嘔吐です
- 視床下部性の内分泌障害(特に甲状腺機能低下症)でも発症します
- 視交差を圧迫すると視力視野障害が出ます
- 精神症状,記憶障害の症状は水頭症と視床下部障害のために生じます
- 病理学的には良性ですが,第3脳室内,視床下部腫瘍なので治療は困難です
- 視床下部の損傷が生じると重篤な障害が残ります
- 手術関連死や残存腫瘍の増大で20%ほどの患者さんが死亡するとされています
画像所見(かなり得意的な所見があります)
- 第3脳室前半部ほぼ中央に2から4 cmくらいの腫瘍で発見されます
- 境界は明瞭で,卵円形です
- ガドリニウムで均一に増強されます
- CTで高吸収です
- T1強調像で等信号,T2強調でやや高信号です
- のう胞形成はまれです
- 著明な腫瘍周辺脳浮腫を生じることがあります
- 視床下部,大脳基底核や視索の周囲の脳浮腫です
- 鞍上部構造に腫瘍が癒着することもあるとのことですが,下垂体とは分離できます
- 終板発生なので下垂体柄は後方へ変位します
- PCNSL 脳リンパ腫との鑑別が必要です
- 毛様細胞性星細胞腫とは年齢層が違います
治療
- 開頭手術での摘出です
- 視床下部に強固に癒着し,腫瘍血管は視床下部動脈なので,摘出は困難です
- 出血性で硬いこともあり,腫瘍動脈の切断自体が視床下部損傷を招きます
- ほとんどの場合,全摘出することはできず部分摘出にとどまります
- 部分摘出するとゆっくりですが再増大します
- 高い手術リスクと周術期死亡が報告されています
- 手術合併症は頭蓋咽頭腫に準じます
- しかし,第3脳室発生頭蓋咽頭腫よりさらに難しいと考えたほうがよいでしょう
- 放射線治療や化学療法は有効ではないとされています
- MAP kinaseを抑制するtrametinibという薬剤の臨床試験が進行中です
病理所見
- WHOの成書では以下のように記載されています
- Clusters and cords of epitheliod, GFAP-expressing tumor cells within a variably mucinous stroma typically containing a lymphoplasmacytic infiltrate.
- 粘液基質の中に,GFAP陽性の上皮様腫瘍細胞の集簇があり,リンパ球形質細胞の浸潤が著明な組織像を呈するとでも訳せましょうか
- 低悪性度グリオーマであり,MIB-1 indexはとても低くて0%から1.5%程度とされます
- chordoid meningioma, ependymoma, pilocytic astrocytomaが鑑別するべき腫瘍となります
原因遺伝子
- PRKCA遺伝子変異があります(2018年の報告)
- そのために,正常脳では働いていないMAP kinaseが活性化されています
文献
- Benjamin Goode et al. A recurrent kinase domain mutation in PRKCA defines chordoid glioma of the third ventricle, Nature Communications, 2018
- Martin G, et al.: Chordoid glioma: A neoplasm unique to the hypothalamus and anterior third ventricle. AJNR 22: 464-469, 2001