小児の膠芽腫 glioblastoma of children, pediatric GBM

2016年からは,病理組織像が膠芽腫であっても,histon H3 K27M遺伝子の変異があると膠芽腫と呼ばずにびまん性正中グリオーマ」ということになりました
  • 星細胞系腫瘍の20%程度であり、成人の割合より低いです
  • 分子遺伝学的な発生機序、放射線化学療法への感受性、予後において成人の膠芽腫と違いがあります
  • 小児の膠芽腫の5年生存割合は20%程度で成人とさほどの違いはありません
  • 生存期間中央値は1年半ほどです
  • 5歳以下の子供たちは生存期間が長いことがあります
  • ただし、PNETとの混在など病理診断の問題もありますが、稀に10年近い超長期生存例の報告がある点が、成人とは異なります
  • 治療方法は成人と同じで,手術,放射線治療,テモゾロマイド化学療法です
  • 小児においてもテモゾロマイドは有効とされます
  • でもとても幼い子供には放射線治療を用いることができません
  • 11歳から19歳の子供では放射線治療は生存期間を延長します
  • 逆に,10歳以下で視床脳幹部近傍に発生した例では放射線治療の効果がはっきりしていません
  • BRAF V600E遺伝子変異がある小児膠芽腫には,ベムラフェニブ BRAF inhibitor vemurafenibが有効という報告があります
成人GBMと違うところ
  • 40%くらいで成人と異なる遺伝子変異があり,予後が良いことがあります
  • histon H3変異のあるものは予後が悪いのですが,これは膠芽腫ではなくて,びまん性正中グリオーマと呼びます
  • secondary GBM (IDH変異型) はほとんどありませんが,思春期大脳半球でまれにみられます
  • 多くの癌遺伝子の増幅がある例では予後不良です
  • 巨細胞性膠芽腫 giant cell glioblastomaが約9%あります
  • 大脳半球に見られて予後不良です
注意すること
  • diffuse midline glioma びまん性正中グリオーマを生検すると,膠芽腫と診断されることが多いです
  • でも,病理組織で膠芽腫であってもそれは膠芽腫ではなくて,分子診断でhistone H3-K27Mの変異があればびまん性正中グリオーマです
  • 特に脳幹部と視床のグリオーマでこの誤解が多いでしょう
  • びまん性正中グリオーマでは長期生存がほとんどありません
文献:成人と同じ治療ができる例が少ない

Liu M, et al.: National cancer database analysis of outcomes in pediatric glioblastoma. 2018
19歳までに膠芽腫と診断された1,173例の統計です。58%の小児が,手術・放射線・化学療法を受けました。すべての治療が行われてた数は少なくて,成人よりかなり低い値です。4%ではなんの治療もなされませんでした。

文献:小児膠芽腫の分子マーカーは成人と異なる,予後が良いものがある

Korshunov A, et al.: Integrated analysis of pediatric glioblastoma reveals a subset of biologically favorable tumors with associated molecular prognostic markers. Acta Neuropathol (2015)
20歳未満の膠芽腫の分子解析です。20%でmethylation profilesが低悪性度グリオーマやPXA に類似していて,これらのものでは,生命予後がかなり良かったそうです。PXA様の腫瘍ではBRAF V600E変異とCDKN2Aのhomozygous deletionがありました。残りの80%では,H3.3やIDHの変異が見られています。IDH野生型は36%でした。成人GBMでは,IDH野生型がほとんどであるのと対照的なデータです。複数の癌遺伝子の増幅があるものは予後不良だそうです。

文献:化学療法が有効かははっきりしていない

Sposto R, et al.: The effectiveness of chemotherapy for treatment of high grade astrocytoma in children: results of a randomized trial. A report from the Childrens Cancer Study Group. J Neurooncol. 7:165-177, 1989
1989年にSpostoがChildrens Cancer Study Groupの成績を発表して,化学療法を加えた群の5年生存率が46%,加えない群が18%であって統計学的に有意な差であったという結果でした。これをもって小児膠芽腫にも化学療法を使用するべきだとの意見がありますが,誤りです。この研究には退形成性乏突起膠腫なども混在して含まれていたからです。

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