爪(NAILS)
二分爪(Nail, Bifid)
定義
少なくとも 2 つの爪の間に,何らかの軟部組織を有する指趾(主観的)(図 92)。
コメント
二分爪に関連する事項については, Preaxial polydactylyの定義を参照。罹患した指趾を明記すべきである。もし患者に,完全に分割された爪を伴った,部分的な重複指趾を認めるのであれば,この用語を使うべきではない。
図 92 左足 T1 の二分爪 図 99 も参照 T1 の幅広い母趾と T23 の部分皮膚性合趾症も認める。
凹状爪(Nail, Concave)
定義
自然にみられる長軸(P/D)方向への凸面アーチが,存在しないか,反転した状態(主観的)(図 93)。
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しばしば結果的に皿状爪や匙状爪を呈し,典型例では爪の端部が反転する。罹患した指趾を明記すべきである。バンドリング用語 koi-lonychia は爪の形態異常,すなわち爪の縁がめくり上がったり,薄くなったり,凹状になることを意味する言葉である。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Koilonychia;Spoon shaped nails Nails,dystrophic:“dystrophic”という用語は,通常と異なる形態を示す爪に対し使う用語としては,もはや用いられていない。
図 93 左手 T4 の凹状爪 図 103 も参照左手 F23 および左手 F4 の幅広い指尖も認められる。
融合爪(Nails, Fused)
定義
部分的に分割された爪をもち,長軸方向に分かれている爪板。これらはそれぞれ屈曲し分割された橈骨外側をもつ(主観的)(図 94)。
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“Fused”という言葉が使われているが,病理学的にこれらの爪が分かれ融合したことを意味するものではない。融合爪(fused nail)は,爪の 2 つの部分が彎曲した同じ橈骨を共有しており,裂爪(split nail)または分割爪(cleaved nail)と区別される。関連している指趾を明記すべきである。潜在的な合趾症の趾と関連するものかもしれないが,これらは別個に記述される。
・Nail,hypoplastic:Nail,smallを参照
図 94 右足,T1 の融合爪 図 9A も参照この患者は, T1 の幅広い趾および T23 の部分的な皮膚性合趾を認める。
過度に凸化した爪(Nail, Hyperconvex)
定義
端を見たときに(指先が検者の眼の方をさしている状態で),爪の曲線がきつい凸状のカーブを描くこと(主観的)(図 95)。
コメント
この所見に関しては客観的な基準値は定められていない。この所見に関する別の表記法として,観察された曲線が,典型的な爪と比べて,小さな半径を描いている,というものがある。罹患した指趾を明記すべきである。
図 95 左手 F3,4 の過度に凸状化した爪
図 102 も参照
幅の狭い爪(Nail, Narrow)
定義
爪の幅の減少(主観的)(図 96)。
コメント
新生児の標準値は知られている
[Seaborg と Bodurtha, 1989]が,年長者の基準値は明らかではない。よって,新生児に関しては客観的といえるが,測定されるのはまれである。罹患した指を明記すべきである。
図 96 左足 T2 の狭い爪
この爪の長さは正常であり, small ではなく, narrow と表記する。
爪のくぼみ(Nail Pits)
定義
背側からみえる爪表面の小さなくぼみ(典型例では 1 mm 以下)(主観的)(図 97)
コメント
罹患した指趾を明記すべきである。
図 97 右手 T2-4 の爪のくぼみ
爪の線状隆起(Nail, Ridged)
定義
爪板における長軸方向の線状隆起(主観的)(図 98)。
コメント
隆起は 1 つだけのことも複数のこともある。罹患した指を明記すべきである。
図 98 両側 F1 の線状隆起を伴う爪
短い爪(Nail, Short)
定義
爪の長さの減少(主観的)(図 99)
コメント
爪の長さが短いものの,幅は正常なときこの表記を使う。新生児の標準値は知られている[Seaborg と Bodurtha, 1989]が,年長者の基準値は明らかではない。よって,新生児に関しては客観的といえるが,測定されるのはまれである。罹患した指を明記すべきである。
同義語
Brachyonychia
図 99 左手 F1,5 の短い爪 図 15,60A も参照左手 F5 の二分爪,幅広い指,左手 F1 の短い指,F5 の短い中手骨も認められる。
小さな爪(Nail, Small)
定義
長さと幅が減少している爪(主観的)(図 100)。
コメント
これはバンドリング用語であるが,よく使われるので残されている。 Short nailと Narrow nailの両方を有しているというように,記述するのが望ましいのかもしれないが,爪の幅と長さが減少していればこの用語を用いてよい。新生児の標準値は知られている[Seaborg と Bodurtha, 1989]が,年長者の基準値は明らかではない。よって,新生児に関しては客観的といえるが,測定されるのはまれである。罹患した指を明記すべきである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Hypoplastic nails
同義語
Micronychia
図 100 左足の小さな爪 図 12,28,58A も参照
分裂爪(Nail, Split)
定義
長手方向への分離がみられ, 2 つに分かれた部分を有す爪板が彎曲した同じ橈骨外側側面を共有していること(主観的)(図 101)。
図 101 左足 T1 の分裂爪
幅広い左足 T1 の母趾や左足 T23 の部分皮膚性合趾症も認められる。
コメント
これは Fused nailとは,爪の 2 つの部分が別個の彎曲した橈骨を共有している点で異なる。イントロダクションで述べられているように,罹患した指を明記すべきである。
・Nails,spoon shaped:Nail,concaveを参照
爪肥厚(Nail, Thick)
定義
端から見たときに厚くみえる爪(主観的)(図 102)。
コメント
爪の厚さに関する客観的な基準値は知られていないが,根拠のない主張ながら,女性で 0.5 mm,男性で 0.6 mm というものがウェブ上(http://www.emedicine.com/orthoped/topic421.htm)に掲載されている。爪板が爪床から持ち上がるようケラチンが積み上がる。厚くなった爪板は通常とても硬い。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
Onychogryposis;Pachyonychia
図 102 右手 F1-5 の爪肥厚
薄い爪(Nail, Thin)
定義
爪の端から見たときに爪が薄くみえる(主観的)(図 103)。
コメント
爪の厚さに関する客観的な基準値は知られていないが,根拠のない主張ながら,女性で 0.5 mm,男性で 0.6 mm というものがウェブ上(http://www.emedicine.com/orthoped/topic421.htm)に掲載されている。薄い爪は通常もろく,爪縁で容易に擦り減り,割れる可能性がある。薄い爪はゆっくり伸びるが,この条件は定義上必要ではない。Koilonychia は,指の爪が縁で捲れあがったり,薄かったり,凹状になっているなど,異常な形態を示す用語である。薄い爪以外の他の特徴も含む用語であり,爪が薄いことを示す場合,使用すべきではない。罹患した指趾を明記すべきである。
図 103 右手 F2,5 の薄い爪 左手 F2 の凹型の爪も認められる。
・Onychogryposis:Nail,thickを参照
・Pachyonychia:Nail,thickを参照