日本赤十字看護学会における利益相反に関する指針
- 目的
本学会は、赤十字の理念に基づく実践の学問的探究と実践・教育・研究の結びつきを強めることを課題とした学術的活動を遂行するにあたって、社会的責任と倫理性が求められる。そこで、利益相反(conflict of interest: COI)に関する倫理指針を定め、会員に対て COI に関する基本的な考え方を示すとともに、学術活動の公明性と中立性を担保して、看護学研究の発展と看護実践の質の向上に寄与することを目的とする。
COI とは、外部との経済的な利益関係等によって、公的研究で必要とされる公正かつ適正な判断が損なわれる、又は損なわれるのではないかと第三者から懸念が表明されかねない事態のことをいう。公正かつ適正な判断が妨げられた状態としては、データの改ざん、特定企業の優遇、研究を中止すべきであるのに継続する等の状態が考えられる。(「厚生労働科学研究における利益相反」より) - 対象者
本学会の行う事業において COI 状態が生じる可能性がある際に、本指針が適応される。 なお、COI 状態の報告が、自己申告によって開示を義務づけられるのは次の場合である。- 本会会員が本学会学術集会、セミナー等で発表・講演を行う場合
- 本会会員が学会誌に論文投稿する場合
- 本会非会員が本会の事業(学会誌、学術集会、セミナー、公開講座等)で発表・講演を行う場合
- 本会の理事・監事、委員会委員、学術集会会長
- 事務員
- 申告すべき事項とその基準
前項の COI 状態の自己開示が義務づけられる場合、企業、法人組織、営利を目的とする団体との関係において、過去 1 年から現在までの間に、以下が該当する場合は COI 状態として申告しなければならない。- 団体の役員、顧問職、社長などへの就任:1つの企業等からの報酬が100万円以上の場合
- 株保有:1つの企業からの年間利益が100万円以上、あるいは当該株式の5%以上を所有する場合
- 特許権などの使用料:100万円以上の場合
- 講演料:1つの企業・団体からの合計が50万円以上の場合
- パンフレットの執筆などに対する原稿料:100万円以上の場合
- 受託研究・共同研究費・奨学寄付金:1つの研究に対して200万円以上、奨学金については、1つの企業等から1名の研究者に対して支払われた額が100万円以上の場合
- 寄付講座所属:該当する場合
- 旅費や贈答品などの報酬の受領:1つの企業等から合計10万円以上の場合
- その他:要相談
- 実施方法
- 研究成果を学会誌で発表する著者は、当該研究実施に関わる COI 状態を本指針に従って確認し、論文投稿時に投稿規定(*1)に沿って申告し、開示する義務のある COI 状態がある場合は、発表時に公開する。
(*1):「謝辞」の欄の次に、「利益相反」の欄を設け、当該研究の遂行や論文作成における利益相反の有無を記載する(利益相反となるような経済的支援を受けた場合には、その旨を記載する。利益相反がない場合には、「利益相反なし」と記載する)。 - 学術集会、セミナー、公開講座等で発表、講演等を行う筆頭演者は、当該研究実施に関わる COI 状態を本指針に従って演題登録時に申告し、開示する義務のある COI 状態がある場合は、発表時に公開する。
- 本学会の理事・監事、委員会委員、学術集会会長、事務員は、就任時に当該事業に関わる COI 状態を自己申告によって開示する。
- 理事会、学会誌編集委員会、学術集会会長は、関与する各事業に関して申告された COI 状態を確認し、その内容が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する場合はその旨を対象者に通知し、内容に応じて必要な措置を講ずることができる。
- 被措置者は、本会の判断及び措置に対して不服を申し立てることができる。不服に対しては、理事長を委員長とした臨時委員会を設置し、協議のうえ答申結果を不服申し立て者に通知する。
- 研究成果を学会誌で発表する著者は、当該研究実施に関わる COI 状態を本指針に従って確認し、論文投稿時に投稿規定(*1)に沿って申告し、開示する義務のある COI 状態がある場合は、発表時に公開する。
附則
本指針は、平成28年7月1日より施行する。
文献
- 日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会(編)(2015 年)科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得、丸善出版
- 厚生労働省(平成20年)「厚生労働科学研究における利益相反(COI)の管理に関する指針」
- 文部科学省・厚生労働省(2014年)「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」
- 公益財団法人日本看護科学学会(平成27年)「日本看護科学学会における学術活動の利益相反に関する指針」
- 「日本看護科学学会における学術活動の利益相反に関する指針」