生活保護受給者への健康支援に関するシンポジウム開催

先週鹿児島で行われた日本公衆衛生学会学術総会にて、シンポジウムの座長および講演をしました。

厚労省による生活保護受給者への健康支援モデル事業が始まっています。健康を維持することは、誰にとっても大切なことです。しかし生活保護を受けるような厳しい状況におかれている中ではなかなか健康づくりに自主的に取り組みことはできません。

生活保護の方々へ対応する自治体の福祉事務所の皆さんにとっては、担当する方に心や体の健康問題に心配があるとき、中々相談することができない状況があります。モデル事業では、福祉事務所が保健師等を採用したり、保健センターと連携することで、健康面でケアを支える取り組みを進めています。

また、医療機関での受診に関するビッグデータを解析することで、生活保護を受けている方の受療行動が明らかになり、どのようなケアが必要とされているかがわかります。

シンポジウムでは、福祉事務所での面談時のデータも安全に、有効に活用できれば、もっと一人ひとりにより添える支援ができる、そうすることでケースワーカーにも時間のゆとりができ、一人ひとりにゆとりをもってかかわる時間ができるといったことが話されました。安全にデータ活用を進めること、寄り添い型の支援のノウハウを蓄積していくことの重要性が認識されました。

 

概要:

11月1日(水) 8:50~10:20 第2会場(鹿児島県文化センター2F 第3会議室)

生活保護受給者を対象とした健康格差対策の今後:データヘルス計画の活用等を見据えて

座長:近藤 尚己(東京大学)

演者:生活保護受給者に対する健康管理事業について
市川 佳世子(厚生労働省社会・援護局)

生活保護受給者の生活習慣病罹患および受診状況:医療扶助実態調査 
高橋 由光(京都大学大学院医学研究科健康情報学分野)

健康格差対策の考え方と注意点:生活保護受給者への対応を例に 
近藤 尚己(東京大学)

当市における健康管理支援の取組みについて 
藤田 恭子(上尾市役所健康福祉部生活支援課 副主幹)

監修「認知症の社会的処方箋」リリース

「認知症の社会的処方箋~認知症にやさしい社会づくりを通じた早期発見と早期診断の促進~」提言白書をリリース

根治療法がない認知症に、医療や社会はどう対応すべきか。現状と課題、そして提言をまとめた冊子が「認知症の社会的処方箋」が刊行されました。

関係各機関からのプレスリリースはこちらです:

日本医療政策機構  日本イーライリリー

「認知症の社会的処方箋 認知症にやさしい社会づくりを通じた早期発見と早期診断の促進」制作チーム(五十音順)

・著者:
日本医療政策機構
マッキャングローバルヘルス

・監修:
イチロー・カワチ(ハーバード公衆衛生大学院 教授)
K. Viswanath(ハーバード公衆衛生大学院 教授)
近藤尚己(東京大学 准教授)

 

 

 

 

 

特別セミナー「社会疫学とは何か」開催11月24日東京

特別セミナー「社会疫学とは何か」開催
11月24日 
東京医科歯科大学M&Dタワー鈴木章夫講堂
 
社会疫学<上・下>巻(大修館)発刊を記念してセミナーを開催します。
 
原著執筆監修者のイチロー・カワチハーバード大学教授および日本の社会疫学研究・健康格差研究の第一人者である近藤克則千葉大学教授をお招きして社会疫学の到達点と展望について語っていただきます。
チラシはこちら
 
また、監訳者一同(高尾・藤原・近藤尚己)による、各章の読みどころの解説もあります。
 
ふるってご参加ください。

日本肥満学会シンポジウムに登壇:肥満の健康格差の現状とその対策

10月7日に大阪で行われた第38回日本肥満学会学術総会シンポジウムに登壇し、「肥満の健康格差の現状とその対策」として、日本の肥満の社会経済格差の現状、そのメカニズム、有効な対策について話しました。

パネルディスカッションでは、中々健康行動をとれない、社会的なストレスを抱えている人人に対して、行動科学の知見を活用して、無意識に健康的な行動がとれるような環境整備や仕掛けづくりの重要性について議論しました。

概要

10月7日(土) 9:00-11:30 第2会場(5F 小ホール)
シンポジウム2
社会で取り組む肥満症対策~小児期から成人期まで:予防と介入(治療)の
実際と成果
座長:津下 一代(あいち健康の森健康科学総合センター)
菊池  透(埼玉医科大学 小児科)
S-2-1 乳幼児期からの肥満予防
獨協医科大学 小児科学
○小山さとみ
S-2-2 地域で取り組む小児生活習慣病対策
いとう小児科
○伊藤 卓夫
S-2-3 職域における肥満症対策
公益財団法人日本生命済生会付属日生病院 予防医学センター
○藤岡 滋典
S-2-4 肥満症への介入:特定保健指導~ IoTを活用した生活習慣改善支援
あいち健康の森健康科学総合センター
○村本あき子、野村 恵里、栄口由香里、中村  誉、加藤 綾子、松下まどか、
津下 一代
S-2-5 肥満の健康格差とその対策
東京大学大学院医学系研究科 保健社会行動学分野/健康教育・社会学分野
○近藤 尚己

 

読売新聞にコメント掲載:所得低いほど野菜摂取少なく、喫煙率高く…「健康格差」は自己責任か

読売新聞の取材を受け、コメントしました。記事は以下です。

所得低いほど野菜摂取少なく、喫煙率高く…「健康格差」は自己責任か

医研シンポジウム2017:健康な社会づくりをめざして-健康自己責任論を超えて何をなすべきか-

9月15日に開催されたシンポジウム「健康な社会づくりをめざして-健康自己責任論を超えて何をなすべきか-」の報告ウェブサイトがまとまりました。こちらです。

「多部門連携による健康な社会環境づくり─健康に無関心な人々への対応─」という題名で報告いたしました。発表資料のダウンロードもできます。

以下、ウェブサイトより抜粋

「健康な街づくりをめざす健康都市構想や、テレビをはじめとするマスコミによる「健康格差」の報道が目立つようになりました。一方では、健康を自己責任とだけ捉える意見を巡ってネット上で論争が行われるなど、健康な社会づくりをめぐる関心や動きは日に日に高まっています。

そこで、2017年の医研シンポジウムでは、そこにどのような課題があるのか、様々な要因を浮き彫りにし、それらに対してどのような取り組みを講じることができるのか、4名の専門家より発表をいただきました。会場には、産官学の各方面から、また今回は報道機関からの参加者も多く、良好な社会環境の構築に資する情報共有が幅広くなされたものと確信しています。」

NHK持論公論で研究成果が紹介されました

9月18日に放送されたNHK持論公論「”人生100年時代”の健康格差」で、所属する日本老年学的評価研究(JAGES)の成果が紹介されました。

 

解説記事はこちらでご覧になれます。以下抜粋です。

「健康には食事や運動などの生活習慣が影響します。さらに、この生活習慣には所得や教育、働き方、それに地域のつながりがあるかどうかなども影響します。健康格差はこうした経済的な状況や社会的な環境によって健康に差が出ることと定義されています。ひとりひとりが健康でいられるかどうかはその人の心がけ次第と考えられがちですが、個人の努力だけで解消するのは難しい面もあるのです。このうち、所得と健康の関係について研究グループが1万4000人余りの高齢者を4年間追跡調査した結果です。所得が400万円以上を1とした場合、所得が低くなるほど死亡率が高くなっていました。同じように所得が低くなるほど介護のリスクも高くなっていました。このデータをみると、所得の高い高齢者の多くは働くことができるほど元気なのだから所得の低い人と健康格差があるのは当然だと思われるかもしれません。しかし、専門家が指摘するのは、こうした高齢期にあらわれる健康格差はそこに至るまでの生まれたときや幼い頃からの生活習慣の積み重ねや環境が影響するということです。」

レジデントノート「ドクターS]連載中!

羊土社から発行されている臨床医向けの雑誌「レジデントノート」で、「ドクターSの診療ファイル、SDHから探る、患者に隠れた健康問題とは?」が連載中です。 近藤尚己と藤原武男教授(東京医科歯科大学)が監修しています。

健康の社会的決定要因(SDH)の概念を駆使し,シャーロック・ホームズさながらの推理で診療を行うイケメン指導医『ドクターS』.今日も研修医とともに患者さんの健康問題を掘り下げて支援します!

これまでの内容

Vol.19 No.10(2017年10月号)・・・1842ページ
第3回 母子手帳の謎を解け
柴田綾子,近藤尚己

Vol.19 No.9(2017年9月号)・・・1664ページ
第2回 頻発する喘息発作の謎
舟越 優,藤原武男

Vol.19 No.7(2017年8月号)・・・1248ページ
第1回 治らない糖尿病の謎
柴田綾子,近藤尚己

ウォールストリートジャーナル掲載:被災者にとって「つながり」がカギ

JAGES研究班からの研究成果が米国のウォールストリートジャーナル誌で紹介されました。

Social Ties Are Key for Survivors of a Disaster
In the aftermath of the 2011 tsunami, studies show that how people are relocated can affect their recovery