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患者のみなさまへ

代表的な疾患および治療

顔面神経麻痺

1. 疾患の解説

顔には20をこえる筋肉(顔面表情筋)があり、これらの動きにより表情が作られます。顔面表情筋を動かしている神経を顔面神経といいます。顔面神経は、脳から頭蓋骨の中を通り、耳たぶの下あたりから頭蓋骨の外へ出て、顔面の浅い部分を走行し、顔全体の筋肉に分布しています。顔面神経麻痺は、種々の原因により顔面神経が障害された状態です。代表的な原因として、ウイルス感染などの病気などが引き金となるもの、腫瘍切除や外傷に伴うもの、先天性のものなどが挙げられます。
顔面神経麻痺の症状は、障害部位や原因により様々です。顔面表情筋の動きの障害により、顔が左右非対称になったり、まぶたが閉じれずに眼が乾燥して痛む、口が閉じれず飲食物がこぼれる、などの症状があります。また、顔面神経は涙を出したり、味覚にも関連するため、涙の分泌障害や、味覚障害といった症状を来たします。
他にも、眼や口周りの筋肉のこわばり(顔面拘縮)や、口を動かすと同時に瞼が閉じてしまうなど、意図しない表情筋も一緒に動いてしまう症状(病的共同運動)が出現することもあります。

2. 治療法

怪我や腫瘍切除に伴い神経が切れている場合は、神経同士を縫い合わせたり、あるいは他の神経を移植したりします。筋肉は神経からの刺激がないと徐々に萎縮してしまうので、この場合は早い段階での治療が望ましいです。
麻痺になってから時間が経っている場合や先天性の場合は、既に表情筋は萎縮・変形しているため、神経をつなぐだけでは機能回復が難しいことが多く、他の治療方法が選択されます。主に形態的な左右差を整える事を目的とした静的再建術と顔面の動きを再現する事を目的とした動的再建術があります。
静的再建術では、垂れ下がった上まぶたや眉毛に対し皮膚を一部切り取って吊り上げたり、口角の垂れ下がりに対して筋膜、糸などを皮膚の下に移植して吊り上げるといった治療があります。目を閉じやすくするために金製の小さい重りを上まぶたに埋め込む手術もこれに属します。これらの治療には顔面を積極的に動かして表情運動を回復させる効果はないため、静的手術と呼ばれます。
一方、動的再建術では、麻痺した表情筋に代わり、別の筋肉で表情運動を回復させる方法で、咬む役目をする筋肉(側頭筋や咬筋)の一部をまぶたやくちびるに移動したり、身体の他の部位から筋肉を取ってきて移植したりします。
顔面神経麻痺の症状は顔面全体に及ぶので、通常は静的手術と動的手術の両方を利用して治す必要があります。神経や筋肉の回復は遅いので、治療終了まで多少時間がかかります。病的共同運動に対しても手術やボツリヌス毒素などを用いた治療、リハビリテーションなどを行うことで症状の改善が得られます。

3. 治療により期待される結果

結果は選択した手術法によって異なりますが、かなりの程度まで症状を改善させたり、表情を回復させたりすることができます。手術内容によって全身状態への影響、治療期間の長さが様々なので、よく考慮して手術法を選択する必要があります。顔面神経麻痺の治療は、早期に行うべきケースも含まれるため、できるだけ早く医師の診察を受けることがお勧めします。