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患者のみなさまへ

代表的な疾患および治療

小児先天異常

形成外科では、あらゆる体表面の先天異常に対して、整容的および機能的により良い手術を選択し、治療しています。比較的頻度の多い耳と指(趾)について解説します。その他の先天異常については、日本形成外科学会のホームページをご覧ください。

小耳症

1. 疾患の解説

生まれつき耳の形が不完全で小さい病気のことです。片方の耳が反対側よりやや小さいものから、ほとんど耳がない状態のものまで、様々な程度の小耳症があります。また両方の耳が小耳症のこともあります。

お母さんのおなかの中で耳が形成される過程で何らかの異常を来たし、未発達のままで止まってしまったことで小耳症となります。重症なものでは耳の形だけでなく、耳の穴やもっと奥の音を感じる部分(中耳、内耳)にも形成不全がみられます。

小耳症の問題点は機能面と整容面に分けられます。機能面では眼鏡やマスクが掛けられないなどの問題のほかに、聴力障害を伴うことがあります。聴力障害に関しては耳鼻咽喉科の先生と協力しながら治療を行っていきます。小耳症が片方だけで反対側の聴力が正常であれば特に不自由を感じないことも多いですが、両側の聴力障害がある場合には手術や補聴器の装着などの治療が進められます。整容面はいわゆる見た目の問題で、反対側と比べても違和感のない耳を作ることを目標としています。

2. 治療

小耳症の手術は肋軟骨という胸の軟骨を使って作るのが一般的で、少なくとも2回の手術が必要となります。

1回目の手術は肋軟骨を使って耳の形を作る手術です。耳の大きさが大人に近くなり、耳を作るのに十分な肋軟骨が取れる体格となる10歳前後に行うのが一般的です。肋軟骨を採取して、耳の形の基礎となる枠組みを作ります。この枠組みを側頭部の皮膚の下に埋め込んで1回目の手術は終了となります。しかし、この時点では耳は側頭部にはりついたままの状態です。

2回目の手術は側頭部に埋め込んだ耳の形をした軟骨を起こす手術です。作った耳を前方に持ち上げて耳の後ろに皮膚を移植します。これで眼鏡をかけたりマスクを掛けたりする耳の後ろの溝が出来ます。

副耳

1. 疾患の解説

副耳(ふくじ)は生まれつき見られる耳の前や頬にイボ状に突起したものです。片側の耳前部に1個だけ存在することがほとんどですが,時には両側に存在する場合や複数個存在する場合があります。またイボ状ではなく,ヘソのように凹んだタイプもあります。出生1000に対して15の割合で発症すると言われ,比較的発症頻度の高いものです。遺伝性のこともあります。

副耳は皮膚のみではなく軟骨を含むことが多く,耳に近い場合には副耳と耳の軟骨同士が深いところで繋がっていることもあります。

2. 治療法

小さいものや軟骨を含まないものは,生直後に無麻酔で絹糸やナイロン糸で根本をしばります(結紮術)と,副耳の先端に血流が行かなくなり壊死して10日から2週間で自然脱落します。

軟骨を含むものは結紮しても不完全に隆起が残ることがあり、皮下の軟骨を含めて切除してきれいに縫合する(切除術)ことをお薦めします。手術時期は全身麻酔を行う場合は麻酔の安全性が高まる1歳前後に行います。また、耳珠などの軽度の変形などがある場合には同時に修正することも出来ます。

耳(前)瘻孔

1. 疾患の解説

耳瘻孔とは、生まれつき耳の周囲に小さな穴が開いて、その下方に管(または袋状)があり、その管の先端は耳介軟骨で終わっているものを言います。これは耳を形成する時の異常により生じたものと言われています。耳の異常の中ではかなり頻度の高い疾患の1つです。

耳瘻孔から臭いのあるチーズ様の分泌物が出てきたりすることもあります。この状態で一生経過することもありますが、この小さい穴から細菌が入って感染を繰り返す場合もあります。一度感染を起こすと、その腫脹したところを切開して膿を出したり、抗生剤を内服するなどの治療が必要になります。

2. 治療法

未感染の耳瘻孔の場合でも、1歳前後で摘出を行うことがあります。しかし、一度でも感染を起こした既往があれば再感染を起こす確率が高いので手術による摘出を勧めます。皮膚切開のあと、感染が完全に落ち着いていれば、耳瘻孔の摘出が可能です。手術は、耳瘻孔を含めて管状や袋状のものを全て取り去ります。傷は丁寧に縫合し、抜糸は術後5~7日前後に行います。

埋没耳

1. 疾患の解説

袋耳ともいいます。耳介(一般に言う耳のことです)の上半が側頭部の皮膚に埋もれ込んだ状態をいいます。指でつまんで引っ張り上げることができますが、指を離すと元に戻ってしまいます。埋もれている部分の軟骨には頭側に折れ畳まれたような変形があります。片側性のことも両側性のこともあります。片側例では、よく見ると反対側の耳介上半にも同様の変形があることがあります。

発生頻度は出生比0.25%前後とされ比較的多い疾患といえます。発生原因としては耳介後面の筋肉の異常によるとする説が有力です。

耳介の上半部のみの変形なので、聴力への心配はいりません。問題点としては機能的なものと整容的なものに分かれます。機能的には耳介上半が埋もれているとマスクのゴムや眼鏡のツルなどが掛けれないため、学校での活動、学業に支障を来たすことが考えられます。整容的には、左右差が問題となります。

2. 治療法とその効果

装具による矯正治療と手術治療にわかれます。指でつまみあげると容易に引き出せる場合は矯正治療が可能です。このために、簡単な装具を形状に応じて医師が作成します。一般的に満1歳以下が良い適応です。矯正治療は簡便ではありますが、耳介軟骨そのものの変形は十分には修正できないこと、皮膚の余裕が少ない場合はうまくいかないのが欠点です。また、装具の装着中は、皮膚がかぶれたり、化膿することがあります。

装具治療が奏功しなかった場合や、幼児期に初めて形成外科を受診された場合は手術による治療を行います。適応年齢は3歳くらいから就学前後です。手術の基本は耳介上半を伸ばした状態に保つことです。この部分の軟骨の変形を矯正する為に軟骨の切開縫合、時には移植などを行うことがあり、手術法としては様々なものがあります。

合指症

1. 疾患の解説

隣り合った指の一部または全部が癒合(くっついている)している状態です。皮膚と軟部組織だけが癒合している皮膚性合指と、骨まで癒合している骨性合指に分けられます。
また、癒合の高さにより部分合指と完全合指に分けられます。手では第3-4指(中指―環指)間、足では第2-3趾間に多く発生します。アペール症候群に代表されるような症候群に伴う症状の一つとして、合指症を認めることがあります。

2. 治療方法

一般的には生後1歳前後にくっついている指の分離手術を行います。指を分離したあとは、水かきの部分を皮膚の短冊(皮弁)で覆い、指の側面を植皮で覆います。植皮の皮膚は足のくるぶし付近や足の付け根などから採取します。

3. 治療の効果

治療は機能面と整容面の改善を目的として行います。皮膚性合指では合指の分離によりそれぞれの指の動きは良好に獲得できます。完全合指や骨性合指では変形や動きの制限が残る場合があります。また、成長に伴ってきずあとにひきつれが生じることもあるので、修正手術が必要となる場合があります。

多指症

1. 疾患の解説

正常より指数が多い状態をいいます。過剰な指が完全な指の形をしているものから、小さなイボのように突出しているものなど様々なタイプがあります。手足の生まれつきの病気のなかでもっとも頻度が多く、手では母指に多く認められます(母指多指症)。足では小指に多く見られ、隣の指との間に合指を伴う場合があります。

2. 治療方法

一般的には1歳前後に手術を行います。過剰な指が指先から指の付け根のどの場所から分かれるかで手術方法は異なります。単に余剰指を切除すればよいのではなく、二つの指から動きも見た目も健常の指に近い一つの指を作る、再建手術が行われます。例えば、母指を外に開くための筋肉を移し変える、骨を切って骨軸の調整をするなどの処置が行われます。

3. 治療の効果

母指多指症では、成長に伴い指や爪に変形が生じる場合があります。変形の程度によっては、追加の修正手術が必要となる場合があります。

多合趾症

1. 疾患の解説

趾(足の指)が2本以上に分かれており、さらに隣接する趾どうしがくっついている状態です。多趾と合趾を合わせた状態であるため、多合趾症と呼ばれます。足の第5趾に発生することが多く、足の生まれつきの病気のなかでは最も頻度が多い疾患です。

2. 治療方法

一般的には1歳前後に手術を行います。趾間の癒合(くっついている部分)を分離し、また過剰な趾を切除します。どの趾を切除するかについては、趾の発育度や骨の並び方などを考慮して決定します。癒合を分離したあとに皮膚が足りない場合には、足のくるぶし付近や足の付け根などから植皮を行います。

3. 治療の効果

手術により良好な形態を獲得することが可能です。成長に伴って趾の曲がりやきずあとのひきつれが生じることがあるので、追加で修正手術が必要となる場合があります。