NovoTTF tumor treatment field

  • TTF tumor treatment fieldというのはある種の治療法のことです
  • 「腫瘍治療電場」とでも訳すのですが,日本語では意味不明になります
  • 正式には「交流電場腫瘍治療システム」??と訳が決まりました
  • 主として再発した膠芽腫の治療に用いられる装置です
  • 頭皮の上の電極パッド (transducer arrays) から,脳腫瘍に向けて,非常に弱い中間周波の交流電場を持続的に発生させます
  • 英語ですと,low-intensity, intermediate frequency electric fields via non-invasive, transducer arrays
  • オプチューン NovoTTF-100A というのは治療装置の商品名で,3kgくらいの重さで持ち運びできます
  • 悪性腫瘍の細胞は増える時に,細胞分裂をして2つに分かれるのですが,その分裂を弱い電場で妨げるものです
  • その結果,腫瘍細胞が増えることができません
  • 1から2割程度の再発膠芽腫の患者さんである程度の期間は腫瘍が大きくなるのを抑えられるという報告がなされました
  • 理論的には,腫瘍が大きくなることはある程度防げるのですが,腫瘍を小さくすることは難しいです
  • 装着のために頭の毛をそりますし,常時の持ち運び(1日18時間以上)が日常生活を多少制限します
  • おもな副作用は,頭皮の接触性皮膚炎です
  • でも再発膠芽腫への制がん剤の使用よりは身体的な負担が少ないとの考え方もあります
  • 現時点での印象としてはあまりお勧めできません
  • 2015年に,初発膠芽腫への臨床試験が終了し,無増悪生存期間を中央値で3ヶ月ほど延長するという報告ありました
  • 保険診療はできなくて,自費で年間数千万円の費用がかかります
初発で状態 PS の良い患者さんへの適応

2015年の第3相試験の結果を受けて,The National Comprehensive Cancer Network (NCCN)がcategory 2A recommendationとしました。2016年7月には1.3kgに軽量化されたものがFDAで認可されました。

2017年の報告

EF-14 の最終報告です。テモゾロマイドのみでは2年生存割合は30%,オプチューンの併用では43%でした。5年生存割合はそれぞれ5%と13%でした。

2016年の学会発表

Stupp R, et al: The 21st Annual Scientific Meeting of the Society for Neuro-Oncology (SNO) on Nov. 18, 1996, in Scottsdale, Arizona
2015年に発表された第3相試験 EF-14 の追加の報告です。初発の膠芽腫の患者さんでテモゾロマイドのみでは2年生存割合は30%でしたが,オプチューンの併用では43%でした。4年生存割合でも,それぞれ10%と17%で,オプチューンが7%上回ります。

2015年の論文発表

Stupp R, et al.: Maintenance Therapy With Tumor-Treating Fields Plus Temozolomide vs Temozolomide Alone for Glioblastoma: A Randomized Clinical Trial. JAMA 314, 2015
TTFとテモゾロマイド 210人,テモゾロマイドのみ105人の初発膠芽腫の患者さんで無作為試験が行われました。PFSはそれぞれ7.1ヶ月と4ヶ月,OSは20.5ヶ月 (n=196)と15.6ヶ月 (n=86)でした。症状が悪くならないで生存できる期間が3か月ほど延びる,全生存期間に対する利点が5ヶ月ほどあるということが報告されました。
Duke大学のSampson LHは化学療法の効果をあげる機序が不明であるとコメントしています。更に,Because of the study design chosen, doubts may remain as to the true efficacy of this therapy. と付け加えています。

2012年の論文報告

Stupp R, et al.: NovoTTF-100A versus physician’s choice chemotherapy in recurrent glioblastoma: a randomised phase III trial of a novel treatment modality. Eur J Cancer 48: 2192-2202, 2012
論文報告は,臨床第3相試験の結果です。再発膠芽腫の患者さん237人が無作為試験で治療を受けました。年齢は23−80歳,KPSは50-100%です。TTFは120人の患者さんに使用され,主治医の先生が選んだ化学療法は117人の患者さんに行なわれました。生存期間中央値は6.6ヶ月と6.0ヶ月,1年生存割合は20%と20%,6ヶ月無増悪生存割合は21.4%と15.1%でした。TTFとactive chemotherapyの間に全く差はありませんでした。意外にも腫瘍の縮小率は,14%と9.6%で有意差はないもののTTFの方が優ったとのことです。
「解説」弱い交流電場を脳内に作るだけですから,電極バッド tansducer の下の頭皮の荒れ(接触性皮膚炎)以外には,有害事象というのはほとんどありません。注意したいのは,もともと再発膠芽腫に有効な化学療法というのはありませんから,それと比較して非劣性試験を行っても,TTFに有効性があると言えるわけではないことです。

なぜ効くのか

  •  はっきりは解っていません
  • 装置は腫瘍細胞の内部に電場を発生させます
  • 細胞内の電荷を帯びた粒子 particleを動かすことによって効果を出します
  • 細胞骨格を構成するmicrotubulesなど働きを抑制するして細胞分裂を妨げると推定されています
  • 細胞骨格が染色体を集めたりaggregation 離したり segregationすることが抑制されるために腫瘍細胞が増殖できないということです
  • 他には,細胞が二つに分かれる時に形質膜を損傷して腫瘍細胞死を生じる,腫瘍細胞のDNA修復能を阻害するなどです

脳外科の先生へ
最近,神経膠腫が再発した患者さんからNovoTTFの治療を医師から勧められたという相談を受けます。この治療は保険診療ができませんから,一年間に数千万円のお金(実費)がかかります。患者さんにこの治療を説明する前に,患者さんと家族が将来を失わないでこの料金を支払えるかどうか考えてから,勧めて下さい。でないと、お金がないということで哀しい想いをするだけです。また高額な医療費と不便性がある一方で,数ヶ月の延命ができるだけで、膠芽腫が治るということはない治療法です。

 

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