目次: Allergology International、Cardiac Practice、Expert Nurse、Human、INNERVISION、International Journal of Urology、Internal Medicine、International Medical Journal、Japan Journal of Nursing Science、Japan Medical Association Journal、JAPIC、Journal of Integrated Medicine、Modern Media、Nursing BUSINESS、Psychiatry and Clinical Neurosciences、Psychogeriatrics、Therapeutic Research、The Tohoku Journal of Experimental Medicine、赤穂市民病院誌、秋田県農村医学会雑誌、安全と健康、医科器械学、石川看護雑誌、茨城県救急医学会雑誌、茨城県立医療大学付属病院研究誌、医薬ジャーナル、医療安全、エマージェンシー・ケア、岡山県母性衛生、沖縄の小児保健、鹿児島大学医学部保健学科紀要、家畜診療、看護、看護技術、看護教育、看護実践の科学、岐阜赤十字病院医学雑誌、救急医学、救急・集中治療、救急医療ジャーナル、教育と医学、群馬パース大学紀要、慶應医学、月刊福祉、県立長崎シーボルト大学看護栄養学部紀要、口腔衛生学会雑誌、口腔病学会雑誌、高層難民、高知医療センター医学雑誌、国立身体障害者リハビリテーションセンター研究紀要、心と社会、こころの健康、こころのマネジメント、コミュニティケア、災害看護、災害看護学習テキスト 概論編、災害看護学習テキスト 実践編、埼臨技会誌、作業療法ジャーナル、滋賀医科大学看護学ジャーナル、歯科衛生士、思春期学、静岡県立総合病院医学雑誌、実践手術看護、社会福祉学、循環器画像技術研究、小児科診療、小児看護、小児内科、助産師、新医療、人工臓器、心的トラウマ研究、腎と透析、精神医学、精神科看護、精神神経学雑誌、精神分析と人間存在分析、精神療法、聖母大学紀要、全国自治体病院協議会雑誌、体外循環技術、地域医療、地域救急災害医療研究、チャイルド ヘルス、中国労災病院医誌、東京医科大学看護専門学校紀要、東京都医師会雑誌、透析ケア、糖尿病ケア、トラウマティック・ストレス、ナーシングケアQ&A、ナースセミナー、ナースビーンズ Smart Nurse、長岡赤十字病院医学雑誌、長野県看護大学紀要、長野県透析研究会誌、難病と在宅ケア、新潟医学会雑誌、新潟県医師会報、新潟大学医学部保健学科紀要、日赤医学、西尾市民病院紀要、日本医事新報、日本遠隔医療学会雑誌、日本看護学会論文集、日本看護学教育学会誌、日本看護歴史学会誌、日本救急医学会誌、日本救急医学会中部地方会誌、日本救急看護学会雑誌、日本航空医療学会雑誌、日本公衆衛生雑誌、日本災害看護学会雑誌、日本歯科医療管理学会雑誌、日本歯科衛生学会雑誌、日本集団災害医会誌、日本手術医学会誌、日本手術看護学会誌、日本小児腎不全学会雑誌、日本生活支援工学会誌、日本赤十字武蔵野短期大学紀要、日本精神科看護学会誌、日本赤十字看護学会誌、日本透析医会雑誌、日本病院薬剤師会雑誌、日本保険医学会誌、日本旅行医学会学会誌、日本臨床、日本臨床救急医学会雑誌、脳神経外科ジャーナル、脳と発達、ノーマライゼーション: 障害者の福祉、泌尿器ケア、病院、病院設備、広島医学、福島県農村医学会雑誌、プチナース、プライマリ・ケア、プレホスピタル・ケア、プレホスピタルMOOK、へき地・離島救急医療研究会誌、防衛衛生、放射線科学、放射線防護医療、母子保健情報、北海道医報、保健医療科学、保健師ジャーナル、保険診療、ホスピスケアと在宅ケア、保団連、麻酔、南大阪病院医学雑誌、横浜国立大学教育相談・支援総合センター研究論集、臨床栄養、臨床看護、臨床透析、臨床病理レビュー
■Allergology International
■Cardiac Practice
■Expert Nurse
■Human
■INNERVISION
■International Journal of Urology
■Internal Medicine ■Internal Medicine
■International Medical Journal
■Japan Journal of Nursing Science
■Japan Medical Association Journal
■JAPIC
■Journal of Integrated Medicine ■Modern Media
■Nursing BUSINESS
■Psychiatry and Clinical Neurosciences
■Psychogeriatrics
■Therapeutic Research
■The Tohoku Journal of Experimental Medicine
■赤穂市民病院誌
■秋田県農村医学会雑誌
■安全と健康
■医科器械学
■石川看護雑誌
■茨城県救急医学会雑誌
■茨城県立医療大学付属病院研究誌
■医薬ジャーナル
■医療安全
■インターナショナルナーシングレビュー
■エマージェンシー・ケア
■岡山県母性衛生
■沖縄の小児保健
■鹿児島大学医学部保健学科紀要
■家畜診療
■看護
■看護技術
■看護教育
■看護実践の科学
■岐阜赤十字病院医学雑誌
■救急医学
■救急・集中治療
■救急医療ジャーナル
■教育と医学
■「緊急被ばく医療」ニュースレター
■群馬パース大学紀要
■慶應医学
■経験から学ぶ大規模災害医療(丸川征四郎・編著、大阪、永井書店、2007)
■月刊福祉
■県立長崎シーボルト大学看護栄養学部紀要
■口腔衛生学会雑誌
■口腔病学会雑誌
■国立身体障害者リハビリテーションセンター研究紀要
■心と社会
■こころの健康
■心と社会 ■高知医療センター医学雑誌 ■こころの科学 ■こころのマネジメント
■コミュニティケア
■災害看護(小原真理子ほか監修、東京、南山堂、2007)
■災害看護学習テキスト 概論編(南裕子ほか・編、日本看護協会出版会、東京、2007) ■災害看護学習テキスト 実践編(南裕子ほか・編、日本看護協会出版会、東京、2007)
■埼臨技会誌
■作業療法ジャーナル
■滋賀医科大学看護学ジャーナル
■歯科衛生士
■思春期学
■静岡県立総合病院医学雑誌
■実践手術看護
■社会福祉学
■循環器画像技術研究
■小児科診療
■小児看護
■小児内科
■新医療
■助産師
■人工臓器
■心的トラウマ研究
■腎と透析
■精神医学
■精神科看護
■精神神経学雑誌
■精神分析と人間存在分析
■精神療法
■聖母大学紀要
■全国自治体病院協議会雑誌
■綜合看護 ■総合臨床 ■地域救急災害医療研究
■千葉大学看護学部紀要
■チャイルド ヘルス
■中国労災病院医誌
■体外循環技術
■地域医療
■地域救急災害医療研究
■東京医科大学看護専門学校紀要
■東京都医師会雑誌
■日本精神科看護学会誌
■日本赤十字看護学会誌
■透析ケア
■糖尿病ケア
■トラウマティック・ストレス
■ナーシングケアQ&A
■ナースセミナー
■ナースビーンズ Smart Nurse
■長岡赤十字病院医学雑誌
■長野県看護大学紀要
■長野県透析研究会誌
■難病と在宅ケア
■新潟医学会雑誌
■新潟県医師会報
■新潟大学医学部保健学科紀要 ■日赤医学
■西尾市民病院紀要
■日本医事新報
■日本遠隔医療学会雑誌
■日本看護学会論文集
■日本救急看護学会雑誌
■日本看護学教育学会誌
■日本看護歴史学会誌
■日本救急医学会雑誌
■日本航空医療学会雑誌
■日本公衆衛生雑誌
■日本災害看護学会誌
■日本歯科医療管理学会雑誌
■日本歯科衛生学会雑誌
■日本集団災害医学会誌
■日本手術医学会誌
■日本手術看護学会誌
■日本小児腎不全学会雑誌
■日本生活支援工学会誌
■日本赤十字武蔵野短期大学紀要
■日本透析医会雑誌
■日本病院薬剤師会雑誌
■日本放射線技師会雑誌
■日本保険医学会誌
■日本旅行医学会学会誌
■日本臨床
特集・ストレスと循環器疾患
Abstract:2004年10月23日の新潟県中越地方大地震で甚大な被害を受けた地区で清浄間歇的自己カテーテル法(CIC)による排尿管理を行っており、当地のmedical centerに罹っている患者に、2005年1月から4月の間に質問票調査を行い、86名(男性60名、女性25名、性不明1名)から回答を得た。平均年齢は64.6歳(男性64.1歳、女性65.8歳)であった。地震後1週間で生存者で泌尿器症状は3.8%の患者に起こった。その全患者が飲料水不足があり、自分の家に住めないか、または家庭でCICを施行出来なかった患者である。災害時には、CIC患者には住居空間を供給し、そこで充分な飲料水と共に、CICを実施できることが重要である。
Abstract:2005年3月18〜20日にスリランカの3ヶ所の津波災害避難キャンプ内で国内難民324名から鼻咽頭スワブ(NP)を採取しMIC、β-ラクタマーゼ産物、血清型、PCR、パルスフィールドゲル電気泳動等の分析を行った。難民の多くが呼吸器症状を有し、各キャンプの咳・痰の有病率は各々84%、70.5%、64.7%で、20名からH.influenzae 21株、22名からS.pneumoniae 25株が検出された。インフルエンザ菌は全て型別不能で5株がβ-ラクタマーゼ産生型、肺炎球菌は17株がペニシリンG感受性、3株が完全抵抗性であった。難民キャンプ内では様々な型の肺炎球菌やインフルエンザ菌による急性気道感染の流行が認められ、そのうちのいくつかは人から人へ伝染する可能性が示された。
Abstract:大災害の際の癌患者の処置と看護に関して調査を行った。1995年の阪神淡路大震災の際に、被災地及びその周辺の病院で癌患者の看護に従事していた8施設の看護師17名を対象にインタビューを行った。大災害時の癌患者の処置と看護の実際の状況は、三つの主要カテゴリーと10のサブカテゴリーに分類できた。主要カテゴリーは、外来患者の消息を知ることの困難、連続的な各種治療法における処置の適応、最期の時を迎える前後の末期患者とその家族のケアであった。大災害時、中断された治療の回復や患者の輸送手段の確保に対する努力が必要である。また、平常時から癌患者の自己ケアを促進することで、災害時の患者の自己ケアが望めると考えられた。
Abstract:カンボジアでは、雨季に広い範囲で氾濫が生じるが、その地域の水系感染症の実態はよく理解されていない。そこで、洪水氾濫の数値シミュレーションに大腸菌輸送を付加し、病原菌の時空間分布の把握を行った。その動態と水系感染症の患者数との関係を考察し、感染リスクを求めた。その結果、1)洪水規模の拡大に伴い、大腸菌群の分布範囲は拡大すること、2)閉鎖的水域においては水位上昇とともに大腸菌群濃度は上昇し、そうでない箇所においては減少していく傾向にあること、3)氾濫域3州の水系感染症リスクは洪水規模の拡大に伴い減少する傾向にあるが、大規模洪水時は水系感染症の感染危険域が拡大すること、が新しい知見として得られた。
特集・患者・職員満足度向上につなげる災害対策最前線
Abstract:大地震が発生した地区のコホート集団を対象として、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と大鬱病、ならびに6ヵ月、2年及び3年後の他の精神医学的障害の頻度の危険因子を検討した。本調査の対象は、台湾のYu-Chi地区におけるChi-Chi地震生存者のうち、訓練を受けた面接調査者と精神科医のインタビューを受けた住民216名とした。調査の結果、PTSDの頻度は地震後6ヵ月の8.3%から3年後には4.2%に低下したが、自殺念慮は6ヵ月後の4.2%から2年後の5.6%、3年後の6.0%へと増加し、薬
物濫用/依存は6ヵ月後の2.3%から3年後の5.1%へと増加していた。地震生存者は、最初の2年間は高い割合で精神医学的障害を持ち、その後減少した。この結果から、地震による荒廃の後では生存者の自殺念慮の増加を避けるため、大鬱病やPTSDの症状を治療して、これらの障害の危険因子を除去することが必要と思われた。
Abstract:2004年に発生した新潟県中越地震を認識する中程度の痴呆症患者120名(男80名、女40名、平均80.32歳)を地震を認識できる患者46名(A群)と認識できない患者74名(B群)の2群に分け検討した。MRIを用いて大脳基底核、被殻及び尾状核頭部の小空洞数を測定した。A群の小空洞数はB群よりも統計学的に少なかった。地震を認識できる患者の簡易認知機能検査スコア、改訂長谷川式簡易知能評価スケール及び日常生活動作(ADL)は有意に高いスコアを示した。しかし、教育に関しては統計学的有意差を認めなかった。視床及び周囲の大脳基底核、被殻及び尾状核頭部は感情及び認識において重要な役割を果たすことが明らかになった。このため、空洞数は痴呆症患者の認識能力の評価において有用なマーカーとなりうると考えられた。
Abstract:長岡市、小千谷市、十日町市の新潟県中越地震被災者1365名(男性469名、女性896名、平均60歳)において施行した、地震発生1年後の下肢静脈エコー検査および血液検査の結果について、対照地域検査の結果と比較し、被災地で認められる下肢深部静脈血栓症(DVT)が地震による影響であるのか否かを検討した。対照地域は新潟県阿賀町とし、住民367名(男性114名、女性253名、平均63歳)において検査が施行された。被災者では1365名中105名(7.7%)に血栓を認めた。対照地域住民では367名中38名が新潟大停電で偶然に3ヵ月以内の車中泊を経験しており、このうち2名(5.3%)に血栓を認め、通常の生活をしていた327名(他2名は不明)では6名(1.8%)に血栓を認めた。過去にDVT既往やリスクのない例に限定した場合でも4名(1.2%)で血栓を認めた。1年後の被災者の血栓頻度と対照地域の頻度(1.8%)についてχ2検定を行った結果、被災者では対照地域住民よりも血栓頻度が4.3倍有意に高かった。
Abstract:2004年10月23日の新潟中越地震による信濃川河川水質の変異原性に対する局所的および季節的変化の調査のため、2004年9月〜2005年8月の毎月1度、4試料採取地点に24時間ブルーレーヨンを浮遊させた。S9混合物による代謝活性化または非活性化のSalmonella typhimurium TA98とTA100を用いたエームス試験により、変異原性を評価した。河川水の変異原性に関連すると思われる多環芳香族炭化水素を検出・同定するため、ガスクロマトグラフィー質量分析法と全イオンクロマトグラムスペクトルを用いてベンゾ[a]ピレン、ベンゾフェノン、4-ニトロトルエン、その他の化合物を分析した。12週間の試験を通じて4試料採取地点でS9混合物によるTA98の陽性徴候がみられ、下流地点と冬季に高い傾向を示した。しかし、2004年12月に最上流の採取地点中に最高の変異原性が認められ、同サンプル中のみにおいて主にコールタール中に存在するフルオランテンやピレンが検出された。ベンゾ[a]ピレン、ベンゾフェノン、4-ニトロトルエンは検出限界以下であったが、脂肪族炭化水素やエステルなどの非変異原が多く検出された。本所見より、主にフルオランテンまたはピレンが2004年12月の河川水の変異原性に関連していたことが示され、油汚染が新潟中越地震に起因する可能性が示唆される。
Abstract:自然災害による被災経験の実態とその災害対策報告およびマニュアルの作成に関して、当院が訪問診療、訪問看護を実施している在宅患者44名(回収33名、男15名、女18名、平均年齢77±11歳、回収率75%)を対象にアンケート調査を実施した。在宅患者の内訳は寝たきり要介護度5が17名、主な疾患は脳血管障害、パーキンソン病であった。被災経験は停電が11名、地すべりが1名であった。災害対策に必要な準備ができていた家庭は皆無に等しく被災時に予測される問題として21名が寝たきりの家族を非難させる手段や支援者がないことを挙げていた。また、11名が電気を必要とする医療介護器具が停電時に使用できなくなったことを挙げていた。これらの結果を受け、災害時の避難方法、場所および停電対策用マニュアルの作成を行った。マニュアル配布は医療依存度に応じた避難優先度分類を行い、各家庭への介護環境、避難所までの距離や移動手段の有無および必要電力の計算と代替方法などについて個別指導を行った。
Abstract:H17年2月、手術室独自の術中災害を想定した避難訓練を実施し、災害時対応マニュアルを作成した。それにより、業務別の行動基準が明確になり、危機管理に対する意識の変化も見られた。以来年2回、状況設定を変えながら定期的に訓練を行ってきた。訓練を繰り返すことで行動基準が身につき、意識の向上につながると分かった。訓練は「外科開腹手術中地震発生。無影灯以外は全て停電している状況で避難する」という設定で、2ヶ所からのビデオ撮影を行った。結果、「外回りと器械出しの役割の見直しが必要」という意見や「手術台からベットへの移動がスムーズ」といった訓練の繰り返しによる評価が得られた。さらに回を重ねるごとに活発な意見交換が行われることから、定期的な訓練が各自の災害に対する意識の向上につながると思われた。
特集・わが国における救急・災害医療の将来
Abstract:A県内の医療施設に所属する災害看護管理者を対象者として調査を行い,A県内の医療施設における災害対策の課題について分析を行った.その結果,A県内の医療施設における災害対策の課題は,20サブカテゴリ,さらに7カテゴリに分類された.特に,【災害教育・訓練に関する課題】【災害対策マニュアルに関する課題】は,対象者の半数以上が医療施設における災害対策の課題であると答えており,A県内の医療施設における災害対策の課題として早急に対処すべき課題であると考える.医療施設における災害対策の課題については,各医療施設が災害対策のための専門組織を設置した上で災害対策を進めると同時に,医療施設間をはじめとして行政機関やその他の関係機関とも連携を図りながら,A県における災害対策の向上に努めていくことが必要であると考える.
Abstract:当院に通院または入院している児の保護者80名にアンケートを行い、災害時の不安や看護師に求める役割などについて調査した。49名から回答が得られた。災害時不安に思うことは「避難所での生活」と答えた人が最も多く、次いで「食事・経管栄養」、「内服」、「移動手段」、「体温調節」の順であった。地域との関わりは殆どの保護者がもっていたが、災害時に子どもを任せられる知人が「いる」と回答した人は1名(2%)のみであった。災害に関して看護師に求める役割は「災害時の子どもの看護」と答えた人が最も多く、次いで「備えについての指導」、「対策についての指導」、「災害時の安否確認」、「災害についての情報提供」の順であった。
Abstract:2007年7月16日午前、新潟県中越沖地震が世界一の原子力発電所を抱える柏崎市を襲った。その安全性確認を待つ暇もなく新潟大学医歯学総合病院の災害医療チームを始め、多くのDMAT(災害医療派遣チーム)が、その数時間後には被災地で救護活動に入った。翌日に被災地入りした筆者らが見たものは、道へ溢れ出た崩壊した家屋の数々と医療難民とも言える多くの被災者であった。被災地の基幹病院への医師派遣と重症患者の遠隔地大病院へのヘリコプターによる搬送。昼夜2交代制の災害医療チームによる避難所での診療。さらには広域に点在する遠隔避難所の医療巡回を、その閉鎖まで継続した。医学的技術、倫理性双方の信頼性を確保すべき先端医療を預かる大学病院は、また、地域住民に対する迅速かつ継続的な災害医療救護活動を通して、その信頼性の醸成に努めるべきであることの重要性を改めて感じた。
Abstract:阪神・淡路大震災は女性や子ども、高齢者、障害者などの犠牲が多くあり、新潟県中越地震においても阪神・淡路大震災と同様に国民を脅かす災害となった。そこで、女性の特有な処置に欠かせない生理用品について、救援物資のあり方の実態を述べた。阪神・淡路大震災では初動態勢においてトイレ設備が使用不能になった。生理用品については神戸市危機管理室の資料によれば、震災前は生理用品の備蓄はされていなかった。新潟県中地震では、全てのライフラインが絶たれ、生活の糧である家畜やにしき鯉糧なども被害にあい、その救出に困窮したことは阪神・淡路大震災とは異なった。「生理用品」は186642個届けられ、訓練がいき無事に現地に生理用品は運ばれた。
新潟中越地震を体験した被災地看護職者12名にインタビューを行った。ストレスを乗り越える過程において12名に共通する「家族の安否」「看護職者としての役割」「マンパワーの確保」「ストレスコーピングとしてのピアカウンセリング」の四つのキーワードが抽出され、これらについて考察した結果、以下のことが示唆された。1)地震後できる限り早期に看護職者が家族の安否を確認できるシステムの必要性、2)管理職者は責任が重く、よりストレスを感じると考えられるのでそれに対する援助の必要性、3)家族を持つ看護職者は自分のために休みを使えるシステムの必要性、4)看護職者の睡眠時間確保のため、代わりに働ける資格を持ったボランティアの必要性、5)起こりうる状況を予測し、病院に配置するボランティアの人数や物品の配給を行う必要性、6)体験を語り合うことを促すよりも、ピアカウンセリングできる場が持てる時間を増やすことの必要性。
Abstract:透析患者の災害時不安要因、認識・理解度を分析した。方法は外来通院の慢性持続透析患者35名を対象に災害対策説明会実施前後に災害に関連した質問紙調査を行い、30名(85.7%、男性14名、女性16名)より回答が得られた。1)災害に対して63〜64%が不安を有し、対策整備前後で変化はなかった。2)年齢別では60〜70歳未満で、透析年数では1年未満で多かった。3)不安の要因(5項目)については、事前調査では約半数が「透析中の避難行動」と回答し、「他施設での透析」は60歳未満で全員、70歳以上で約60%であった。しかし、事後調査では全項目で不安が減少していた。4)災害対策についての認識・理解度(15項目)については、事前調査では半数以上が「分かる」のは3項目、半数以上が「分からない」のは4項目であったが、事後調査では8項目について全員が「分かる」と回答し、「分からない」はダイアライザー認知が26.7%、抗凝固剤認知が23.3%であった。
シリーズ・Let's start!災害医療
Abstract:看護系大学3年生70名(男17名・女53名)を対象に、災害への準備行動に関するアンケート調査を行い、「災害時生活体験」科目受講者33名(A群)と未受講者37名(B群)で比較した。災害への準備行動状況は、準備ありがA群39.4%、B群18.9%と有意差を認めた。準備の内容ではA群の方が多様性があった。災害への不安については、「心配・やや心配」がA群54.5%、B群72.9%であった。次に、A群の災害時生活体験学習終了後に提出されたレポートを分析したところ、抽出された314件の内容は、「ライフラインの絶たれた生活から自然と人と自分との真剣な向き合い方を学んだ」154件、「相互協力と主体性の大切さと達成する喜びを学んだ」134件、「災害看護の役割認識と準備行動の必要性と行動力を学んだ」26件の3つのカテゴリーで構成されていた。災害への準備行動の有無で比較すると、準備行動あり群の方が記述量が多く、内容は詳細で、認識の広がりがうかがわれた。
Abstract:わが国の看護系大学における「災害看護学」の教育内容を明らかにすることを目的にアンケート調査を実施し、61校より回答を得た。その結果、災害看護の科目があったのは15校で、その教育内容は、設置主体の特徴として赤十字の理念を背景とした災害支援活動を中心とした内容や、地域特性から積雪災害に関するもの、災害の基礎的知識としての災害の定義や種類、災害サイクル、災害に関する法制度、組織的な支援体制と看護職の役割、などであった。
Abstract:災害時看護管理実習における学生の学習到達度と課題を明らかにすることを目的に、看護学科4年次生62名へアンケート調査を実施した。その結果、概ね実習目標は達成されており、教員が狙いとしている目標と実習内容の一致度は比較的高いことが分かった。一方、課題として、「二次救命処置」「国際的な協力体制」「人的災害」について、実習方法の変更、講義内容の工夫、課題内容の工夫が必要であることなどが明らかになった。
Abstract:2004年10月23日夕方に新潟県中越地方で最大震度7の地震が発生した。著者は、地震直後に村ぐるみで避難しその後も仮設住宅で生活しているY村住民を対象として、地震前、地震直後、仮設住宅入居以降(地震から約50日)における歯磨きの状況などについて、2005年4月にY村診療所患者のうち協力が得られた388名に調査を行った。その結果は以下のようである。1 歯磨き回数は、地震前に比べて直後では減少したが、仮設住宅入居後では地震前よりわずかに増加した。また、歯磨きの仕方について地震前と入居後で比較すると、地震前と同じ者が半数以上で、雑になった者は10%あまりであった。2 地震直後は、うがい液でうがいをした者あるいは口をすすいだ者が多かった。歯ブラシは80%以上が3日以内に入手した。3 地震直後に必要としたものは、歯ブラシ、うがい用のコップ、うがい液の順で多かった。今回の調査参加者は一地域のみで年齢的にも偏りがあるが、被災時そして被災前後の歯磨き状況についての実態と需要を把握することができた。
Abstract:保健所の危機管理機能における歯科保健医療体制の位置づけ、ならびに整備状況の実態を把握することを目的にアンケート調査を行った。549施設の保健所長宛に調査表を配布し、282施設から回答を得た(回収率:51.4%)。救護体制が「整備されている」と答えたのは26.2%で、政令指定都市・特別区を有する都市型都道府県の40.6%(54/133件)は、その他の非都市型都道府県の13.9%(20/144件)よりも有意に高かった。また、歯科医師・歯科衛生士のいる保健所は、いない保健所に比べ、体制整備は進んでいた。救護体制が未整備である理由には「危機意識が低い」「緊急度が低い」などがあり、災害時のニーズが具体的に想定できていないためと考えられた。被災者の高齢化に伴い、今後「歯科サービス提供の遅れが生命にかかわる」という事例が増加すると思われる。被災経験の伝達により、歯科医師・歯科衛生士が体制整備の中心的役割を果たすことが望まれた。
特集・MCRT(心理的危機介入チーム)
特集・"地域の看護力"で災害に備える
Abstract:大規模災害における医療支援のボランティア参加で、支援からの撤退の時期を予測することの重要性を痛感した。参加者の勤務を補う都合上、初期の段階からいつまで医療支援が継続しそうかを事前に予測できれば、医療支援側のボランティア参加に伴う不安と勤務の問題を解消できるのではないかと考え、阪神淡路大震災でのデータをもとに解析した。避難所の医療支援施設受診患者数は減衰曲線に従って減少した。減衰曲線の特性から、受診患者数の減少は集団感染症などの避難者相互間に影響される要因ではなく、受診患者数の減少は施設に避難する被災者数の減少を反映していると考えた。施設の避難者の調査期間中の累積患者総数と受診患者数の減少の半減期の間には相関関係があり、規模の小さい施設に避難する被災者の方が早期に自立する傾向があった。
Abstract:災害後の子どもの心のケアでは、まず、大人が丁寧に介入することが大事である。すなわち、周りにいる大人たちがトラウマに関する知識を普段からもっていて、子どもたちの様子を観察し、丁寧に介入することが大事である。他人から親切にされたという事実はトラウマからの回復のきっかけになる。次に、子どもたちに安心感、安全感、自己コントロール感および信頼感を与えることが重要である。大人は、子どもの安全感を確保する必要がある。そのために、子どもと接する時間を普段より増やす、安心できる情報を正確に伝える、子どもの話にしっかり耳を傾け、子どもの気もちを受け止め、一時的に勉強など子どもを束縛するものを緩めるなどの配慮が肝要である。さらに、子どもたちと感情や経験の共有をはかることが必要である。出来事について話したり、絵を描いたりすることで、出来事そのものや自己の感情を表現して、他者に受け入れられることにより解放されていく。最後に、長期に症状が続く時には専門家の治療を受けることを躊躇しないことが肝要である。
Abstract:新潟県中越地震の被災地において、当院医療救護派遣チームは地震後6日目より9日間医療救護活動を行い、その中で薬剤師の果たした役割について検討した。当院救護班は1班が医師2名、看護師2名、薬剤師1名、事務1名の計6名で構成され、3斑が3日間づつ活動した。診察患者は感冒・打撲・腰痛・不眠・不安などが多く、診察人数は1日平均25人であり、半数以上に薬が処方された。また、公衆衛生に対する啓蒙活動としてポビドンヨードうがい液や擦式消毒液を積極的に配布し、うがいや手指消毒の励行を促した。薬剤師は医薬品管理、情報収集・不足薬品の調達、調剤、慢性疾患患者の薬剤手配、使用医薬品集計を行った。薬剤師はこれらの役割を通して円滑な医療救護活動に貢献できると考えられた。
Abstract:関東地域の災害拠点病院を対象に、放射線部門の災害対策、対応についてアンケート調査を行った。92施設から回答があり、うち69施設は災害拠点病院であった。放射線部門の災害対策として重要なことは、建物の耐震基準・電力供給・バックアップ方法など自施設の現状把握、被災経験を参考にしたシステム障害時のマニュアル整備、災害時の様々な状況を想定した撮影、検査の定期的なシミュレーション(訓練)の実施である。また、防災意識の向上を目的とした教育体制の確立が災害時の人員確保、日々の装置管理、災害時の指揮命令系統の徹底、マニュアル周知につながると考えられた。
Abstract:当センター手術室看護師13名を対象に、定期的な手術室避難訓練や学習会を行うことによりスタッフの防災意識を高め、日頃から災害時の自分の行動をシミュレートできる内容のケアパッケージを作成、活用した。アンケート調査にて訓練前後の防災意識の変化を検討したところ、定期的な避難訓練や学習会の実施により日頃からスタッフの災害に対する意識が向上し、ケアパッケージの内容を使いやすいものに修正、改善でき、物品場所の見直しなどマニュアルを改善できることが示唆された。定期的な避難訓練は防災に対する意識向上に効果的であり、ケアパッケージの活用は災害時の自分の役割をイメージするのに効果的であると考えられた。
Abstract:震災後11年が経過した時点での神戸市民の心理的影響について分析を行った。無作為抽出により住民基本台帳から選んだ対象者(20〜70歳)のうち、818名から有効回答が得られた。この回答者のうち約8割が震災経験者であった。最初に国内外の災害精神医学を概説し、次に震災後11年目の影響を実証的に検証した。一般的な精神健康及びアルコール依存においては11年目の時点で震災経験者と未経験者で差は見られなかった。また、11年経て、震災に関連したPTSD症状は、多少は残っていたが、臨床的には重篤度が低いレベルの被災者が大多数であった。さらに、震災後10〜11年目におけるPTSD症状と震災に関連した問題を専門家へ相談する被災者は3%ほどであったが、専門家を訪れていない被災者の中でPTSD症状がやや重篤な人々も存在した。そして、阪神・淡路大震災以外のトラウマ経験の頻度を震災経験者と未経験者で比較すると、より多くの震災経験者が自然災害と喪失体験を経験したと報告していた。最後に、これらの結果を踏まえ、長期にわたる定期的なアセスメントの必要性と大災害後等の精神保健活動について提言する。
Abstract:災害時の精神保健医療活動について、活動の質を高めるためにはまず現状を何らかの方法で評価することが必要となる。そこで、政策評価の視点による評価の方向について検討し、活動を複数の事業(プロジェクト)を抱える施策(プログラム)として体系的に把握することを試みた。具体的な評価に向けては、活動の目的とその達成のための手段選択の関係を意識し、適切な指標を設定していくことが必要と考えられた。また、活動内容の体系的な認識を基にして、個々の被災者の医療ニーズと被災地域全体の復興を視野に入れた包括的なニーズが相補的に把握され、活動におけるソフトとしてのプログラムが状況に応じて柔軟に運用されること、同時に、活動体制も効率的に組織化されることが、活動の質を高めて行くことにつながると考えられた。
Abstract:惨事ストレスの長期的な影響を把握し、既存の惨事ストレス対策を強化するために、消防職員(N=1,432)を対象に調査を行い、1,096名のデータを解析した。阪神淡路大震災と殉職を体験した職員は69.8%(n=765)、殉職事案を体験した職員は90.5%(n=992)、震災と殉職を体験していないのは9.5%(n=104)であった。当時職員だった人の11.6%が震災に関する外傷後ストレス障害のハイリスク者であり、「命の危険を感じた」「悲惨な光景を見た」「恐怖・無力・自責を感じた」「私生活にとても影響があった」「震災当日、家族の安否が不明だった」と答えた人はそうでなかった人より、IES-Rの得点が有意に高く、症状が多かった。殉職に関する調査時点での外傷後ストレス障害のハイリスク者の割合は、6.4%と低かったが、殉職事故の現場に出動した職員(n=104)を対象にすると14.4%であった。事故現場での活動中に「命の危険を感じた」「無力・自責を感じた」「事故後の組織対応に満足しなかった」と答えた人がそうでなかった人より、IES-Rの得点は有意に高く、症状が多かった。うつおよび不安障害を測定するK10のハイリスク者は、全体(N=1,096)の10.2%で、これは一般人口の約2倍だった。震災や殉職事故などの惨事ストレスによる影響はそれほど強いものではないものの、一般精神健康は決して良くないことが分かった。今後は惨事ストレスに特化するのではなく、全般的なメンタルヘルス対策を含む、包括的なアプローチが重要である。
Abstract:飛行機、列車、船舶などの大規模交通災害は大きな人的被害を出し、被害者や家族にもたらされる心理的影響は甚大である。その災害は明らかなトラウマ体験として認知されるものであるが、事故そのものの発生頻度が少ない、生存者が少ない、生存したとしても被害者は離散してしまうなどの特徴から、被害者や家族が受ける心理的問題についての研究はあまりなされていない。本研究では平成17年に発生したJR福知山線事故の負傷者を対象とした調査を行い、どのような心身の健康上の問題が遷延するのか、そしてどのような要因が発症と遷延化に影響するのか、という点について検討した。調査は面接によって行われ、58名の負傷者が協力した。構造化面接の結果、DSM-IVに基づくPTSD診断基準を完全に満たす者が16人(27.6%)、部分PTSDが11名(19.0%)、診断のつかない者が31名(53.4%)であった。PTSD診断のつく者は、生活の質(QOL)に関して国民標準値を大きく下回っている者が多く、また、身体の疼痛を慢性的に感じている者が、診断のつかない者より有意に多かった。精神的影響は身体面、生活機能などに大きな影響を残しており、継続した支援が必要と思われた。
Abstract:腹膜透析患者に対しパンフレット「災害に備えて」を使用した支援を行い、その後の利用状況などについて外来通院患者35名にアンケート調査した。パンフレットを自宅に帰って読んだのは91.2%、保存しているのは73.5%であった。分りにくかった説明は「避難場所でのこと」「バッグ交換中に災害が起きたとき」「他の病院情報」が多く挙げられ、次いで「連絡方法」「普段の心構え」「準備しておくもの」「バッグ交換中以外に災害が起きたとき」「家族の協力」であった。説明後、災害時の準備をしたのは32.4%、災害時の連絡先を家族にも分かる場所に貼っていたのは23.5%、バッグ交換の仕方を家族もできるようになったのは20.6%であった。災害に対する不安については「変わらない」44.1%、「軽減された」23.5%、「以前からない」23.5%、無回答8.9%であった。パンフレットは読んでもらえたが、災害に対する意識を十分高めるまでには至らなかった。
Abstract:新潟県中越地震後の子どもの行動変化に影響する因子を明らかにするため、就学児・未就学児を含めた683名を対象としてアンケート調査を実施した。著者らが先に実施した研究では、震災後38%の子どもに行動変化が生じ、行動変化の発現には親の精神状態が影響を及ぼしていることを報告したが、今回の結果では、けが、病気、家屋の被害などの因子も子どもの行動に影響を与えること、さらに親の精神状態が悪いほど行動変化が長期間持続するなど新たな知見が得られた。以上から、震災時の子どもの外傷性精神症状の予防・治療には、物質的援助や子ども自身のケアとともに、親への精神的サポートが重要であることが示唆された。
特集・トラウマの精神療法
Abstract:災害に対する著者らの施設における全職員499名の意識調査を行った。1)回収数423(84.7%)、有効回答数365(73.1%:男性96名、女性269名)であった。2)勤務中に地震・火災発生が起こるかもしれないと感じているは、「全くない」「あまりない」が35.7%であった。年齢別にみると「少しある」「大いにある」が50代以上89%、40代60%、30代50%、20代40%と加齢とともに危機意識は高くなっていた。2)災害発生時の救護活動に「参加したい」は44.1%で、反対に不参加の理由としては「何をしたらいいのか分からない」46%、「時間的余裕が無い」27%、「面倒くさい」6%であった。3)防災マニュアルが置いてある場所は「知っている」が56.9%(看護師75%、医師16%、事務23%)であった。4)シミュレーションを取り入れた防災訓練が「必要」との回答は95%、訓練開催は「1回/年」63%、「1回/半年」24%、「1回/2年」11%であった。5)災害時に自分の役割が分かり「行動できる」は26%、何があったら行動できるかは「災害シミュレーションの実施」が55%、「具体化したマニュアル」が25%であった。
Abstract:災害発生時における体外循環の安全対策について検討した。方法は体外循環中に災害が発生し、体外循環を継続した状態での避難と避難できない場合の訓練を人工心肺災害対策マニュアルに従い実施した。その結果、1)準備時間は避難する場合で20分30秒、避難できない場合で2分12秒であった。2)訓練の実施で、スタッフには災害対策に対する意識の向上がみられたが、指揮系統や持参する薬品、物品が標準化されていないことなどの問題点が判明した。3)人工心肺災害対策マニュアルの見直し、および改訂を行ないつつ、今後は定期的な防災訓練を行う必要があると考えられた。
Abstract:国内外の災害トリアージを含むダメージの表示システムを参考に医療機関の被災状況を示すカラー・コーディング法を考案した。カラー・コーディングを富山大学附属病院災害マニュアルに2003年より導入し、医療安全管理と災害時のダメージ・コントロールを一元化した危機管理システムとして運用し、災害対応訓練にも用いた。医療安全上の緊急運営システムである「コード・ブルー」システムと同じ枠組みで、大規模災害や多数傷病者来院などの緊急運営システムが、例えば「コード・オレンジ」などの通達で起動できる態勢を構築することが可能となった。また、このカラー・コーディングを用いて計3回の防災訓練を行ったが、ここでは、各カテゴリーの細かい定義づけ、最初に起動したシステムと実際の災害規模が異なった場合の再起動のありかたなどが提案された。
Abstract:基礎看護技術を習得課程にある看護学生が、震災発生時に何が実施できると考えているかを知るため、3学年80名、2学年84名、1学年97名の計261名を対象にアンケート調査した。有効回答233名のうち、過去に震度6弱以上の経験者は6名、救援ボランティア経験者は10名であった。対象者とその家族の安全が確保され、自宅倒壊の恐れがないことを条件としていたので、85.8%が救援ボランティアに参加すると回答していた。参加理由として「看護学生だから」という回答は2、3年生の割合が高く、医療従事者としての自覚が芽生えたからと考えられた。実施できる技術も学年間に差があり、学年が上がるにつれて実施可能な看護技術が増加していた。
Abstract:本研究は、災害看護に関する日本赤十字社の基礎教育の実態と課題があるかを捉えるため、日赤系看護専門学校20校ならびに日赤系大学・短大を含む看護系大学19校を対象にした調査結果を考察したものである。日赤系看護専門学校では、赤十字災害救護に役立つ人材の育成を目的に、「災害看護論」の名称で必修科目として設置されている。日赤系大学・短大では科目設定・方法は各校で異なっている。日赤以外の看護系大学で科目設定している大学は少なく、成人看護学や地域看護学、その他の科目の一部として教授されているところが多い。指導者や教授方法に困難さがあるためでもあるが、災害看護学として学問的確立やカリキュラムに位置づけることが課題とされている。日赤系看護専門学校・短大では、教授方法の蓄積や日赤各県支部の救護体験者の指導協力も得られるため災害救護演習を含む教育ができる「強み」がある。しかし、卒後研修に繋げる学習内容の精選や災害看護学の学問的な確立は遅れている。卒後教育へ連動させるためには基礎レベルの明確化や特色ある看護学カリキュラム開発、継続性のある評価的な研究や指導者育成が望まれる。
Abstract:救急医療機関には多数の自傷および自殺未遂者が搬送される。本稿では心的外傷を経験した大量服薬の1症例を呈示し、年間約250人の自傷および自殺未遂者が搬送される救急医療機関の無床精神科という環境における精神科対応の実情について述べた。救急医療機関での面接では、自傷と自殺の異同を理解した上で、中立性を保つことと、自殺企図に至る具体的状況を行動記述的に聴取することが重要と考えられる。また、一部の自殺未遂者には自殺企図後に治療の転機につながるような変化が起きうることについても付言した。ただ、現状では病棟や人的資源の不足から十分な精神科的介入を行えない施設が少なくないため、救急医療機関における精神科医療体制のさらなる整備などを通じて、自傷および自殺未遂者への介入の質を高めていくことが必要である。
Abstract:災害救援者の二次受傷(PTSD:Posttraumatic Stress Disorder)とメンタルヘルス対策について、先行研究における災害救援者のPTSDに関するストレス要因、チェックリスト、メンタルヘルス対策を検討した。その結果、災害救援者のPTSDの予防には、職場での日常的な訓練や、職場や家庭での良好な人間関係などが重要であると考えた。
特集・難病患者の災害時対策
Abstract:新潟県中越大震災(以下、震災)で被災した2型糖尿病患者135人を対象に、震災が血糖コントロールに与えた影響及びその因子を明らかにするため、質問紙および診療録からデータを収集し関連検証型研究を行った。震災前と比較して震災後の糖尿病患者の血糖コントロールは有意に悪化していた。また、居住地では震源地以外群、自宅の被害状況では被害なし群、治療法では食事・運動群、経口薬群が有意に悪化していた。そこで、血糖コントロールの悪化因子を明らかにするために震災前・後のHbA1c値の差を目的変数とし、治療法(食事・運動群、経口薬群、インスリン注射群)、居住地、自宅の被害状況、避難所・車中泊の経験、食事を説明変数として重回帰分析を行ったところ、関与した因子は居住地と自宅の被害状況であった。今回の研究で明らかにできなかったが、震災と降雪時期が重なったため豪雪による生活環境の変化や、震災そのものに対する心理的ストレスも影響していたと推察された。
Abstract:新潟県中越地震に見舞われてから2年半が経過し、避難生活に伴う健康被害が注目され、特に車中泊避難による深部静脈血栓症(DVT)/肺血栓塞栓症(PE)と、強度のストレスによるたこつぼ心筋症は大災害時の健康被害として浮彫りにされた。検診を受けていない通院患者の中から肺血栓塞栓症の3例を経験した。発災直後、避難所で行った結果では受診者78例中29例に血栓を認めた。1年後の調査では受診者964例中78例に血栓を認めた。2年後の調査では新たな受診者350例中21例に血栓を認めた。血栓保有者の中で経時的に経過を見ることができた68例では、1〜2年後に32例は血栓が残っており、その中には消失と再発を繰り返す人がいた。また、浮遊血栓は壁在血栓化する傾向が見られた。
Abstract:著者らの施設における看護師212名を対象に災害発生時の自主参集に対する意識調査を行い、自主参集を阻害する要因について検討した。その結果、アンケート回収率は92.9%、そのうち有
効回答率は69.5%であった。自主参集を不可能とする要因としては、自分の助けがないと困る家族の有無、自主参集に対する意識の問題、の2点が明らかとなった。
Abstract:整形外科病棟看護師27名を対象に、災害看護に対する認識調査と机上シミュレーションを実施した。その結果、災害看護に対する認識調査では26名より回答が得られ、勤務中地震が起き
たときの患者への対応に不安を感じたことのある看護師は100%であった。また、整形外科の特殊な処置を受けている患者の避難時の処置方法が分からない看護師は56%であった。机上シミュレーション実施後のアンケート調査では23名より回答が得られ、机上シミュレーションは災害時の対処や知識と心構えの習得に効果的であることが確認された。また、机上シミュレーションの実施は危機管理意識を向上させ、現在も問題点を見つけ出し対策を図る機会となった。
Abstract:著者らの施設における看護師282名を対象に災害時のトリアージに対する意識調査を行い、トリアージの学習会を実施した。災害時のトリアージに対する意識調査では、災害に対する関心や危機感が低いことが確認された。学習会を実施することで、災害に対する関心を持ってもらうことはできたが、トリアージの方法・タッグの判別方法などは過半数の人に理解してもらえなかった。また、災害に備えて防災グッズを用意するなど行動に移す人も少なく、災害に対する危機的意識は学習会後も大きな差はみられなかった。以上より、今後も災害への関心・意識を高く保つためには、定期的な学習会が必要であると考えられた。
Abstract:大災害後には、衛星通信に基づいたワイヤレスIP(TCP/IP又はUDP/IP)が、被災地と救助又はトリアージセンターとを結ぶ最も有効なシステムである。TCPとUDPの伝達遅延とシステム処理量について比較検討した。まず、衛星と同様に機能するデジタルIPトランスポーターを用いて、100KB、1MB及び10MBのX線画像の送信における遅延時間を測定した。更に送信中のフレームエラー率についても検討した。その結果、TCPプロトコルは衛星通信システムには適さないことが示された。TCPは容量の小さいテキストデータなどのオンライン送信には適していると考えられた。また、UDPは音や画像の送信に有用であることが示された。
Abstract:我々は今年度冬期に打ち上げ予定の試験衛星WINDSにより実現する衛星と地上の融合ブロードバンド基盤で可能になる在宅医療電子カルテ(モバイルICU)を開発検討している。これは在宅医療に特化したASP型のシステムで1)テレビ会議機能、2)生体モニター情報通信、3)医用画像PACS機能、4)電子カルテ機能を持っている。機材の最適化において、地上インターネット網で有効であっても衛星基盤では注意が必要である点が明確になった。完成したシステムは、1)在宅医療、2)往診時、3)在宅患者の旅行先、4)老人ホームなど施設、5)災害時の避難所、6)災害現場で利用できると考えられた。
Abstract:ICUスタッフ56名を対象に『震災の事前・初期対応』をテーマとした勉強会を実施し、その前後に震災に関する意識・認識調査を行った。勉強会は講義形式で地震の体験映像を取り入れたものとした。意識・認識調査は50名から回答が得られた。「近い将来に震度5以上の地震が起こるという危機感はあるか?」との質問に対して「ある」と回答した人の割合は勉強会前が18%、勉強会後が80%であった。「防災マニュアルがあることを知っているか?」の問いに対して「知っている」と
答えた人は勉強会前が38%、勉強会後96%であった。「停電したとき自家発電に切り替わるまでにどれくらい時間がかかるか?」の問いに対する正答率は勉強会前が18%、勉強会後88%であった。「ICU病棟の中央配管の酸素はどのような場合に供給が絶たれるか?」に対する正答率は勉強会前が36%、勉強会後88%であった。「内部バッテリーがある呼吸器はどれか?」に対する正答率は勉強会前8%、勉強会後94%であった。
Abstract:『災害訓練用看護行動チェックリスト』を開発するための第1段階として、訓練で患者・家族役を演じた学生32名の手記を分析し、訓練でみられた看護師の行動を分類した。訓練は、高速道路上での大規模な事故により多数の傷病者が生じ、災害拠点病院に搬送されたことを想定して実施した。手記に記述された看護師の行動は延べ158あった。これらの行動を、学生が「安心を感じたもの(安心行動)」と「不安を感じたもの(不安行動)」に分けると、それぞれ94、64であった。安心行動の主なものは、「痛いでしょうけど頑張りましょうね」「ここにいたら安全ですからね」といった<コトバ>が35行動(37%)、手を握る、背中・肩をさするなどの<接触>が18行動(19%)、落ち着いた口調や優しい声といった<抑揚>が11行動(12%)であった。不安行動の主なものは、放置された、独りきりにされたなど<看護師との関係性に関するもの>が18行動(28%)、重複した検査や移送先についての説明の欠如などの<処置や対応に関するもの>が16行動(25%)、戸惑いを隠しきれずに「どうし
よう」と言ってしまった看護師の言動や援助者の会話がかみ合っていないなどの<話し言葉に関するもの>が16行動(25%)であった。看護師の行動を[言語的]と[非言語的]に大別して両者の比率を調べると、安心行動では[非言語的]がはるかに多いのに対して、不安行動では両者の差はわずかであった。
Abstract:当院は県の基幹災害医療センターに指定されており、災害時にはどんな状況下においても被災地内外の患者を受け入れなければならない。手術室は8部屋あり、手術中に被災した場合は術中患者と職員の安全を確保するとともに、手術状況や室内の被災状況を速やかに収集し災害対策本部に報告することが望ましいとされている。今回、手術室看護師15名を対象に、日勤帯での地震を想定したシミュレーションを行った。さらにその後、災害初動時の行動・報告に関する勉強会を開催し、その際、新たに作成した「状況報告用紙」の使用説明を行った。その後再度シミュレーションを実施し、1回目のシミュレーションと内容・所要時間などを比較検討するとともに参加者アンケートを行った。この比較検討・アンケートの結果から、勉強会の開催と「状況報告用紙」の使用により情報収集に対する看護師の意識が向上し、報告時間が短縮したことが確認された。
Abstract:患者が携帯しやすい大きさで、震災などの災害時に対応できる「透析患者カード」を作成した。大きさはテレフォンカード大、材質は紙で、両面をラミネートした。記載内容は「氏名」「生年月日」「電話番号」「住所」「お願いの文章(何か異常があったら下記に連絡してください)」「連絡病院名・電話番号」透析条件」「血液型」「禁忌薬剤」「特記事項」などとした。このカードを22名の患者に配布し、2週後と6週後の携帯状況を調査したところ、2週後に「常に携帯している」と回答した人の割合(携帯率)は95%で、6週後も同様であった。22名がカードを配布される前に使用していた「透析手帳」の携帯率は29%であり、カードのほうが有意に高かった。
Abstract:当院では、阪神・淡路大震災の体験を風化させないために毎年危機管理研修を実施しており、平成18年度は『断水』をテーマに行った。研修内容は「講義」「被災者の体験談」「模擬演習(仮設トイレの作り方・水運びなど)」「グループワーク」「施設見学(防災未来センター)」などとした。参加した看護師28名に対して研修前後に断水への意識を問うアンケートを行った結果、研修によって断水時の具体的行動がイメージでき、意識に変化がみられたことが確認された。
Abstract:外来透析患者15名に対し、自作のパンフレットを用いて災害教育を行った。内容は、日頃の心構え、非透析時に災害に遭った場合の対応(安全の確保、病院との連絡方法、他の施設での透析、病院非常食)、透析時に災害に遭った場合の対応、災害時伝言ダイヤルの利用法などとした。教育効果を検証するため、災害に関する意識調査を教育前と教育後に行い比較検討した。結果、「災害時の対応に不安をもっているか?」という質問に対して「非常に不安」と回答した人が教育前は7名(47%)いたが、教育後は1人もいなかった。
Abstract:透析患者28名を対象に、在宅時被災を想定した避難訓練を行い、その効果を検証するため訓練前後に意識調査を行った。訓練の内容は、まず『災害に負けない私たち(中外製薬提供)』のビデオを視聴させ、自作のパンフレットを用いて被災後の生活の注意点や当院の被災状況確認方法を説明した。その後、「透析中に震度6の地震が発生し機械から離脱する」という想定でシミュレーションを行った。意識調査の結果、訓練を行ったことで在宅被災への不安は軽減されたが、一方で「イメージしたくない」「スタッフの対応能力への不安」という新たな不安が生じていることが明らかになった。
Abstract:大規模災害のほとんどないB地区の公立5病院に勤務する看護師262名にアンケートを行い、個々に思い描く災害イメージを持っているか否か調査した。結果、イメージを持っていると回答した人は36%にすぎず、現在行われている災害研修は災害イメージの構築につながっていないことが示唆された。災害イメージの構築に影響する要因を探索するため、イメージを持っている群と持っていない群とで諸因子の比較解析を行った。比較項目は[性別][年齢][住居形態][災害拠点病院勤務の有無][勤務場所][災害経験の有無][災害経験者の話を聞いた経験の有無][災害活動が記載されている本や雑誌をみた経験の有無][災害研修参加の有無]とした。解析の結果、[年齢]にのみ有意差が認められ、年齢が高いほどイメージできていた。
Abstract:非常勤を含む全職員307名に対して質問紙調査を行い、年齢別、経験年数別、在職年数別、職種別で比較検討した。結果、全体的な傾向として職員の多くは災害に対する準備の重要性を強く意識していたが主体的行動を起こしている人は少なかった。年齢40歳以上、経験年数10年以上、在職年数5年以上、医師・看護師は災害への意識が高かった。
Abstract:DIGに参加した看護職19名に対してDIG実施前後に防災の認識調査行った。結果、「火災警報受信盤がどこにあるか知っている」と回答した割合はDIG前が37%、DIG後95%であった。「火災警報受信盤をどのように使用するか知っている」と回答した割合はDIG前0%、DIG後58%であった。「非常口を知っている」はDIG前80%、DIG後100%であった。「入院患者の避難場所を知っている」はDIG前32%、DIG後100%であった。「非常持ち出し袋のある場所を知っている」はDIG前63%、DIG後100%であった。「消火器のある場所を知っている」はDIG前68%、DIG後100%であった。自由記載欄の記述内容を質的帰納的に分析した結果、以下の4カテゴリーが抽出された。1)シミュレーション教育による効果。2)防災に対する問題意識の高まり。3)スタッフから生まれたアイデア。4)実際の対応への不安。
Abstract:ICUに勤務する看護職員27名が、災害時に自分ならどう行動するかを考えることに重点を置き、問題解決技法を用いてアイデアを出し合うという全員参加型のマニュアル作成に取り組んだ。その成果を検証するため取り組み前後にアンケートを行い、「災害対応の基礎的知識」や「災害対応への不安」が取り組み後どのように変化したか調べるとともに、問題解決技法を使用した感想を調査した。結果、「災害対応の基礎的知識」は取り組み後有意に向上し、「災害対応への不安」については不安内容がより具体化していた。問題解決技法を使用した感想は、「全員で意見を出し合うことができ、参加した実感がもてた」「他の参加者のアイデアを参考にしながら発想できる」などの肯定的なものと、「考える時間が短い」などの否定的なものとがあった。
Abstract:海外からの輸入感染症や新型感染症に対応している当院(日本医科大学成田国際空港クリニック)において、最近2年間に感染症と診断された956例(3.0%)について分析した。対象を空港勤務者(57.7%)と旅行者(32.8%)で比較した結果、空港勤務者ではインフルエンザ感染症が感染性腸炎の約33.2倍であったのに対し、東南アジア・アフリカ・東ヨーロッパや中南米などからの日本人帰国者、もしくは外国人訪問者においては、細菌性感染に起因する感染性腸炎がインフルエンザ罹患数の約2.4倍であった。
Abstract:日本赤十字社における災害救護関連規則の成立と発展の経過(1871(明治4)年の「窮民一時救助規則」から、1955(昭和30)年の「日本赤十字社救護規則」まで)を辿り、そのプロセスに影響を及ぼした社会背景や時代の思想、災害や戦争などについて概説した。現在、日本赤十字社の災害救護活動は、「災害救助法」(昭和21年(1946年))、および「災害対策基本法」(昭和36年(1961年))により義務づけられており、救援が必要か否かの判断は各支部にまかされている。
Abstract:消火剤が散布され多数傷病者が搬送された事例に対し集団化学災害に準じた対応をした。各種関係機関と連携して対処した内容を、内閣官房危機管理監の下で作成された「NBCテロ対処現地関係機関連携モデル」に照らし合わせて検証した。発災現地における消防、警察間の連携の困難性と、医療機関と現地調整所との双方向性の情報交換のためには早期から医療機関へ派遣された消防連絡員による無線を利用するなどの工夫が必要であること、そして日本中毒情報センター活用のための認識拡大の重要性などを指摘した。また、多数傷病者が医療機関に受診した際のコンピュータソフトを利用しての情報管理の有用性と、トリアージに際して、化学災害特有の基準の導入と弾力的なカテゴリー運用が重要であること、NBC災害時には分散搬送でなく集中搬送も考慮すべきであることなどを報告した。
Abstract:JR福知山線列車脱線事故における初動期の現場医療活動について報告し、災害医療の観点から検証する。事故概要:2005年4月25日9時18分JR福知山線で列車脱線事故が発生した。死者107名、負傷者549名(重症139名)の多数傷病者発生事案であった。現場活動:我々は事故発生から約40分後の10時01分に現場到着した。先着医療チームとして2次トリアージと応急救護所における緊急処置に従事した。また医療チームが順次現着した後は医療チームのcommanderを担当し、現場医療活動の統括にあたった。検証:ドクターカーシステムが整備、認知されており発災早期に医療チームの現場派遣が可能であった。また医療チームは統制がとられ適切にトリアージ、現場治療がなされたと評価される。その結果、科学的に証明することは種々の理由により困難ではあるが、preventable deathが回避できたと推測している。しかし、初動期において各機関は十分な情報収集と共有化が行えなかった。その結果、詳細な事故状況、通信手段、患者搬出の動線、搬送手段(救急車、ヘリなど)の状況、搬送医療機関の選定、医療チームの要請状況などの把握、整備、確立に時間を要した。今後は現場指揮本部を通じて消防、警察と早期から十分に情報共有を行い、トリアージ、処置、搬送の一連の連鎖が途切れることなく行われることが期待される。まとめ:災害医療は日常業務の延長にあり、本事案で明らかとなった課題を検証し、本邦における災害医療システムの構築、整備、啓蒙が望まれる。
Abstract:災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team;DMAT)は災害発生直後からの初動と4日間程度の自給による活動を期待される。よって当院では4日間にわたるDMAT派遣訓練を行い実働に耐え得るか検証を行った。その訓練が奏功し、実災害への初期対応が円滑に行われた貴重な経験を得たので報告する。2006年9月に開催されたWRCラリージャパン(World Rally Championship Rally Japan)において、サービスパーク内で選手及び観客に対する救護活動をDMAT活動と見立てて訓練を行った。DMAT研修資料や当院DMAT派遣マニュアルを参考に事前準備を行い、活動期間中に過不足がないかを検討し、改善を行った。期せずしてその約2ヵ月後に佐呂間町で竜巻災害による負傷者が発生し、当院DMATが出動した。訓練効果により出動決定から25分で出発することができた。現場到達前に事態は収束し撤退となったが、初動体制の確認を行うことができた。4日間の訓練により実際的なイメージを持てたことが今回の円滑な活動に役立ったといえる。
Abstract:地方自治体が策定する多くの地域防災計画において、災害時に使用される場外離着陸場(以下、災害時臨時ヘリポート)が掲載されている。これを有効に運用していくためには、その設置目的や性格を明確にすることが求められると考えられる。そこで、災害時臨時ヘリポートの候補地について、その特性や役割を簡易にかつ客観的に示すための手法について提案する。具体的には6項目からなる災害時臨時ヘリポートの特性に関する指標と、それを組み込んだ関連樹木法による順位付与をおこなった。愛知県碧南市に適用した結果、2箇所ある災害時臨時ヘリポートについてそれぞれの特性を明らかにするとともに、災害時における役割分担や地域防災計画への位置づけについて論じることができた。
Abstract:愛知県ドクターヘリは出動症例のうち外傷症例が約60%を占める。そのためフライトナースの教育の中でも外傷看護に関する教育は非常に重要である。愛知県ドクターヘリの外傷症例の看護記録から、現場で行われた外傷看護実践内容を抽出した。プレホスピタルにおける外傷看護実践はPTD(preventable trauma death)回避を念頭に置き、医師・救急隊と協働してJPTECの実施や評価、JATECの実施・介助・評価に加え、様々なコーディネートが行われていた。又ドクターヘリフライトナースは、救助時に起こりうる病態の知識に加え、安全に配慮しながら野外での活動の技術も必要であることが明らかとなった。
Abstract:地震災害時における市町村保健師の役割と特徴を明らかにすることを目的に、A県内各市町村の保健師を対象にアンケート調査を実施し、79名より有効回答(29.6%)を得た。市町村の防災担当者を対象に筆者らが実施した先行研究では、防災担当者は保健師に「避難者の健康チェック」「救急処置」をはじめとする医療面での役割を期待していたのに対し、保健師は「避難者の健康チェック」「家庭訪問」など健康・保健面を自身の役割と考えていることが分かった。
Abstract:災害拠点病院に勤務する看護職を対象に災害と災害看護に対する基本的知識を習得することを目的とした研修を実施し、その効果を、研修前(24名)・後(25名)のアンケート調査から検討した。その結果、受講生の約半数が災害看護活動に参加した経験を有していた一方、災害看護の講義を受けたことのある者は約2割で、受講者は、講義により過去の体験や自分がもっている知識を振り返り、災害発生直後のみではなく長期にわたる継続したケアが必要であることや、災害による急性ストレス障害は誰にでもあり得る反応であることなどを知ることで、これまでの考え方や視点が変化していることが窺えた。
Abstract:総合病院の災害訓練にボランティアで参加した看護学生の学びを役割別に明らかにすることを目的に、3年課程看護専門学校3年次生31名へ自由記載によるアンケート調査を実施した。内容分析の結果、【災害看護に必要な能力】【看護師の関わり方】【患者の心理状態】【役割モデルからの学び】【他職種との連携】【学生の役割】の6つのカテゴリーが抽出され、患者役の体験として【看護師の関わり方】【患者の心理状態】の学び、医療班の体験として【役割モデルからの学び】【他職種との連携】【学生の役割】が、それぞれ抽出された。
Abstract:死者151名の人的被害と家屋の倒壊などの物的被害をもたらした「平成18年豪雪」が人々の健康や生活に及ぼした影響を明らかにすることを目的に、初動調査として被害の大きかった4県(秋田、山形、新潟、福井)に直接赴き独自に作成した調査用紙をもとに調査を行うとともに、初期調査として13都道府県を対象に現地の関係機関へ電話による調査を実施した。その結果、死傷した原因は屋根からの転落事故が大半を占め、雪害による人々の健康や生活への影響は、備えの不足、高齢化・過疎化、雪害認識、疲労の蓄積などが影響していることが分かった。
Abstract:看護学生の行うトリアージの特徴を明らかにすることを目的に、看護学部4年生(平成16年度142名、平成17年度138名)を対象に模擬患者を用いたラリー方式のトリアージ訓練を実施し、トリアージの正解率、判定時間、トリアージタグの記入内容を検討するとともに、訓練終了後にアンケート調査を実施した。その結果、看護学生のトリアージの特徴として、災害に関する知識不足が被災状況やその後の状態変化を予測することを困難にさせていた。また、災害急性期の被災者とのコミュニケーションに戸惑いがみられ、情報源としてのトリアージタグが有効に活用できていないといった特徴がみられた。
Abstract:中越地震で災害救助法が適用された54市町村の歯科診療所508施設を対象に調査し、89施設から回答を得た。建物の損壊状況は、修理を要した施設が37%であった。歯科診療機器の被害については、ユニット類は3%の施設で転倒し、16%で位置がずれ、9%で修理を要した。X線装置は4%で転倒し、24%で位置がずれ、18%で修理を要した。地震後に地域歯科医師会と連絡が取れた時期は、未回答の施設(47%)を除くと全ての施設で5日以内に取れていたが、連絡網を設置している歯科医師会はわずかであった。診療所の復旧作業は75%の施設が7日以内に終了し、68%の施設では7日以内に診療を再開していた。再開後の患者数は、地震前の半数未満となった施設が地震1ヵ月後には27%みられたが、2ヵ月後には13%に減少し、6ヵ月後にはなくなっていた。震度6以上の地域では被害が大きく、復旧にも時間を要し、地震後6ヵ月経過しても地震前の患者数に回復していない施設が多かった。
Abstract:目的:2004年10月23日に発生した新潟県中越大震災において新潟県歯科衛生士会は、震災直後から歯科医療救護活動に参加した。過去に大災害時の救護活動を経験したことがなく、対策本部の指示に従う活動に止まった。この体験をもとに、歯科衛生士としての支援のあり方を検討することを目的とした。方法:新潟県中越大震災の歯科医療救護活動に参加した歯科衛生士80名を対象に、救護活動の内容、被災者の口腔内の状態、活動時に困ったこと、今後の課題等についてアンケートを行った。結果:活動内容は、前半は避難所への歯科救援物資の配布や救急歯科治療の補助、心のケアなどであった。後半は仮設住宅での口腔衛生指導や高齢者の口腔ケア、歯科相談が中心であった。活動の問題点は、被災者のニーズを把握できないことや歯科救援物資の片寄りで、歯磨き関連用品の種類や義歯関連用品の不足が目立った。結論:支援体制の確立やマニュアルの作成、技術講習などを平時から行い、緊急時に備える必要があることが示唆された。
Abstract:2005年4月25日午前9時18分頃に発生し、107名の死者と555名の負傷者を出したJR西日本福知山線の列車脱線転覆事故に際して20の医療チームが現場に出動するなど、活発な医療救護が行なわれた結果、調査しえた範囲においては避けられる外傷死(preventable trauma death)を防ぐことができたものと考えられる。当日行なわれた救出救助、医療救護活動について、日本集団災害医学会山本保博理事長の指示により特別調査委員会が設置され、委員会は、現場活動、搬送、医療機関での対応、転院搬送などについて、活動にかかわった多数の関係者からヒヤリングを行い、また診療録を含む関係記録をできるだけ詳細に調査して医療救護活動の全体像の把握に努力した。その調査結果に基づき今後に残すべき教訓と課題を挙げた。
Abstract:平成17年4月25日、9時18分頃に発生したJR福知山線列車脱線事故において、済生会滋賀県病院は6名からなる緊急医療班を派遣し、「瓦礫の下の医療(CSM:confined space medicine)」を中心とする現場活動を行ったので当院活動記録にもとづき報告した。事故に関する情報が事故発生1時間20分後に厚生労働省より入電されたが、厚生労働省や滋賀県からの出動命令はなかった。災害現場は医療活動の需要は極めて高く、現場には数時間で往復できることなどの理由から病院から緊急医療班の派遣要請の出動許可を得た。災害現場発生後3時間40分後現地に到着し、現地消防救助隊よりマンションの地下駐車場に衝突し大破した第一車両の中に取り残された生存者に対して医療救助の要請を受けた。下肢の圧挫傷などの重症患者計4名に対して、急速輸液の実施などのCSMを実施し他施設と協同して消防救助隊との連携により全員を救助、救命できた。今回の列車事故でのCSMの特徴は、訓練を受けた3施設の医師が協同してCSMを行ったことであった。今回CSMにより、(1)死亡宣告による遺体搬出の迅速化と生存者への早期接触、(2)生存者に対する輸液・酸素投与、精神的援助等の医療管理、(3)傷病者のみならず消防職員の健康にも配慮、(4)現場における救出直後の突然死を回避などに貢献できたと考えられた。今回の経験から、(1)救助隊と合同訓練の実施、(2)医療チームと救助隊との連絡方法の取りまとめと周知、(3)必要な医療機器、資器材の準備、(4)救急救命士と救助隊の医療知識の充実、(5)医療チームの指揮命令系統の確立、(6)医療チームの交代制、(7)厚生労働省DMAT活動との整合性、(8)災害弱者(子供、女性、老人など)に対する対応確立などの取り組みがCSMを効果的に実施するために必要であると考えられる。
Abstract:兵庫県尼崎市で05年4月25日に起きたJR宝塚線(福知山線)の脱線事故では、企業を含めた近隣の人々が救助に大きな力を発揮した。地元企業を中心とした市民が素早く秩序だった救助活動をすることができた要因として、(1)日頃のつながりを生かしたスムーズな役割分担 (2)職場の資機材の活用 (3)敷地等の有効利用 (4)機転と工夫 (5)2次災害への十分な配慮--などが挙げられる。一方で、問題点もいくつか明らかになった。(1)搬出に際し、頸椎等の固定ができなかった (2)トリアージされないまま搬送された例があった (3)社有車等での搬送先が、直近の病院に集中 (4)民間車両のため、搬送に時間がかかった--などである。次の大災害に備え、近隣企業の潜在的な救助力を生かすために、地域での一層の工夫が必要である。
Abstract:平成17年4月25日に発生したJR福知山線列車脱線事故では6名の法医専門医を含む11名のスタッフが25日午後3時から28日午後6時まで24時間体制で検案に当たり、犠牲者107名中病院で死亡した6名および司法解剖となった運転士を除く100名を検案した。乗客106名の直接死因は、頭部損傷42名、頸部損傷14名、胸腹部損傷22名、骨盤骨折6名、窒息19名、外傷性ショック・挫滅症候群3名であった。また救急医療におけるpreventable trauma death検証のため検案所見からISS(Injury Severity Score)を計算したが、AIS-90(Abbreviated Injury Scale)では窒息や挫滅症候群が評価されていない事、検案のみでは臓器損傷が不明瞭である事などから、死因によっては必ずしも死亡者が重症傾向を示さなかった。検案時における死亡者のトリアージ黒タッグ装着率は、事故から12時間未満に検案した遺体では54%(25/46)、12時間以上経過後検案した遺体では89%(48/54)であった。
Abstract:<目的>東海地震の発災直後における市民との医療連携の実効性を検証するために、浜松市で結成されている自主防災隊の災害医療の知識と技術についてアンケート調査を行った。<対象>旧「浜松市」内408自主防災隊長にアンケートを送り、回収率60.8%であった。<結果>1.AED、クラッシュ症候群・緊張性気胸、頸部固定、トリアージ、在宅療法については多くの人が理解していない。2.傷病者の観察、意識レベルの判定、適切な体位などについては、25〜30%が理解していた。3.雑誌などを応用した副子固定、救命手当の応用、個人情報の記録持参については、半数以上が理解していた。4.救急保管資器材の扱い方、食糧・水の備蓄、三角巾による圧迫止血、けが人搬送については、多くの人が理解していた。<結語>来るべき東海地震に備えて、発災直後の被災地域内における医療救護の実効性を上げるために、自主防災隊には災害医療に関する体系的な知識・技術の会得が必要である。救護病院の医師等は、勤務する病院の医療圏の自治会を対象として啓発に努力すべきである。
Abstract:2001年9月11日、米国で航空機を用いた同時多発テロによって約3,000名の死者・行方不明者が発生した。DMAT-MA2(Massachusetts)は世界貿易センター破壊に関連する医療支援のためニューヨーク市に展開した。この未曾有の経験を調査することは日本における災害時医療活動の参考になると考えられ、DMATの初期対応、チーム編成、活動内容、装備、情報管理について、主要なメンバーへの聞き取り調査を行った。事件からほぼ4時間後にはNational Disaster Medical System(NDMS)から通知によって「activation status」となったが、正式な出発命令はさらに9時間後(午後10時)となった。チーム構成は医師10名、看護士17名、パラメディック9名、EMT10名、メンタルヘルス専門家2名、薬剤師1名、呼吸管理士1名、レントゲン技士1名、行政補佐官1名、通信スタッフ2名、ロジスティック担当者2名の計55名であり、Incident Command Systemに基づき各スタッフが配置された。NDMSから派遣されたManagement Support Team(MST)の指示でニューヨークに展開したが、生存救出者はほとんど存在せず主に救助者のための医療展開となった。これら活動は現在検討中の日本版DMATの参考になると考えられた。
Abstract:2004年の諏訪大社下社御柱祭で、地域の行政・消防・警察・医療機関などが協力して医療救護体制を構築し救護活動を展開したので報告する。下社御柱祭山出しは、天候にも恵まれ3日間で延べ523,000人の見物客が集まった。救護所は2ヶ所設置し、それぞれ医師2名・看護師3名などを配置し、救急医療セット・2相性体外式自動除細動器・バックボード・簡易ベッド・気道管理セットや携帯式エコーを準備した。17の救護担送班が担当区域での救護・搬送にあたり、救護所近くに待機した救急車4台で救急搬送を行った。また、集団災害に備え多数傷病者の搬送や重症傷病者のヘリコプター搬送の準備を行った。救護所で救護した傷病者は146名で前回(1998年)に比べて3倍以上増加し、一方救急搬送数は36名で前回(1998年)より3名の増加だった。飲酒や炎天下での脱水症状をきたした33名に対し、救護所で点滴治療を行ったことにより救急搬送数を抑えられたと考えられた。医療救護体制を整えることにより、より多くの傷病者に効率的な医療サービスを提供できた。
Abstract:私たちはスマトラ沖大地震及びインド洋津波によって被害を受けたスリランカで、蚊帳を配布し設置するボランティア活動を行った。被災後3ヵ月経ったカルモナイで、12の病院を訪問し、約200個の蚊帳を寄付し、約50個を天井から吊るした。また災害の実態を知るため被災地の病院、被災者キャンプ、JICAの事務所を訪問した。
Abstract:2004年12月26日に発生したスマトラ島沖地震津波は、インド洋の国々を襲い死者22万人、被災者200万人の未曾有の被害をもたらした。この被災者の医療救援活動を行うため、日赤は最も被害の大きかったスマトラ島アチェ州に発災3日目から約4ヵ月間、計6班77名の医療救援チームを派遣した。この救援活動を通して多くの教訓を学ぶことができた。この災害で被害が甚大となった背景に住民の津波災害に関する知識の欠如があり、津波災害の正しい知識の修得が重要であった。災害の権威Pan American Health Organizationは、過去の多くの災害の経験から災害と災害医療に関する迷信と現実を提唱しているが、この災害でも、伝染病流行の危険性の有無、有意義な救援活動に他組織との連携が重要、Securityの重要性などを実体験できた。今回得られた教訓は今後のわが国の災害対策を考える上で重要な意義があった。
Abstract:パキスタン北部地震では、多数の被災者・犠牲者が発生し、日本赤十字社は、国際赤十字・赤新月社の要請に応え、パキスタン北西辺境州アボタバードのField Hospitalに医師・看護師・薬剤師・連絡調整員を約3ヵ月間、計15名を派遣した。ATHの外科診療支援、長期的なリハビリ支援を目的に、ノルウェー赤十字から提供された病院Emergency Response Unit(以下ERU)を用い、手術室、ICUを含む最大200床の自己完結型病院を立ち上げた。現地入りした10月26日より約7週間で222名の入院患者を受け入れ、女性が65%、地震被害者が96%、手術件数は160件であった。現地スタッフと共に良質な医療を提供し、外傷診療のみならず、小児・成人に対する心理療法・理学療法・栄養学的支援が有効であった。災害後の国際医療救援において、その地域での文化・宗教などを尊敬し、地元スタッフと良好な連携・協力が重要である。著者は、同病院の医療責任者として外科的診療、病院管理・運営を担当したので、国際救援チームによるField Hospitalの設立・運営に携わった経験を報告する。
Abstract:災害医療関係者から構成される滋賀県災害医療体制検討委員会は新しい災害医療体制について検討協議して報告書を作成したので、その骨子とそれを機能させるための検討課題について報告する。滋賀県の新災害医療体制での医療救護活動で特徴的なものは、災害発生初期での災害現場への緊急医療班の派遣と災害拠点病院を中心に実施する患者搬送体制の確立である。緊急医療斑は患者搬送、後方病院の待機要請、医療救護班の派遣などを決定するための災害情報の収集と報告等を主目的としている。さらに緊急医療班のもう一つの大事な業務は、災害現場に設置される現地合同調整所において消防、警察、自衛隊等と相互の連携をはかり、負傷者のトリアージと応急処置などを行うことにある。災害発生の初期には他からの支援がなく、情報の混乱は必発であるが、その時に災害現場で有効な救援医療活動を実施するためには消防、警察、行政、医療従事者など災害医療関係者それぞれが共通の考え方と行動の仕方をもち、共通の手法で自分のできる救援医療活動を開始する必要がある。災害医学の先進国である欧米では、広い関係組織を包括しその連携の上に成り立ち、災害現場で有効に機能する災害医療体制ができている。しかし日本では、消防、警察、行政などは各組織がそれぞれの縦割り行政の中で、各組織の連携が十分でなく、とくに災害現場では、十分に機能した救援医療活動ができていないのが現状である。滋賀県の新しい災害医療体制には、日本と類似点の多い医療制度をもつ英国の大災害時の医療支援(Major Incident Medical Management and Support:MIMMS)をその手本として取り入れた。MIMMSは教育システムであり、大災害時に医療に関与する組織の役割と責任、組織体系、連携の仕方、連絡のとり方などが講義、訓練され、全員が理解できる共通語として浸透することを目的としている。これらの概念、手法は平時から災害研修を受け、災害訓練に参加することによりそれを身につけることができる。滋賀県の新災害医療体制を機能させていくためには、地域での災害医療体制の確立、災害拠点病院の連携・強化、災害教育・訓練の充実が重要である。地域での災害医療体制を充実させるためには地域単位で関係者による委員会を作り、地域にあった災害医療体制を検討・協議し整備をはかる必要がある。また、緊急医療斑の派遣や重傷患者の後方病院となる災害拠点病院の役割は重要であり、そのために災害拠点病院連絡会等で協議してそれぞれの基準を取り決める必要がある。滋賀県医師会、滋賀県等では、救急患者に対する二次救命処置を身につけるために滋賀県ALS研修会を継続的に開催しているが、今後はMIMMSのシステムを取り入れた研修も加え、災害教育の充実をはかる必要がある。
Abstract:大規模震災等発生時に重傷者の救命と被災地内医療の負担軽減を図るため、重傷患者搬送に従事する災害派遣医療チーム(DMAT)・救護班を被災地外から派遣し、重傷患者を被災地外の災害拠点病院等へ搬送し救命することが必要であり、これら一連の活動が広域医療搬送である。これまでは東海地震の広域医療搬送計画しか作成されていなかったが、平成19年3月に東南海・南海地震の計画が新たに作成された。本稿は、東南海・南海地震時の広域医療搬送計画の概要を解説するとともに、今後の課題についてまとめたものである。
Abstract:本研究は、大震災直後に被災者が殺到して、混乱が予想される災害拠点病院を対象に、限られた人的資源(医療スタッフ)と物的資源(施設、器具、情報)での状況予測と課題を明らかにすることと、その対応策についてシミュレーションモデルにより検討するものである。このモデルは、各担当者(医師、看護師、検査師、事務員)が緊急時に実施すべき役割、連携やそれに伴う予測状況について、想定シナリオを自在に組み込めるシミュレーションモデルで効率的に検証、習得、イメージングするものである。本研究では、フルスケールトレイニング(トリアージ、受付、問診、タッグ、登録、診察、治療、搬送)を想定した机上シミュレーションのシステム化を試みた。本研究成果による効果は、以下の通りである。(1)これまでの部分的な訓練では把握できなかった時々刻々と変化する状況に対する効率的な資源(人的、物的)の配分を総合的な防災計画に役立てることが可能である。(2)時間的制約のある関係スタッフが全員集合せずに模擬訓練ができ、またその結果を全員が共有化できる。(3)多様なシナリオの結果を動画やアニメーションで表示できるため、訓練の効率が向上する。今後は、ここで構築されたシミュレーションモデルを医療スタッフの緊急対応マニュアルシステム(防災eラーニングシステム)に組み込んでいく計画である。
Abstract:効率的で効果的な国際緊急援助活動(IDR)を行うためには、看護師の役割は非常に重要である。本研究の目的は、IDRにおける看護師の役割について医師および看護師がどのような意識を持っているのかを明らかにすることである。過去にIDR参加経験のある医師30名および看護師21名、IDR未経験の看護師136名を対象に自記式質問紙調査票を配布し、過去のIDRにおいて看護師が実施した業務内容に関し、看護師の役割として適切であるかについて調査した。その結果、内部配置、チーム員の健康管理、物品管理、医療廃棄物管理、診療介助、病歴聴取、日本国内での通常看護ケアについては、看護師の役割として適切であると考えられ、トリアージ、創洗浄もIDRの教育や研修を受け、医師の指導があれば適切であるとされた。しかしデブリードマン、切開、抜糸、縫合については困難であると考えられた。
Abstract:日本は地震などの災害が多発する地域である。阪神淡路大震災において、ライフラインが途絶し、後送も困難な状況で分娩せざるを得ない妊婦が存在した。そこでわれわれは携行可能な分娩装置が必要と考え、考案した。方法:以下の様な想定のもと開発した。(1)原則として災害発生後数日以内の経腟分娩を取り扱う、(2)ライフライン(電気・水道・ガス)はすべて途絶している、(3)分娩場所は非医療施設である、(4)装置は医師・助産師が携行可能である、(5)褥婦と新生児は後送までの数時間管理できる。結果:必要最小限の機材と照明器具、超音波診断装置などをあわせると、重量は約7kg、体積は0.3m3となった。産科医師、女性看護師が携行可能であった。結論:今回の簡易分娩装置の考案はわが国では初めてである。大規模災害時だけでなく、僻地医療における緊急時の分娩支援にも有用であり、産科医不足が常態化している僻地において、今後有用な装備になる可能性がある。
Abstract:背景:三宅島噴火に伴う2000年9月からの全島避難が2005年2月に解除となり、帰島が開始された。火山ガスの排出量は減少したが噴出は現在も続いており、咽頭痛、頭痛などガスに伴う症状も認められる。身体に及ぼす長期的影響も不明なため、島民の不安を増している。目的:平成17年7月末日までに診療所に来院した島民に対して聞き取り調査を行い、火山ガスによる症状の有無を評価した。方法:来院した269名に対して火山ガスによる症状の有無について聞き取りを行い、症状の年齢別比較、地区別比較、帰島からの日数による検討を行ったほか、帰島後の不安や健康に対する自覚を調査した。結果:火山ガスによる症状は31.7%が訴えており、咽頭痛が27.5%、頭痛が20.3%を占め多かった。投薬、入院が必要になる症例はなかった。結論:今後、長期的な影響の有無を明らかにし、島民に情報を積極的に提供していく必要がある。
Abstract:都道府県、指定都市、中核市、政令市、特別区(計127)を対象に、防災計画や体制づくりの現状を把握する目的で、質問紙調査を実施した(回収率=88%)。「水や一般食料の備蓄に関すること」は、96%の自治体の防災計画やマニュアルのなかに示されていたが、「被災者の食生活実態調査」(15%)や「栄養相談・指導の記録票・実施報告書の様式」(8%)等の栄養・食生活支援に関する項目は少なかった。「食料の分配に際して栄養的配慮がなされる体制となっている」自治体は5%であり、二次的健康被害の発生が懸念される。災害時要支援者への支援として、粉ミルクや病人食などの備蓄は60%の自治体の防災計画等のなかに示されていたが、その需要状況を把握するシステムがつくられているのは19%であり、必要とする人に届かない可能性がある。健康危機管理における管理栄養士等の機能を明確にし、防災計画のなかの栄養の位置づけを見直す必要がある。
Abstract:2005年12月25日の羽越本線いなほ14号の脱線転覆事故への当院の対応を報告・検討した。当初100名程度の傷病者が予想され、医師51名、看護師36名など100名余が緊急に登院し対応した。搬送された傷病者は11名だった。骨折等の中等症患者と、軽症患者が半数ずつだった。現場には、医師・看護師など計9名を派遣した。横倒しになった先頭車両で1名の乗客が座席に挟まれ、救出に時間を要した。派遣された医師は客車にもぐり込み、点滴等の治療を行った。4時間後の救出直前に、クラッシュ症候群予防のため、炭酸水素ナトリウムを投与した。本邦2例目の「瓦礫の下の医療」と思われる。直前の災害医療訓練のお陰で、なんとか病院一丸の対応ができた。ただ、50名程度の傷病者への治療体制、外傷患者の診察・診療録記載等については反省すべき課題もみられた。また現地への交通手段等についても検討すべき課題があった。
Abstract:平成17年4月25日JR福知山線列車脱線事故が発生し、未曾有の大惨事となった。現場近郊に位置し、平時、地域の中核病院としての役割を担っている当院は、その災害救急医療へも積極的に対応した。職員が役割を分担し、互いに協力した。病院トリアージを行い、その区部に応じて治療を行った。来院時心肺停止症例の搬入例はなかった。一時的に重症患者の収容限界を超えたが、2次転送の結果、各患者への治療が継続された。そして、後に救出され、長距離搬送が困難であった圧挫症候群の当院での受け入れが可能となった。結果的にPreventable Trauma Deathを防ぐことができた。これには現場トリアージの徹底や2次転送の必要性の認識、病院を超えた協力体制の向上が関与していると考えられた。ただし、現場における発災早期の受け入れ医療機関の情報把握、重症度と人数の適正なバランスを保った搬送先選定システム、院内では今回の事故対応を踏まえた災害対策の見直し、などに課題を残した。
Abstract:神戸赤十字病院心療内科は、1995年1月の阪神淡路大震災被災者のために、翌年開設された。ストレスや心理的要因による身体疾患(症状)として、身体症状が主なうつ状態、各種心身症などの患者が受診した。震災5年後(第1回)と10年後(第2回)に、心療内科受診中の患者にアンケート調査をおこなった。病気と震災との関係について、第1回は「大きく、直接的に関係する」が13%、「少しは、間接的に」は24%、「関係ない」が61%だった。第2回はそれぞれ9%,30%,56%で、「関係ある」が39%と若干増えていた。第2回では、被害が大きかった群で62%、震災後の生活変化の大きかった群で68%が「震災と病気が関係する」と考えていた。震災は10年たっても被災者の心身の健康に大きく影響し、身体的、精神的、社会的、スピリチュアルな苦痛がある被災者には、医療や心理のみならず、様々な職種によるチームとしての全人的ケアが不可欠である。
Abstract:本稿は、病院における地震対策の実施状況を把握するために、わが国の全病院9064施設(2005年1月末現在)を対象として実施した調査の報告である。調査は郵送による自記式アンケートで行い、有効回答数は6,843病院(有効回答率75.5%)であった。「すべての建物が新耐震基準」であるのは2,494病院(36.4%)、「一部の建物が新耐震基準」2,482病院(36.3%)、「新耐震基準の建物なし」1,209病院(17.7%)であった。建物の耐震強度以外については、受水槽での給水や自家発電機の設置など、ライフライン破壊への備えが実施率が高かった。その一方で、災害時の必要物資の調達計画や連携体制の策定など、地震発生後の運営に関する対策が不十分である傾向がみられた。各病院においては必要に応じて耐震診断・改修工事を実施する必要がある。また災害発生後の運営面での対策をさらに推進する必要があると思われる。
Abstract:新潟県中越地震時の重症心身障害児者サポートを急性期と亜急性〜慢性期に分けてまとめた。急性期:1)入所者;当初は比較的安定していた。数日後より身体症状が増加したが短期間で通常活動に復帰できた。2)在宅障害者;連絡網や搬送手段の混乱があり、早期保護という点で問題が残った。23名が短期入所を利用され、重症児者の災害時保護として有用であった。亜急性〜慢性期:激震・強震地域の障害者256名に対して地震の影響(身体の変化10、心の変化15項目)についてアンケート調査した。69.9%(身体42.1%、心58.3%)で何らかの変化を認め、障害の種類・程度や避難状況によって異なった。特に、重症心身障害や自閉症では避難所生活は増悪因子になる可能性が示唆された。障害者、特に重症心身障害児者は災害弱者の最たるものであり、地域-市町村-施設-病院といった組織化されたサポート体制を構築する必要があると思われる。
Abstract:我が国には、聴覚に障害を有する者が約36万人存在し、社会の高齢化とともに増加傾向にある。本研究では災害時における聴覚障害災害時要援護者支援機器の開発と実際の応用を目的として平成12年10月6日の鳥取西部地震を事例にとり調査研究を行った。回答状況は、米子市とその近隣地域111例(発送250)回答率44.4%であった。回答者は4級以上の高度難聴ないし聾難聴者が52.7%、6級以下の中等度難聴者の回答が47.3%と、ほぼ半数ずつの回答であった。高齢中等度難聴の被災体験者では、補聴器未装用、あるいは所有していても実際には使っていない事例が意外に多く、一方、高度難聴-聾被災者では補聴器の使用比率が低く、むしろ実際には、手話通訳や文字放送付きテレビ、筆談に頼っていた側面が明らかになった。災害発生時における聴覚障害災害時要援護者を支援する機器の開発にあたっては、補聴器が利用可能な軽度-中等度難聴者と文字、筆談、手話が有効な高度難聴-聾難聴者とを、対象を分離して進める必要性があると思われた。
Abstract:起震車の中に手術中の状況を設定し、地震によりどのような状況が発生するかを体験した。体験の参加者は44名で、起震車に麻酔器とモニターを載せ、段階的に震度3〜7に震度を上げ、ストッパー有り無しの状態の動きを見学させた。また、縦揺れ、横揺れによる機器の動きも見学させた。その後、関東大震災または阪神大震災を再現した揺れのどちらかを体験してもらい、体験終了後にアンケート調査を行った。日常多発する震度2〜3地震では医療機器のストッパーは有効であったが、震度5以上ではストッパーをかけることによる機器の転倒のリスクが高まった。また、縦揺れより横揺れの方が機器のダメージが大きかった。アンケート調査では、87%以上が手術中の大地震の状況がイメージできたと回答した。大地震発生時、74%が身体防護ができないと回答した。一方で、何らかの行動が取れるという意見があり、その内容は震度2〜3の地震で実践している行動内容であった。
Abstract:外科用放射線イメージ装置GE横河メディカルシステム社製Flexi View8800、Stenoscop2、MINIView6800、mini6600の耐震固定を行った。転倒防止のためエアラインレールを壁の構造物に取りつけ、車用シートベルトを改良したものをそのレールにはめ込み、装置と壁を固定した。また、壁への衝撃を吸収するためウレタンを壁に貼り、装置とウレタンを密着させた。更に装置自体も破損が懸念される部位はウレタンで保護した。手術用顕微鏡モニター5台と内視鏡用モニター8台の耐震固定については、ゲル状シートを貼り台車と固定し、モニターをゲル状シートと耐震ベルトで固定した。また、台車自体の安定性を高めるため台車のキャスターを大型化した。電気メス・超音波メスの耐震固定については、取り外しを簡単にするために、台車の底にゲルセーフを貼り、機器の側面にストラップバックルを貼り、耐震ベルトをゲルセーフに通し固定した。
Abstract:新たに手術室震災時対応マニュアルを作成し地震・火災発生シミュレーションを実施した平成17年度と、火災時対応マニュアルに沿って火災発生シミュレーションを実施した平成16年度とで、手術室スタッフの危機管理意識の変化を調査した。シミュレーション参加者は、それぞれ実施後にアンケート調査を実施した。震災時対応マニュアルでは全ての役割において経時的にした。また訓練は停電下で、看護師、外科医、麻酔科医、臨床工学技士、看護助手などチームメンバーで行われた。結果として、平成17年度は前年より手術室スタッフの意識の高い向上が認められた。事前の準備からスタッフの防災に対する意識付けを通してシミュレーションを行うことで、参加スタッフの危機管理意識の向上に繋がる事が分かった。手術室に携わる他職種の参加、そして新しい状況設定を行うことでよりリアリティのある訓練に繋がった。
Abstract:小児腹膜透析患児の在宅における災害対策について検討した。スタッフ勉強会、患者へのアンケート、アンケートの作成の3段階に分けて検討した。災害時、病院は非常体制となり、PD患児への対応が十分できない可能性があること、停電でAPDができないためCAPDへの変更が必要であり、透析液の加温は湯煎やカイロが有効であること、業者にも非常体制があり、物品は数日で配達できることを知り、これらのことから数日間を患者自身がなんとかすれば乗り切れることを学習した。全員が災害に対して不安を持っていたが、実際に何か準備している人は1例のみであった。勉強会、患者のアンケートを基にパンフレットを作成した。パンフレットは小児にも興味がわくように、イラストや写真を盛り込みカラーコピーをして配布した。
Abstract:腹膜透析患児に対する病棟スタッフの災害時意識調査を行った。第1回アンケートは、病棟看護師全員22例を対象として施行した。1回目終了後には、正解例を張り出した。第2回アンケートは同一アンケートを、3ヵ月後に病棟看護師21例を対象として行った。1回目のアンケートでは、病室から緊急的に避難する際に「「ゆめ」を持って逃げる」等の実現不可能な回答が出ていたのは、普段そのようなことを考えたことがなかったためと考えられた。しかし、正解例を張り出した後の2回目のアンケートでの正解率の上昇は、単に正解を文章として覚えていただけではなく、実際にその場になった時の自分を想定して考えることができたためと考えられた。
Abstract:災害時における特別支援学校教員、学校管理職、保護者の意識について、全国的な調査結果を報告し、障害のある児童生徒の実態に基づく避難・移動に活用できる避難支援ツールについて述べた。また、児童生徒の避難・移動に関わる身体コントロール能力は、教育的支援による育成できることを示すとともに、研究協力校における避難・訓練システムを評価し、教師主導型避難・訓練システムの問題点を明らかにするとともに、児童生徒が主体的に避難を可能にする取り組みと、防災フォーラム開催を通して、多くの関係者の意見交換を行った内容を報告した。
Abstract:国際救援活動や開発協力事業において助産師に期待される能力を明らかにすることを目的に、それらの経験を有する助産師5名を対象に半構成的面接を実施した。内容分析の結果、それぞれ以下のカテゴリーよりなる《知識・技術》《態度》の2つのコアカテゴリーが抽出された。1つは、《知識・技術》:【正常な妊婦・産婦・褥婦・新生児のケア】【異常な状態にある妊婦・産婦・褥婦・新生児のケア】【乳幼児の健康診査】【産科に関する与薬】【ライフサイクル各期における女性のケア】【公衆衛生】【看護管理】【情報収集】【産科婦人科以外の診療介助】【トリアージ】【基礎看護】であり、もう1つは、《態度》:【現地の医療事情の尊重】【現地の文化・風習の理解】【積極的なコミュニケーション】であった。
Abstract:兵庫県透析医療施設における感染対策及び危機管理実態の把握を目的として、平成15年および18年にアンケート調査を実施した。アンケート回収率は平成15年63.8%、平成18年63.6%で、有効回答は各々82施設、91施設であった。感染対策に関して、感染対策委員会を設置している施設の割合は平成15年91%、平成18年88%であった。肝炎ウイルスマーカーの定期検査は両年とも全施設で施行されており、平成15年には2施設(2.4%)にC型肝炎の新規感染を認めたが、平成18年には肝炎ウイルス新規感染は0%であった。エリスロポエチンシリンジ製剤の使用率は平成15年74%から平成18年93%へ増加していた。危機管理に関し何らかの対策を実施している施設の割合は平成15年88%、平成18年84%で、このうち危機管理委員会を設置している施設の割合は平成15年72%、平成18年69%であった。生食置換返血法は平成15年37%から平成18年57%へ、ルアロック採用率は平成15年62%から平成18年96%へ増加していた。また認知症に由来するアクシデントが15件報告された。平成18年には災害時のスタッフ派遣に関しての設問で、災害対策への意欲の高いことが示された。
Abstract:海外で発生した大規模災害に対し、様々な医療チームにおいて薬剤師が活躍している。国際災害医療支援活動における業務の1つに、現地スタッフに対する携行医薬品の供与がある。その際、日本と海外の医薬品を比較すると、多くの日本の医薬品外包装は日本語表記のみで一般名などの英語表記がなく、我々からの情報提供がなければ現地スタッフには理解できないという問題が生じた。そこで、災害発生時に徳洲会が支援依頼を受けた医薬品を基に、どの程度の外包装が英語表記されているかを調査した。先発医薬品および一部の後発医薬品95品目を調査した結果、3割程度が英語表記されていた。従って、正確な情報提供がなければ日本の医薬品は有用な支援物資として活用されない可能性が考えられた。迅速な支援活動を行うためには、どの国のスタッフでも理解できる表記が必要である。今後も起こり得る災害への支援を考え、外包装に一般名の英語表記だけでも併記統一を願いたい。
Abstract:海外で発生した大規模災害に対し、様々な医療チームにおいて薬剤師が活躍している。国際災害医療支援活動における業務の1つに、現地スタッフに対する携行医薬品の供与がある。その際、日本と海外の医薬品を比較すると、多くの日本の医薬品外包装は日本語表記のみで一般名などの英語表記がなく、我々からの情報提供がなければ現地スタッフには理解できないという問題が生じた。そこで、災害発生時に徳洲会が支援依頼を受けた医薬品を基に、どの程度の外包装が英語表記されているかを調査した。先発医薬品および一部の後発医薬品95品目を調査した結果、3割程度が英語表記されていた。従って、正確な情報提供がなければ日本の医薬品は有用な支援物資として活用されない可能性が考えられた。迅速な支援活動を行うためには、どの国のスタッフでも理解できる表記が必要である。今後も起こり得る災害への支援を考え、外包装に一般名の英語表記だけでも併記統一を願いたい。
Abstract:【背景】災害保障特約は発売以来40年が経過し、災害死亡をとりまく社会環境は大きく変化している。【方法】人口動態統計から1960年以降の交通事故、労働災害死亡、転倒・転落、溺死・溺水、窒息の5項目を年次的に発生数、死亡率(10万対)について調べ、1975年と2004年で原因別、年齢別に死亡数を比較した。また、当社死亡率統計諸表より1972年から10年ごとの不慮の事故発生数について原因別にその変化を見た。【結論】高齢者の人口全体に占める割合は年々増加しており、不慮の事故においても加齢自体が災害死亡における大きな要因となっていることが示された。今後、災害保障特約は保険料一律ではなく、発生率に応じた料率設定や、保障期間の短縮などの検討が必要であると考えられた。
特集【自然災害とアクシデントの旅行医学】