医療におけるトリアージとは、複数以上いる傷病者の中から治療の優先順位を決めるための一種の「選別」過程とされている。一般外来でも災害時でもトリアージの基本的な考え方は原則的に変わらない。また、トリアージとは重症度や緊急度を見極めることであるが、両者の概念は
重症度…患者の生命予後または機能予後を示す
緊急度…その重症度を時間的に規定
であり、重症度と緊急度は必ずしも一致しない場合がある。
1. ふるい分け
2. 重症度、緊急度の確認
b)Capillary refilling time(毛細血管再充満時間)―強く爪の部分を圧迫し、離して爪の下の色が戻るまでの時間を計測する。2秒以内なら正常。利点は短時間で判断できること。欠点は極端に寒いとできないこと。
STEP1 呼吸の評価
STEP2 循環の評価
STEP3 意識状態の評価
また、災害現場での医療行為は自ずと限界があり根治的治療は困難である。現場では人的・物的資源を有効活用する必要があり、最低限医療機関へ搬送できるように生理学的不安定(バイタルサインの異常)の是正に専念することになる。これはJATECのPrimary Surveyに準じており、A(気道)B(呼吸)C(循環)の安定化と考えられる。
ここで、災害現場救護所で行われる実際の医療、すなわち資器材の制限によってJATECがどのようにアレンジされるかを紹介する。
長岡市内の水没した避難所に発災当日の深夜に出動した。別の被災地である中島町には県からの要請を受け、4日目に出動した。足を踏み入れて初めて大変な災害であることに気づいた。ここでの救護活動からは被災地に足を運んで始めて医療ニーズがわかること、そして行政の対応を待っての救護班出動では手遅れになるということであった。
2.新潟県中越地震(2004年10月23日)
中越地域の基幹病院として傷病者の受け入れを行うと共に、長岡市民と山古志村民の避難所での救護活動を行った。発災翌日の未明に長岡市内の主な避難所8箇所を巡回した。山古志村は壊滅的な被害であったため約1500名の住民が長岡市内に避難し、仮設住宅に移り住むまでの2ヶ月間当院が医療救護活動を行うことになった。最初の仕事は行政が準備した昼食を配布することと処方可能な薬の処方をサポートすることであった。次の仕事は避難所8箇所を連日巡回することであった。地震の恐怖体験を話すことで気持ちが楽になる人も多く、診療の合間に話に耳を傾け、こころのケアにも努めた。その一方で統括する組織がはっきりしなかったために問題も起きた。同じ被災地に複数の救護班が訪れたり、ダブルスタンダードの医療が行われることによる弊害などである。この点に関しては保健師を通さないと救護を行えないシステムにすることで解決された。この災害を契機に新潟県は災害時のマニュアルの改訂を行い、「地域の保健所長が災害医療コーディネーターを務める」ことと、「県内の災害拠点病院は要請がなくとも、自主的判断で救護班を派遣すべし」という行政としては画期的ともいえる文言を盛り込んだ。
3.新潟県梅雨前線豪雨(2005年6月28日)
避難準備情報が発令された初めての災害であった。被害情報が出てこなかったため自ら先遣隊として出動し、救護活動の必要がないことを確認できたため先遣は有意義な活動であると考えられた。
4.新潟県豪雪(2006年1月10日)
豪雪による雪崩により道路が封鎖された孤立した集落に対する救護活動で県保健部の担当者に出動の必要性を訴えた結果の出動であった。訪問診療などを行い住民からは歓迎された。行政や地域との連携が功を奏した救護活動であった。
5.能登半島地震(2007年3月25日)
発災当日の被災地は混乱を極め、道路状況は悪く、ライフラインは断たれ、支援も届いていなかった。この時期に救護活動をするのには相当の準備と覚悟が必要であることを学んだ。
6.新潟県中越沖地震(2007年7月16日)
この災害で特徴的であったは 1)多数のDMATが参集し、トリアージ、病院支援、救急車・ヘリ搬送や医療の窓口の立ち上げや避難所支援に尽力を尽くしてくれたこと、2)地域の保健所長と医師会長を核とする「災害時医療コーディネートチーム」が機能したこと、の2点である。このおかげでトラブルはほとんどなく、行政が災害医療の最前線に参画したことで大学病院や公立病院など多くの救護班が参加した。今後、「災害時医療コーディネートチーム」は災害医療のスタンダードになっていくと思われる。
洋式トイレになれた現代人にとってトイレの問題があるが、最近は仮設トイレの設置は速やかにおこなわれている。また常備薬などの処方が難しいため病院などの復興が重要となる。
2.発災後数日〜1週間
ボランティアや保健師により避難所の環境が改善されるが救護班の重複によるダブルスタンダード医療による弊害などが問題として挙げられる。
3.発災後1週間以降
復興が進み、病院などが再開し医療機能回復が回復し、救護班の役割を終える時期であるが撤退のタイミングが重要である。早すぎると被災者から見捨てられたと受け取られかねず、遅いと医療機関とトラブルにもなりえる。また高齢者の生活不活発病を引き起こし住民の自立低下の意欲を失わせる恐れもある。「救護班の撤退は出動よりも難しい」といわれるゆえんである。
災害現場での治療
(阿南英明:プレホスピタルMOOK4号 Page 105-113, 2007)はじめに
1. 災害現場の治療の目的と内容
2. 災害現場における診療
結論
災害時における情報収集と伝達
(中田敬司.救急医療ジャーナル16巻5号 Page 45-51, 2008)【はじめに】
【災害時の情報、コミュニケーション】
【災害時の情報収集と判断】
【災害援助活動時の通信、伝達手段】
【災害現場活動におけるコミュニケーション手段としての無線活動】
○免許なしでレジャーなどに手軽に利用できる
○免許、資格、申請が不要
○イニシャルコスト、ランニングコストが安い
○個別呼び出し、グループ呼び出し、一斉呼び出しができる
○チャンネル切り替えで混信を回避できる
〇中継器を接続することにより通話エリアを拡大できる
×出力が小さい
×通信距離は100m程度と短い
×まれに相互通信ができない
複数の通話チャンネルを多数の利用者が共有することで電波の有効利用と利便性を実現
○広いエリアでの通話が可能
○複数のエリアにまたがった個別通信が可能
○空きチャンネルの状況により、データ通信や、音声・データ同時通信が可能
×制御局圏外あるいは制御局がダウンしていれば使用不可
×通信可能エリアが都市部と沿岸部に集中している
×制御局ごとに月々定額の基本料金が必要となる
送受信がある程度確保できており、通信機器同士が制御局を介さず直接通信を行うことができる
○通信距離が数百mから数kmであり、活用の可能性がある
○従事者免許は不要で、比較的簡単な手続きで導入できる
×法的に移動範囲を超えて通信を行うことができない
○基地局の他に移動局を用いて使い分けができ、通信可能距離が数十kmに及ぶ
○制御装置を接続してシステムアップすることが可能
×現行法では、基地局の設置が必要
×従事者免許および無線局免許状が必要
×一定期間ごとの定期検査がある
×コストがかかる
×効率的な運用、多数の運用には制限がかかる
災害医療支援チームの専有の周波数の確保と通信機器の整備が医療支援活動には必要となる。
【終わりに】
避難所における健康管理と医療班派遣
(内藤万砂文.救急医学 32: 227-230, 2008)【はじめに】
【当院が経験した救護活動】
【災害維持に求められる医療】
【医療班の派遣】
【避難所での活動】
【おわりに】