Q20

Q

重回帰分析で決定係数が低いが大丈夫か?

A

重回帰分析を,注目する変数以外の要因の影響をコントロール(一定に揃える)した上で注目する変数が従属変数に与える影響を検討するために使用しているのであれば,予測にはあまり関心がないため,決定係数が低いこと自体はあまり問題になりません。 従属変数を予測することを目的としている場合,決定係数が低いということは予測がうまくできていないということになりますので,説明変数の選択を再検討する必要があります。

【解説】

決定係数は重回帰分析などの最小二乗推定を用いる一般線形モデルで従属変数の分散を説明変数でどの程度説明できるかを表します。言い換えると説明変数でどの程度従属変数を予測できるかの指標といえます。重回帰分析などの多変量解析を使用する目的としては,注目する変数以外の要因の影響をコントロール(一定に揃える)した上で注目する変数が従属変数に与える影響を検討するためというのと,多数の説明変数を用いて従属変数を予測するというものがあります。 前者の場合は予測にはあまり関心がないため,決定係数が低いこと自体はあまり問題になりません。後者の場合,決定係数が低いということは予測がうまくできていないということになりますので,説明変数の選択を再検討する必要があります。 また,回帰式に使われている変数の測定精度によって決定係数は影響を受けます。一般に測定精度が高ければ決定係数は高くなる傾向にあります。工学やマクロ経済学などでは測定精度が高いため,決定係数が高いことが求められることが多いようですが,心理学や社会学などでは変数の測定精度が低いことが多いため,それほど厳しい基準は設定されないようです。自分の研究分野の先行研究と比較してさほど低いようでなければ問題はないでしょう。