手術紹介

虚血性脳血管障害

脳動脈閉塞症に対する当院での治療の特徴

既に長い区間の頸動脈が完全に詰まっている場合は、再開通させることはできませんので、新しい通り道(バイパス)を作成することになります。脳動脈に持ち込むのが「浅側頭動脈」という頭皮の動脈で、持ち込まれるのが「中大脳動脈」という脳動脈です。

浅側頭動脈ー中大脳動脈 吻合術

脳保護作用のある静脈麻酔で行います。頚動脈内膜剥離術と同じく各種のモニターをセットします。皮膚切開は浅側頭動脈を中心に半円弧型か「コの字」型とします。
皮膚から浅側頭動脈を採取します。もちろん、心臓側はつながった状態です。
血管吻合は脳の表面にある中大脳動脈と行いますので、奥深くまで剥離を進める必要はありません。あくまでも予防的治療ですので脳実質損傷など起こさないように丁寧に中大脳動脈を剥離・露出します。中大脳動脈の直径はおよそ1mmです。血流を一時的に遮断して中大脳動脈の側面に楕円形の切開を作ります。そこに浅側頭動脈を吻合します。特別な機械などがあるわけではなく、髪の毛よりも細い糸を針で通して結ぶという作業を繰り返し、全周で12針程度縫います。きちんと等間隔で適切な縫合が行われていれば、漏れ出すことはほとんどありません。

左:血管吻合中。血管径は約1mmです。
中:吻合完成後の蛍光血管撮影。浅側頭動脈から中大脳動脈に色素が流入していることが明瞭にわかります。
右:蛍光血管撮影を解析した図。浅側頭動脈と吻合部を中心に血流が広がっていくのがわかります。

手術件数

当院では頚動脈狭窄症を含む虚血性脳血管障害は脳卒中センターにて治療を行っています。脳卒中センターでは、厳格な適応に則って、安全で効果的な治療を提供しています。リスクや病変の状況は、患者さん毎に異なります。テーラーメイドの治療を行うために、個々の症例を十分に検討しています。最善の内科的治療が妥当と判断すればその様にお勧めし、きちんとフォローアップします。外来を受診して、よくご相談ください。


過去6年間の外科手術および血管内治療の内訳を示します。
尚、血管内治療は2011年以降脳外科と脳卒中センターで疾患ごとに振り分けております。
図は脳卒中センター症例のみにて作成しております。

2011年の外科手術内訳は以下の通りでした。

外科手術 頚動脈内膜剥離術 23例
浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術 11例
血管内治療 頸動脈ステント留置術 8例
椎骨動脈起始部ステント留置術 1例
急性期血栓溶解術 6例