手術紹介

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは

頭蓋骨の下にあって脳を覆う硬膜と脳との隙間に血(血腫)が貯まる病気です。軽い頭部外傷後の慢性期(3週間以降)に発症し、血腫が脳を圧迫しすることによって頭痛、片麻痺(歩行障害)、精神症状(認知症)などでさまざまな症状が出ます。酔っぱらっていた、認知症がある、などの場合も含み頭部外傷があったかどうかわからない場合も10〜30%ほどあります。時として重症な脳卒中と極めて似た症状として急激な意識障害や片麻痺で発症し、さらには生命に危険を及ぼし脳ヘルニアの状態となることもあります。そのような状況に備え、当院では基本的には24時間対応が可能です。

診断

壮年〜老年期で頭痛、片麻痺(歩行障害、手足の脱力)、記憶力低下、意欲減退、見当識障害、認知症の精神症状が徐々に進行する場合、慢性硬膜下血腫を疑います。高齢者などでは加齢に伴う認知症や脳梗塞などと診断されている場合も少なくありません。比較的若い方でも頭部外傷から数週間経過してから前述のような症状が見られる場合は本疾患を疑う必要があります。画像診断として、CTスキャン(図)あるいはMRIが有効かつ必須です。


頭部CTでは白黒さまざまな見え方を示します

治療法

血腫が小さい場合は自然に治る場合もあります。血腫が大きく症状が出ている場合は外科的治療をおすすめします。通常は局所麻酔下に穿頭ドレナージ術を行います。この手術はまず頭部に約5cmの皮膚切開をおき、頭蓋骨に約10円玉のサイズの穴をドリルで開けます。ここから脳を包んでいる硬膜を切開し、血腫内にチューブを挿入します。頭部CTスキャンにて内容物が二つ以上の血液の袋を有していることが予想される場合は、血腫排液とともに血腫腔内の洗浄術を行います。このまま翌日まで徐々に血腫を排出させ、翌日にこのチューブを抜去します。必要に応じてリハビリテーションを行い自宅復帰を目指します。特に高齢の方の場合は入院期間が長くなればなるほど体力が落ちる場合も多いため、基本的には早めの退院をお勧めしており、早い場合は手術翌日に退院として外来にて抜糸を行うこともあります。
手術後の問題点・合併症として以下のようなものがあります。

  1. 慢性硬膜下血腫の再発
    術後の再発は約10%にみられ、とくに高齢者などで脳萎縮の強い方、血液凝固異常を有する方、髄液短絡術後の方などでは再発を生じやすいとされています。経過観察後、症状が再発するか、もしくは血腫の消退傾向がなければ再手術が必要になります。
  2. 術後の痙攣
    血腫除去や洗浄の刺激により、特に高齢者などで痙攣を生ずることがあり、抗痙攣剤の投与が必要な場合があります。

高齢化社会の中で慢性硬膜下血腫症例は増加傾向にあります。急激な脳卒中の様に発症することもあれば、頭痛、精神症状、片麻痺をはじめ多彩な症状を呈し、脳梗塞、認知症、脳腫瘍などとの鑑別が必要な場合もあります。しかし本疾患のほとんどは正しく診断がなされタイミングを逸することなく治療が行われれば完治し経過は良好ですので、頭部外傷後にご心配な方は脳神経外科外来の受診をお勧めいたします。