教授挨拶

今、実感として求められている理念を挙げるとすれば、「美しさ」よりも「たくましさ」ではないかと思います。  

 
2017年(平成29年)の私ども杏林大学脳神経外科学教室の活動をまとめたHPをお届けいたします。毎年のことではありますが、冒頭に当たりまして皆様方の当教室への日頃のあたたかいご支援に感謝申し上げますとともに、本年も従来と変わらぬご指導をお願い申し上げます。
このような巻頭の挨拶文では、最近の世情を憂うる部分が起承転結の「承」として簡単に触れられ、「転」としてそれらを「アウフヘーベン」する展開が一つの常道手段であります。これに照らせば塩川の感じる課題は二点あり、その一つは昨今食傷気味なほど語られている少子超高齢社会です。「未来の年表」(河合雅司著、講談社)という本を勧められるままに読みましたが、世の中が右肩上がりの時代に育った世代には述べられている「戦略的な縮小」という概念が妙に新鮮に響きました。この問題は「国難」と言える深刻さがあるとの指摘は説得力があり、我々が従事している脳神経外科も数十年単位のスパンで将来像を描く必要がありそうです。もう一つの課題は現内閣が強調している「働き方改革」です。はじめは(ありえない数字に)他人事かと多寡を括っていたところ、年末に労働基準監督署の査察が本学にも入り目を覚まされました。こちらは、医師の応召義務など解決困難な事柄はあるにせよ、医療界のいわゆる「ブラックな体質」を変えていくチャンスでもあります。最大の問題はこのような状況下での医師の初期教育にあると誰しもが感じるところで、舵取りに新たな工夫が求められていくように思います。
 2017年の杏林大学脳神経外科学教室すべての活動がこのHPに凝集されております。診療面などは大きな変化はありませんが、3月にStroke 2017として脳卒中の外科学会を教室で主宰する機会があり、本誌をお送りしている多くの方々に多大なる支援をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
 診療・教育・研究を使命とする大学の脳神経外科教室としましては、世の中の情勢はそれとして目の前の患者さん一人一人に最善の治療を行い、次世代の医療者を育成しつつ新たな情報発信を地道に続けていくこと以外に王道は無いと認識しています。教室を担当して15年目となりましたが、例年、本欄で述べさせていただいておりますように、診療姿勢や教室のあり方に杏林大学と塩川の個性を反映させるとすれば、やはり根本の理念は「誠実さ」であり、これを将来にわたり継続できる体制を文化として構築するのが教室のミッションであると考えています。
終わりにあたり皆様方のご健勝を祈念し、本年も私ども杏林大学脳神経外科教室へのご指導、ご鞭撻を賜りたく重ねてお願い申し上げる次第です。


2018年2月 塩川 芳昭

  杏林大学医学部 脳神経外科 教室主任・診療科長 塩川芳昭

 

こちらもご覧ください

脳神経外科速報2007年12月
脳神経外科2010年9月
鉄門だより 2012年1月

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