退形成性 星細胞腫 anapestic astrocytoma

  • 「たいけいせいせい せいさいぼうしゅ」と読みます
  • グレード3の悪性腫瘍です
  • 星細胞系腫瘍の仲間です
  • 業界用語で,AA エイエイ といいます
  • 世界的に確立された標準治療は,手術摘出の後で,局所放射線治療,テモダール化学療法です

診断と治療の考え方は,星細胞系腫瘍のところにあります(ここをクリック)


日本での治療方法は,ほとんど膠芽腫と同じです(ここをクリック)


治療が効くタイプ

IDH遺伝子変異
  • IDH1/IDH2 mutation 遺伝子変異があるものでは,治療効果が期待できます
  • 一方で,IDHがwild-typeであれば膠芽腫に近く治療抵抗性とされています
  • そもそも,2016年WHO分類では,IDH変異がないと膠芽腫と呼ぶことになっています
MGMTのメチレーション
  • 英語で,promoter methylation of the O6- methyguanine methyltransferase (MGMT) gene
  • MGMT遺伝子のメチレーションがあることが証明できれば,テモダール化学療法や放射線治療がよく効くということを示します
  • 長い生存期間が期待できます
  • 退形成性星細胞腫では,一番大切な病理所見です

膠芽腫との違い

  • 膠芽腫との違いで意識しなければならないのは,退形成性星細胞腫では長期生存例(10年を超えるあるいは治癒する)があることです
  • ですから,社会復帰に希望をいだいて治療する場合には,放射線治療の強度をなるべく落とす必要があります
  • 放射線治療の線量と照射範囲が広いと,認知機能(高次脳機能)の低下が何年もかかってゆっくり進行します
  • 膠芽腫とおなじように60グレイを用いると,照射された部分の脳機能はかなり落ちますので,54グレイくらいに抑えることがポイントです
  • 54グレイでも両側前頭葉や大脳半球の3分の2くらいに及ぶ照射野は避けて,腫瘍のコアだけにして周辺線量を50グレイ程度に落とすということもします
  • 「60グレイ当てないと再発して助からないかもしれない」担当の先生には言われるかもしれません,それはそうなのですが—-

diffuse, infiltrative びまん性のもの


染み込むように左前頭側頭葉から島回に広がるAAです。T2/フレア像でにじむように広がり,ガドリニウム増強されません。グレード 2 (びまん性星細胞腫)と区別が難しいものです。

もちろん手術摘出できないもので,生検手術のみを行います。60グレイの放射線治療をすれば高度の認知機能低下は避けられませんから,患者さんと照射線量をよくよく相談します。でもAAは放射線化学療法で長期生存が望めます。

expanding, solid 固形腫瘍的なもの


壊死ではない「のう胞」を伴い,ガドリニウムで強く増強されます。グレード 4 (膠芽腫)と間違えるようなものです。

腫瘍を大部分摘出できるので,積極的な摘出術をして,手術後には放射線化学療法を加えます。手術後の放射線治療計画の領域が狭ければ,60グレイを使用できる部位です。

治療法の概略

  • 可能な限り手術で摘出します(全部は絶対にとれません)maximal safe resection
  • 手術後に病理診断が出たら,腫瘍の部分とその周辺2cmくらいの正常に見える脳の領域を含んで,1日2グレイで27回,6週間,総線量54グレイの局所分割放射線治療をします
  • 世界標準の放射線治療は60グレイ 30分割です,でも正直これはきつい!
  • 退形成性星細胞腫の患者さんは長期生存あるいは治癒する人がいます
  • 広範囲の60グレイでは5年後くらいの認知機能/高次脳機能がかなり落ちます
  • 腫瘍の発生した部位によっては,広範囲高線量照射で治った後で社会復帰をして,その後に会社を辞める,家庭生活を失うことになる患者さんがいます,長く患者さんをみていると哀しいこともあります
  • 腫瘍のできた部位によっては放射線量を減らすことも必要です
  • 同時に,テモゾロマイドという制癌剤を毎日 75mg/m2 飲みます
  • 治療が終わってからも4週間に5日間だけテモダール 100mg-200mg/m2)を飲みます
  • これを,6ヶ月から24ヶ月くらい継続します

退形成性星細胞腫の病理

  • びまん性星細胞腫と膠芽腫との中間の所見です
  • 2016年WHO分類で,原則的にはIDH変異があるとされ,びまん性星細胞腫に近いものとなりました
  • 膠芽腫との違いは,腫瘍細胞が死んでいる部分(壊死 necrosis)がないことが最大の特長です
  • びまん性星細胞腫との違いは,細胞核の異型性 anaplastyです,核の大きさが大小不同で歪んだ形をしています

予後

  • 5年生存割合は30-40%
  • 生存期間中央値は3年ほどです
  • でも治ってしまって数十年という患者さんもいます,そこが膠芽腫との大きな違いです
  • 再発した時には膠芽腫グレード4になっていることが多いですが,でも退形成性星細胞腫グレード3のままであればまた治療して長期生存を期待できます

お知らせ:再発患者さんへの新薬の試験

IDH変異型の退形成性星細胞腫の再発が対象となります。変異型IDH1選択的阻害剤(DS-1001)といいます。

<患者さんからの治験に関するお問い合わせ先のURL>
http://rctportal.niph.go.jp/s/detail/jp?trial_id=JapicCTI-163479

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文献情報

再発した退形成性星細胞腫に対する治験薬

2017年米国でエフロルニチンという薬剤の臨床第3相試験が行われています。ここで興味があるのはロムスチン CCNUがコントロールアームとして使用されていることです。ロムスチンは単独でも再発退形成性星細胞腫に多少の有効性があります。古い安価な飲み薬ですが日本では使用できません。

変異型IDH1選択的阻害剤(DS-1001)の臨床試験

2017年11月時点で,IDH mutationのある退形成性星細胞腫に対する治験が日本で行われています。変異型イソクエン酸脱水素酵素 mutant IDH1に対する選択的阻害剤(DS-1001)を用いるもので,臨床第1相試験です。主に薬剤毒性を調べる段階の治験であり,効果はまだまったく不明です。

生存割合

Smoll NR: Incidence and relative survival of anaplastic astrocytomas. Neuro Oncol. 2014
3,202例の統計で,退形成性星細胞腫の5年全生存割合は23.6%であったそうです。文献では30-40%とされているのですが,これは臨床試験などで治療が十分にできた群の治療成績であるといえます。


 

延髄のもの:びまん性正中グリオーマと組織鑑別する必要があるか?


30代の患者さんです。起立性低血圧や呼吸苦,右片麻痺と多彩な脳神経症状で発症しました。
左はT2強調画像で,延髄を中心とするびまん性グリオーマの所見です。右はがドリニウム増強像で,一部が増強されて白く見えています。


50.6Gy/28fr, TMZ 24コースの治療をした4年後のMRIです。腫瘍は縮小して固まったようにみえ,症状も落ち着いて自宅で暮らせてました。
しかしこの後に,激しい腫瘍再燃があり制御できませんでした。

脳幹部に発生するAAを,画像だけで「びまん性正中グリオーマ diffuse midline glioma」 と区別することは難しいです。だとすれば生検手術が必要か ? といえばそうとも言えません。どちらであっても治療方法は同じだからです。ただし,平均的な生命予後が退形成性星細胞腫の方が長く,治る患者さんもいます。

 

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