ご遺族に関わる医療、心理関係者の方へ

複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)の治療について

複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)治療のメタアナリシス(Wittouck et al, 2011)では、複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)に対して有効だと考えられている治療法は、いずれも複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)をターゲットにデザインされた個人の認知行動療法です。代表的な治療としてShearら(2005, 2014)、Boelenら(2007)、Wagnerら(2006)、Bryantら(2014)が開発した認知行動療法があげられます。Wagnerらの治療法は、インターネットを用いて行うため、治療場所が遠い遺族などが利用することが可能です。

これらの治療は、悲嘆や複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)に対する心理教育、死別体験への曝露、故人の思い出の整理、故人のいない世界への適応の要素が含まれています。現在、私たちは、Shear博士の開発した複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)のための心理療法(Complicated Grief Treatment, CGT)を日本の臨床現場に即した形に改良した日本版CGT(J-CGT)の効果研究を行っています。この治療については本HPにて研究参加の情報を提示しています。

複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)に対する薬物療法の研究も行われています。三環系抗うつ薬ではうつ症状の改善はありましたが、悲嘆の症状には改善が見られませんでした(Pasternak et al., 1999)。また、近年SSRI(escitalopram)(Zisook et al., 2001)やSNRI(bupropion)(Hensly et al., 2009)を用いて行われた研究では、抑うつ症状だけでなく複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)症状の改善が見られました。しかし、これらの研究はすべてオープントライアルであるため、薬物療法の効果が十分検証されたとは言えない段階です。2016年にShearらが、シタロプラム(SSRIの1つ)とCGT、praceboの組み合わせによるRCTの結果を報告していますが、その研究ではシタロプラムの複雑性悲嘆(遷延性悲嘆症)症状への効果は見られませんでした。

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