大切な方を失ったご遺族の方へ
遷延性悲嘆症(prolonged grief disorder)とは?
悲嘆とは、大切な存在を失くしたときにおこる自然な反応で、誰もが経験する可能性があることだといえます。
ところが、何らかの理由で、この悲嘆がなかなか和らがず、生活に支障を来すことがあります。
このような状態は遷延性悲嘆症と呼ばれ、精神医学(世界保健機関:ICD-11, 2019)や臨床心理学(米国精神医学会:DSM-5-TR, 2022)の分野では「精神疾患」に位置付けられました。
日本での調査研究は、死別を経験した約2.4%(Fujisawa et al., 2010)の人がこのような状態にあると報告しています。
葬儀を終えて数年経つけれども葬儀のときと変わらない悲しみがある、故人への思いが強すぎるために生活が立ち行かないというような状態は、遷延性悲嘆症である可能性があると言えます。
遷延性悲嘆症は、うつや自殺念慮などの心の面や、高血圧、心疾患などの身体面に影響することがあることから、適切な支援が必要です。 米国精神医学会は、故人に向けられる思いが毎日続いている、死に対する感情が強すぎる、または麻痺している、それを避けたい思いが強い、 これらのことが理由で社会生活や仕事に支障を来している、文化的に許容される悲嘆の範囲を超えているなどを通常の悲嘆を超えた状態としています。
大切な存在を失う時に、悲嘆を経験することはごく自然なことであり、悲嘆に伴う心痛な感情への向き合い方や、喪失体験後の生活に戸惑いを感じることも決して珍しい事ではありません。 ただ、なかなか先が見えてこず、あまりに辛い状況が続いているならば、安心して話せる方や、専門の精神医療や臨床心理の機関に相談してみるのも方法のひとつです。 お一人だけで悩まず、適切な助けを得ていたくことが大変重要です。