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当科/当講座の2016年度報告

当科/当講座の2016年度活動報告

                               (室月 淳 2017年度7月27日)

室月研究室は,宮城県立こども病院産科に東北大学大学院医学系研究科先進成育医学講座胎児医学分野の連携講座が併設される形で構成されています.昨年の平成28年9月に和形麻衣子が菅原研究室に講座変更となり,また今年の3月いっぱいで原田文が京都大iPS研究所に異動となりました.4月からは新しいメンバーとして利光正岳が加わりましたが,室本仁が8月から国立成育医療研究センターに転出したため,現在のメンバーは5名です(写真左より利光正岳,小川真紀,室月淳,永岡晋一,小堀周作,室本仁).

 

 臨床面における業績

当院は宮城県内の3つの周産期母子医療センターのひとつであり,とくに小児病院のなかに設置されている産科として,胎児医療をメインとして診療しています.2016年の分娩数は377件,そのうち帝王切開分娩が144件(38%),母体搬送受入数が116件,早期産が92例(24%),2500g以下の低出生体重児は113人でした.正常自然分娩も一部とりあつかっていますが,基本的に前児がなんらかの疾患があった妊産婦,および落合愛子といった近隣地区の妊産婦のみに限定しています.

われわれの診療の柱は,‖杙疾患の出生前診断と周産期管理,胎児治療,0篥前緡鼎遺伝カウンセリング,の3つです.

胎児疾患の出生前診断と周産期管理では,2016年一年間で,先天奇形91例(頭頚部6,心構造異常42,不整脈7,消化器系4,腎尿路系12,骨系統疾患4,胸腹水7,二分脊椎4,臍帯ヘルニア2,先天性横隔膜ヘルニア2,そのほか5)や染色体異常7例,先天性ウイルス感染3例,胎児発育遅延37例,一絨毛膜双胎28例をあつかいました.ほぼ全例が他院からの紹介でした.

当科の方針として胎児期に治療することを目標としており,出生前に治療が必要となる疾患では適切な胎児治療(胎児手術)を行っています.平成22年8月に双胎間輸血症候群に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を当院ではじめて行ってから,平成29年3月までに49例の手術を行いました.2016年一年間のおもな胎児治療としては,双胎間輸血症候群にたいする胎児鏡下レーザー手術14例,無心体双胎にたいする超音波ガイド下ラジオ波焼灼術4例,胎児輸血3例(のべ7回),先天性サイトメガロウイルス感染症にたいする高力価ガンマグロブリン胎児投与1例(のべ3回),胎児胸水にたいする子宮内シャント術1例,胎児頻脈にたいする経母体的薬剤投与1例がありました.

遺伝医療と遺伝カウンセリングの分野では,毎週火曜日と水曜日に遺伝カウンセリング外来をおき,遺伝や出生前診断に関する相談に十分に時間をかけたカウンセリングを行っています.社会的に有名にもなった無侵襲的遺伝学的検査(NIPT)の実施にあたっては特に遺伝カウンセリングを重視しています.また妊産褥婦の服薬に関する不安や悩みを解決するための「妊娠と薬カウンセリング」や,医療や震災後の被曝に対する「放射線カウンセリング」などにも取り組んでいます.出生前検査としてはNIPT 273件,羊水染色体検査 48件,胎児遺伝子診断のためのCVS 4件であった.NIPTの増加により当科での羊水検査は若干の減少傾向にあります.

NIPTが開始されたのは平成25年4月からであり,受検者数は平成25, 26, 27年度がそれぞれ232件,224件,214件であったが,平成28年度は270件とやや多かった.福島医大,山形大でも検査を開始したので,平成29年度以降はまた例年並みの件数になる見込みです.270例の受検者のうち,21トリソミー陽性が4名,18トリソミーが1名で,陽性率は1.9%という値は全国平均とほぼおなじです.陽性者全員が羊水検査を受け,すべて診断が確定しました.

当院ではNIPTの遺伝カウンセリングを重視し,ひとりあたり最低30〜60分のカウンセリングが行われています.昨年度はNIPTが273件と増加し,さらに陽性者も5例と多かったため,外科系診療科のわれわれにとっては正直いって少なからぬ負担となりましたが,昨年度より採用の認定遺伝カウンセラー(非常勤)に遺伝カウンセリングと結果説明の一部をカバーしてもらったため非常に助かりました.今年度から常勤として働いてくれる予定です.

胎児輸血中.術者は室本,助手は室月です.

 

 研究面における業績

東北大学の連携講座としてこれまで3人の学位授与者をだしてきました(宮下進,小澤克典,室本仁).現在,小堀と永岡のふたりの社会人大学院生が在籍しており,科としても活発な研究活動をおこなっています.

昨年度にひきつづき積極的な論文投稿と学会発表をおこない,室本仁が第89回日本超音波医学会「学術奨励賞(産婦人科部門)」,第23回日本胎児心臓病学会里見賞(研究部門)をそれぞれ受賞しています.また2016年12月3日には室月淳が仙台国際フォーラムにおいて第9回胎児骨系統疾患フォーラムを主催しました.

(1) 位相差トラッキング法を用いた胎児脈圧計測

東北大学工学部との共同研究であり,ある点の変位を高精度に測定できる位相差トラッキング法を応用して胎児の大血管の脈波伝播速度を計測し,流体力学の運動方程式によって脈圧を算出するシステムを開発しました.現在,小堀が研究をひきついで,周産期医療への臨床応用をめざしています.

(2) 骨系統疾患の出生前診断と周産期管理

ノンオフィシャルなネットワークである「胎児骨系統疾患フォーラム」に集まるケースなど国内の骨系統疾患の症例を臨床的に検討し,胎児骨系統疾患の診断と管理をまとめています.平成28年12月に第9回胎児骨系統疾患フォーラムを仙台国際センターで開催いたしました.現在は日本人に特徴的とされ予後不良である周産期型低ホスファターゼ症について,永岡が中心となって研究をおこなっています.

(3) 無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)の検討

倫理委員会の承認のもとで検査会社よりセルフリーDNAのデータを提供してもらい,NIPTの偽陽性や判定保留例を対象として利光が中心に遺伝学的検討をおこなっています.

(4) 切迫早産のあたらしい管理

切迫早産患者にたいする治療にあらたに非ペプタイド性オキシトシン受容体拮抗剤レトシバンとDr Arabinペッサリーのふたつを導入し,臨床的におおきな効果をあげています.レトシバンのグローバル治験は残念ながら先日中止となりましたが,short tocolysisとペッサリーによって日本の切迫早産治療のスタンダードをかえていくことをめざしています.

(5) あたらしい電子カルテ周産期システムの開発

当院では数年前に電子カルテの基幹システムが導入されましたが,産科カルテだけは紙上で運用されてきました.今回,螢侫.ぅ鵐妊奪スと共同で周産期システムを開発し導入しました.ハイリスク妊産婦と胎児管理を念頭において,問題リストの作成や一覧性の高い妊娠経過記録,胎児標準病名の導入などあたらしい工夫をとりいれました.

 

 研究室メンバー(写真左より順に紹介)

利光正岳(医師,平成19年卒)

東大の産婦人科教室より本年4月から当科にきてくれた新人で,亀井良政教授からのご推薦です.人柄がみなに好かれています.スタッフ最年長として,室本先生のかわりに臨床をまとめる役が期待されています.

小川真紀(認定遺伝カウンセラー)

昨年3月に川目教授の遺伝カウンセリングコースを修了し,当院の非常勤職員となりました.11月に認定遺伝カウンセラーの資格を正式に取得して,この4月より晴れて正式の職員となっています.

室月淳(科長,昭和61年卒)

今年の最大の仕事となりそうなのは,9月のベルギーの国際学会で口演をしたあと,モスクワでの招請講演とサンクトペテルブルグでのレクチャーをすることですが,いまからプレッシャーがかかっています.

永岡晋一(医師,平成21年卒)

東京都立多摩医療センターより昨年4月にこちらに異動.現在,大学院2年生です.「周産期型低ホスファターゼ症の診断と管理の臨床的検討」をテーマに研究しています.

小堀晋一(医師,平成22年卒)

船橋中央病院より昨年4月に当科に来ました.兄がライト級の元世界チャンピオンで,本人もボクシング経験者です.学位のテーマは「位相差トラッキング法をもちいた胎児の非侵襲的脈圧測定とその臨床的応用」で鋭意努力中です.

室本仁(医師,平成18年卒)

昨年の3月に学位を取得して一年間当科を手伝ってくれたのち,今年の8月から国立成育研究センター胎児診療科のスタッフとして異動いたしました.胎児診断と治療にさらに邁進することになります.5年間おつかれさまでした.

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カウンタ 6854 (2017年7月27日より)