仕事
職場でのコミュニケーション
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更新・確認日:2026年3月3日
がんと診断され、治療を始めても、あなたは職場の大切な一員です。ここでは、職場の人々とどのように関わりながら仕事と治療を両立していくのかについて、一緒に考えていきましょう。
がんと診断されたら
上司に相談する
仕事をする上で、上司とのコミュニケーションはとても大切です。そのコミュニケーションの基本として「報(告)・連(絡)・相(談)」、いわゆる「ホウレンソウ」が鍵となるといわれています。今後の仕事についての心配や不安を一人で抱え込まないで、まずは信頼できる上司に相談しましょう。それが、がんの治療と仕事を両立するための第一歩となります。
上司に伝えることは、以下のようなことが挙げられます。
①がんであること(病名を伝えにくい場合は、「身体のどの部分に生じたがんか」という大まかな情報でもかまいません)
②治療の見通し(入院期間、治療の内容)
③休職する場合は、職場復帰の見通し(職場に戻れる時期や、予想される体調・副作用)など
上司とのコミュニケーションについては、厚生労働省の研究班が作成した「がんと仕事のQ&A(第3版)(がん情報サービスへリンク)」も参考になるでしょう。
人事労務担当者に相談する
休職できる期間の長さやその間の収入など、治療に専念する前にいろいろと気になることが出てくると思います。人事労務担当者に相談し、会社にある様々な支援制度をいつ、どのように活用できるのかについて助言を得るとよいでしょう。
職場の医療者に相談する
あなたの職場に、産業医や産業看護職はいますか。産業医や産業看護職とは、あなたの職場環境をよく理解し、従業員が安心・安全に働くための助言や調整、健康管理を行う医師や看護師、保健師のことです。もしいれば、がんの治療を始める前に、ぜひ相談してみてください。上司・人事労務担当者とあなたが、がんの診断や治療についての情報を共有・理解する際に、橋渡し役を担ってくれます。
休職に入るとき、休職しているとき
上司と定期的に連絡を取り合う
休職中も、体調が許す範囲で上司と連絡を取り合うことをお勧めします。ごく簡単でよいので治療の状況や体調を上司に伝えることができれば、職場復帰に向けての準備がスムーズになります。あなたも、職場とのつながりを実感できるでしょう。休職中に上司が代わることもあるでしょう。上司同士で申し送りをしてもらえるとよいですが、それが難しい場合は、今までの治療の状況、予測される体調・治療の副作用、職場に戻れる時期の目安などについて、自分から新しい上司へ連絡するとよいでしょう。もしくは、人事労務担当者に相談し、間に入ってもらうとよいでしょう。
職場に戻るとき
職場復帰を考える時、何から準備を始めたらよいでしょうか。
まずは主治医に相談する
外来受診の時に、主治医に職場復帰したいという気持ちを伝えましょう。職場復帰の許可が出たら、①職場復帰可能な時期(日付)と②職場に求める業務調整・環境調整(例:残業・出張・夜間勤務の禁止や制限、重いものを持たない、車の運転は不可など)の2点が記載された診断書を発行してもらうと、職場の理解を得やすくなります。診断書に書かれた内容を自分で理解しておきましょう。がん診療連携拠点病院(がん情報サービスへリンク)のがん相談支援センター(がん情報サービスへリンク)(その病院にかかっていない人も無料で相談できます)でも職場復帰の相談を行っていますので、活用してみましょう。
上司と話し合いをする
主治医からの診断書をもとに、上司と職場復帰の時期や業務配慮について話し合いましょう。産業医や人事労務担当者同席の復職面談を組み、通院・治療の予定、今後予想される心身の症状、職場復帰後に活用できる就業規則などについて、情報共有するのもよいでしょう。厚生労働省から公表されている「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(現在令和6年3月改訂版)(外部リンク)」 や厚生労働省の研究班が作成した「がんと仕事のQ&A(第3版)(がん情報サービスへリンク)」を活用することを勧めます。
生活のリズムを整えよう。
長い間療養していると、通勤していたときと比べて生活のリズムが大きく変わっていることがあります。まずは、自分の生活リズムを1~2週間記録してみましょう。睡眠(睡眠の長さや質、日中の眠気など)、体調(身体の痛みや疲れ、だるさはないか)、勤務時間帯にあたる日中の過ごし方(自宅で読書、散歩をする、家事など)を記録することにより、通勤している時の生活リズムと比較することが容易になります。
「通勤練習」をしてみよう。
生活の中身を実際に勤務している状態に近づけていくために、正式な職場復帰の前に1~2週間ほど「通勤練習」をしてみることを勧めます。実際に通勤するときと同じ時刻に起床し、会社の近くまで行ってみます。あなたの仕事がデスクワークなら、オフィスに似た環境(図書館やカフェなど)で、本を読んだりパソコンで作業をしたりして過ごし、退社時刻になったら帰宅します。「通勤練習」が順調に行えれば、職場復帰に向けての自信がより高まるでしょう。
職場に戻ったら
身近な同僚や取引先に、現在のあなたの状況を可能な範囲で伝えるのは良いことです。話しにくいことを無理に伝える必要はありませんが、もし配慮して欲しいことがあれば、理由とともに具体的に伝えるようにすると、その後の仕事を一緒に進めやすくなるのではないでしょうか。
治療と仕事の両立のために
職場復帰直後は「はやく追いつかなくては」という気持ちでいっぱいかもしれません。でもあせりは禁物です。まずは任された仕事を着実に進めましょう。その過程で、困難や不安を感じたら、早めに上司に相談しましょう。職場復帰後の治療や検査に関することを伝えるのが難しければ、産業医や産業看護職から分かりやすく説明してもらうのもよいでしょう。「がんと仕事のQ&A(第3版)(がん情報サービスへリンク)」では職場復帰後の働き方について、体験者からのアドバイスやコラムなど役立つ情報が掲載されています。
職場では、現在のあなたが同僚のためにできることも積極的にみつけていきましょう。仕事は「お互いさま」です。今後、同僚に仕事を手伝ってもらうことがあるかもしれません。常に感謝の気持ちを忘れずに。
がんと診断されたAYA世代の経験者にとって、治療と仕事の両立は大きな問題です。「治療について、上司にどう伝えたらいいの?」「主治医から復職の許可が出たけれど、すぐに忙しい仕事に戻るのは心配…など不安は尽きないと思いますが、どうか一人で悩まないでください。ここでは、上司や同僚の支援を得ながらがんの治療と仕事を両立できた経験者のエピソードを紹介します。
人事部門に所属しているAさん(30代男性)は、入社10年目の中堅社員です。新入社員教育のリーダーを任され、充実した毎日を過ごしていましたが、2か月ほど前から続く発熱をきっかけに急性骨髄性白血病と診断されました。
Aさんは上司に電話をし、「いま病院です。白血病と診断されました。すぐに入院して治療を始める必要があるそうです。入院の期間は今後の病状などにもよりますが、少なくとも数か月はかかるとのことです。その間、仕事を離れなければなりません。ご迷惑をおかけしますがどうぞよろしくお願いいたします。詳しいことがわかり次第、またお知らせします」と伝えました。
急に決まった入院だったため、治療の見通しを詳しく上司に伝えることや同僚への仕事の引継ぎもできず、Aさんは職場に申し訳ない思いでいっぱいでした。しかし、上司は「いまは仕事のことは忘れて、ゆっくりしなさい。治療に専念することが大事だよ」と励ましてくれました。病状や治療については、上司を通してごく一部の同僚にしか知らせていませんでしたが、入院中の体調を気遣って、直接見舞う代わりに自作動画や寄せ書きで応援してくれたことも大きな心の支えになりました。
入院治療は順調に進み、治療開始から半年後に退院し、外来で化学療法を続けることになりました。退院から2か月で復職のめどが立ちましたが、人事部門は対人業務が多いほか、残業や突発的な対応も求められるため、吐き気や倦怠感を伴う化学療法との両立にAさんは不安を感じていました。そのため、産業医・上司と復職前に面談し、今後の治療スケジュールや予想される体調変化による業務への影響ついて相談した結果、他部門との直接交渉が少ない企画部門に異動し、体調に合わせて自分のペースで業務ができるよう、会社からの配慮を得ることができました。また、化学療法を週の後半に実施し、週末を副作用からの回復に充てられるように、治療の日程調整を主治医に依頼するとよいという産業医のアドバイスも受けました。2年間にわたる3か月に一度の化学療法を終えた現在は、従業員の安全を守り働く環境を整える労務管理部門に就き、自身の経験を従業員の復職支援に活かしながら元気に仕事を続けています。
産業医からのメッセージ
がんと診断された思春期・若年成人(AYA)期の皆さんにとって、治療と仕事の両立は最も大きな課題の一つでしょう。仕事で求められる体力や体調を維持しながら治療を継続するためには、職場の理解と支援が欠かせません。職場に産業医や産業看護職(産業保健スタッフ)がいる場合には、職場と主治医との橋渡し役をお願いできますが、産業保健スタッフがいない場合には、治療と仕事の両立にあたってAYA期の皆さんや職場はどのような工夫をすればよいでしょうか。ここでは、産業医を選任する義務のない、従業員が50名未満の小規模事業場に勤務する、30歳代で診断された複数のがん経験者(以下、がん経験者=本人としています)から話を聞き、産業医が感じた「小規模事業場の“強み”」についてご紹介します。
●スピード感:がんの診断後に本人から上司への相談が速やかに行われていました。少人数の職場であったことから、もともと上司との距離が近く、診断後直ちに上司への報告を行うことができました。そして、同僚への病気の開示も上司の配慮で円滑に進みました。治療による体調不良で遅刻・早退が増えた際、上司は本人に同僚への開示の意向を確認したうえで、朝礼の場で同僚に過不足なく病気のことを説明したため、同僚から理解や配慮を得ることができました。
●柔軟さ:本人が、直属の上司から迅速かつ柔軟な業務上の配慮を得ていました。大企業では部門や役職ごとに役割が細分化されているため、本人が治療と仕事の両立について社内の誰に相談すべきか迷ったり、業務の調整に時間を要したりします。一方、小規模事業場では上司が社内で複数の役割を担っているため、経営層と人事労務部門との連携・調整が容易であり、社内規程の柔軟な運用によって配置転換やその他の業務の調整が迅速に行われていました。
●親密さ:本人が、少人数の職場ならではの家族的な支えを上司や同僚から受けていました。休職中であっても職場の忘年会に呼んでもらえ、同僚の輪に加わるなど、本人がいつもと変わらずに「職場の一員である」という気持ちを保てたことは、就業継続の大きな支えとなっていました。
その他、治療や療養に関する情報収集において、SNSやブログを含めたインターネットの活用も共通してみられました。こうして得られた情報や患者会への参加などが、職場の産業保健スタッフの不在(個別化した就業継続支援や情報提供の欠如)を補完していたものと思われます。
今回がん経験者の方々のお話を通じて、小規模事業場ならではの“強み”を発見すると同時に、職場の産業保健スタッフが不在であっても、さまざまな方と連携を取りながら就業されていることに深く感銘を受けました。 その一方で、主治医やがん相談支援センターのソーシャルワーカーのサポートが必ずしも十分ではなかったという意見も聞かれました。具体的には、「主治医が忙しすぎて不安な気持ちについて相談することができなかった」「ソーシャルワーカーに治療後の暮らし方や経済的支援について尋ねても、わたしに寄り添った内容の情報提供や配慮が得られなかった」といった内容であり、これら相談先には(経験者が勤務する事業場の規模に関わらず)相談者の個別の事情や心情に沿う一層充実した対応を期待しております。
治療と仕事の両立には、主治医と職場との間で緊密な関わりが欠かせません。主治医の積極的な関与に期待すると同時に、AYA期の皆さん・職場側からも文書や面談による情報提供(※)を出発点として主治医にはたらきかけ、意見書発行などの協力を得ることが理想的です。その際には、厚生労働省の以下のウェブサイトを活用ください。
- 厚生労働省ウェブサイト「治療をしながら働く人を応援する情報ポータルサイト 治療と仕事の両立支援ナビ」(外部リンク)
- 労災疾病臨床研究事業費補助金「事業場において治療と仕事の両立を支援するための配慮とその決定プロセスに関する研究」班「がん患者さんのための治療サポ」(外部リンク)
がんの治療と仕事の両立をめざすAYA期の皆さんが、職場の人たちと手を携えて着実に歩んでいかれることを願ってやみません。
(※)文書や面談による情報提供: このコラムにおける文書による情報提供とは、厚生労働省が発行している「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」に上司が記載し、それをがん経験者から主治医に提出することです。また、面談による情報提供とは、がん経験者の許可を得て、上司または人事が診療に同席することです。
「勤務情報を主治医に提供する際の様式例」のPDFはこちら(外部リンク)(厚生労働省のウェブサイト「仕事と治療の両立について」)。