死後電子画像のデータベース構築に向けて
私には脳神経外科の臨床医として20年弱そして、放射線科の担当になってからは4 年の経験があります。その中で死後の画像を利用してきた事は一度ならず 経験があり、またCT/MRIの設置されている施設に勤務している臨床医であれば同様の経験があるものと考えます。先日母校の救命救急センターの勤務に聞いたところでは、すでに1000例以上の画像を保有していると聞きました。臨床医としては経験知になりセンターなどでは検討会などでフィードバックがされている事と思います。しかし本学会での討議に見られるような様々な制約の中で、何らかの共通した方法が用いられ事もなくまた公には議論すら出来なかったのが状況と考えます。これが今回の表題にさせていただいた貴重な経験が整理されずに断片的となっていると考える所以です。
横浜中央病院での経験をもとに、常に時間と費用と労働力と設備が制限された一般病院での実例を紹介します。一昨年前に病理科から死後のCT/MRI画像 と剖検をセットで施行するautopsy imageというお話を聞きし、私は気軽に協力を約束して、当時のレントゲン技師長に相談しました。ところが普段から仕事をいとわないスタッフから救急なら未だしも、一般診療の現場で死体の撮影を依頼すると云う依頼には躊躇が見られました。それでも、提案の数日後に入院中の患者さんが急変し頭部CTだけでも施行したいと内科から申し出があったところ、早速「全身のMRIはどうですか」と技師サイドから申し出がありました。この気軽さが小さな病院の良いところです。内科主治医の目的は学会でも紹介のあった法医学の現場と同じ、脳出血か心不全かの判定でした。でも結果的には肺塞栓症という興味深い画像が残せる事になり、横浜中央病院でのAutopsy image第一例目になりました。この症例は日大放射線科の竹本先生が主体となって画像研究会に報告できる事となり、学会では塩谷先生と江沢先生にも面識を得る事ができ、撮影方法についてアドバイスを得られると云う幸運に恵まれました。しかし院内ではその後興味のある医師からはくり返し依頼が出ますが、興味のない人は全く依頼がない現状です。それでも病理の桂先生の努力もあり現在まで十数例の経験がありました。そのなかで「あの画像があったら」と悔やまれる症例もあります。そこで基本セットを設定しました。
Ai基本セット:CTとMRIはどちらも行う事にしました。現在セットで50分程が必要です。
また基本情報として、死亡時間と撮影時間、蘇生治療の有無の確認が必要です。 MRIは疾患により部位と方法の選択が必要になるのはご存知のとおりです。基本セット以外の画像はスクリーニング後の指事が必要になります。(参考に当院Ai基本情報の書式を添付します。添付ファイル参照)我々の病院での倫理委員会は病理の桂から提言があった通り、まるで肩透かしのように承諾が出ました。またAiについて相談すると頑な態度が見られるのも臨床に熱心な医者です。臨床家は死を敗北と考えるような環境に常に接しています。死を情報源と捉える病理や法医学の医師と同様の認識を、死後電子画像が我々自身に再認識させてくれるのではないかと考えます。そのためには一般病院の画像も含めた情報のデータベース化が必要であると考えます。