オートプシー・イメージング学会 趣旨書

剖検はこれまで医学の進歩に対する高い貢献により重視されてきたが、近年、剖検率低下は世界的に顕著で、この傾向は医療の質の低下に直結すると憂慮される。

『死亡時画像病理診断』=『オートプシー・イメージング(Autopsy imaging = Ai)』は、こうした剖検をめぐる諸問題解決のため提示しうる一つの試案である。オートプシー・イメージングとは、死後画像(Postmortem Imaging = PMI)と剖検情報を組み合わせ、死亡時診断のスタンダードを構築し、医学的および社会的な死亡時患者情報の充実を図るための、新しい検査概念である。

オートプシー・イメージングを、患者死亡時における検査の選択肢のひとつとして提示しうる医療環境を整備すれば、患者死亡時情報の取得が可能になると同時に、その情報を基にした細密剖検も増加すると考えられる。死亡時における客観的画像が取得可能なため、司法関連情報としても有用性は高い。また、剖検CPCが必修となった医師研修制度の変更に伴い、研修医にとって剖検導入に有用である。

オートプシー・イメージングを導入すると、従来の剖検が減少するのではないか、と危惧する声も多い。しかしオートプシー・イメージングとは、PMI を従来の剖検と併用し、病理診断・画像診断の双方の質を高めていこうとする考え方であり、オートプシー・イメージングにより問題点が指摘された症例では、剖検承諾が得られやすくなったという事実もあることなどより、オートプシー・イメージングとは、従来の剖検と競合するものではなく、協調的・相補的な検査であるといえる。

オートプシー・イメージング成立のためには、病理医と放射線科医の間にコンセンサスが必要である。加えて臨床医、コ・メディカルを含めたスタッフ間の協力体制構築も必須である。この他、法医学の関与も必要とされるだろう。

こうした環境を整えるためには、オートプシー・イメージングに対する認知度をあげ、一般的な理解を求める必要があると同時に、Ai 画像に対する基礎研究も必要になる。こうした知見に関しコンセンサスを得、現実に運用可能なシステムを構築するため、【オートプシー・イメージング学会】発足をここに企図したものである。