self-controlled case series (SCCS)

はじめに

ここの所注力してきた仕事が一段落して、この週末は良い具合に一息つけます。

さかのぼること数か月、今後使うかもしれない、自分にとって新しい手法を試しておこうと、 Sequence Symmetry Analysis (SSA)をやってみたんだけど、これがイマイチ。何がイマイチって、製薬工業協会のホームページにSASのプログラムが公開されていて、それを見ながらやっているんだけど細かい数字が合わない。結果はだいたい近いところまでは行くんだけど、何か織り込むべきアイディアが足りないのか。ちなみに、作成にかかわったタスクフォースの方々の名誉のためにもう少し書いておきますと、この公開されているプログラムがおかしいというのではなく、まず、他人の書いたプログラムから、何がなされているのかというのを読み解くのはとても難しい作業で、このプログラムを参考にして、何がされているのかを読み取って、そのうえで自分にとってわかりやすいように書き換えるので、おかしなことが起きているのです。おそらくNull effect sequence ratio, NSRの計算のところがキモなのではないかと思いつつ、しばらくこちらは放置して頭を冷やすことにしていました。。

Self-controlled case series (SCCS)

SCCSとは?

同じself-controlledデザインのSCCSを試してみます。原理はこのスライド2ページ目。当時PMDAで東大epistatの竹内 由則さんが学会発表したスライドからです。

 

データ

データが公開されているので、手法を試すのにちょうどよいということで、試してみるのは、この文献Whitaker HJ, Farrington CP and Musonda P. Tutorial in Biostatistics: The self-controlled case series method. Statistics in Medicine 2006, 25(10): 1768-1797.に出てくるMMRワクチン後の髄膜炎。Table 2にOxford dataとして提示されています。

indiv eventday start end exday
1 398 365 730 458
2 413 365 730 392
3 449 365 730 429
4 455 365 730 433
5 472 365 730 432
6 474 365 730 395
7 485 365 730 470
8 524 365 730 496
9 700 365 730 428
10 399 365 730 716

データは10例ですべて。観察したのは、全員生後366日から730日。データのカラムstart, endは観察期間の開始を生後の日数で示しています。 exdayがワクチン接種の日、eventdayが髄膜炎と診断された日、で、これも生後の日数で示しています。
元論文では、at risk 期間をmumps virusのreplicationにかかる期間に基づいて、shotから15 – 35日後と設定しました。(元文献のTable 2では、ワクチン接種日は「pre-riskから14を引いた日」になります。ワクチン接種から14日目までがpre-risk, 15日目からがat-riskという考え方だと思います)ダウンロードしたデータにはワクチン接種日がexdayとして入力されていますので次のようにpre-risk(ex1), risk end (ex2)を計算します。設定したat riskの期間によってはスクリプトを触るべき個所がココということになります。

ex1 <- dat$exday + 14
ex2 <- dat$exday + 35

観察期間中のすべての日を、at riskの期間かどうか正確に分類したいので、ワクチン接種が331 – 715日のワクチン接種歴を要求した(原文)ということです。case #10は、716日にワクチンを接種していますが、潜伏期間が観察期間終了後まで継続しますので、結果として観察期間中にat riskの期間がありません。

データをグラフィカルに提示している図があったので、引用。灰色の期間がat riskの期間。そして、547で線が引いてあるのは、ここで年齢層を分けて調整因子として使用しているので、それを示すつもりで線を入れたのでしょう。(例示として示した図の中には、年齢層をまたぐリスク期間を有している症例が出てこなかったので、何を説明したくて547日で線を入れたのかわかりにくくなっていますが。)366 – 547 を1層、548 – 730を2層にしています。観察期間中にイベントが発生したら、それ以降は観察期間にしないというような操作を通常行いますが、この集計では、そうではありません。全体の観察期間を集計して、イベントがどの期間に発生したかというような思想で集計するようです。

年齢層をプログラムしているのはここです。

age <- c(547)

#age groups
agegr <- cut(cutp, breaks = c(min(dat$start), age, max(dat$end)), labels = FALSE)
agegr <- as.factor(agegr)

 

 

論文の結果

論文の結果が次の通りで、

自分でも計算

自分で実行した結果が次。めでたく、結果が一致していました。めでたしめでたし。

おわりに

実行したRのスクリプトがこちら。実行に当たっては私の環境に合うようにOpen Universityのホームページのスクリプトを一部改編しました。実行結果が論文で提示されていたものと一致するので、悪くはないだろうと思います。これでまた、新たな手法を用いたいろいろな評価ができる道筋が付きました。(つづく

GRAND VALLEY STATE UNIVERSITY SYMPHONIC WIND ENSEMBLE: Under Western Skies

明日ソロを聴かせてくれるRex Richardson (Trp) ってどんな人だろうかと、とりあえず「GRAND VALLEY STATE UNIVERSITY SYMPHONIC WIND ENSEMBLE: Under Western Skies (グランド・バレー州立大学シンフォニック・アンサンブル – アンダー・ウェスタン・スカイズ)」 ってアルバムを聴いてみました。このアルバムのモラレスの協奏曲いいですね~

アルバムの写真
アンダー・ウェスタン・スカイズ

 

MKSAP quiz: Evaluation for amenorrhea of 4 months’ duration …

ACP Japan Chapter Facebook pageにMKSAPクイズが掲載されました。

The most common cause of Cushing syndrome is an elevated level of cortisol resulting from both endogenous and exogenous exposure to glucocorticoids. という事ですが、exogenous exposureの頻度は示されていません。まぁ、副腎皮質ステロイドの使われ方が多岐雑多で、あまりいい集計方法がないのかもしれません。

Table 25. Common Causes of Cushing Syndrome
cause percentage of Patients with endogenous Cushing syndrome
ACTH-dependent 75-80
ACTH-secreting pituitary adenomas 60-65
Ectopic ACTH secretion by tumors 15-10
CRH-secreting tumors <0.5
ACTH-independent 20-25
Adrenal adenoma 15-10
Adrenal carcinoma 10-5
Exogenous Cushing syndrome
Administration of corticosteroids
Administration of drug with corticosteroid activity (progestational agents, such as megestrol acetate)

Suntory summer festival

9月の初めに行ったサントリーフェスティバルのプログラムです。高校の時に一年後輩だった渡辺泰君が新日本フィルのフルート、ピッコロのパートのメンバーです。 当日会うことはできませんでした。と言うか、ひな壇を使わなかったのもあって、いるのかどうかも最後までわかりませんでした^_^

iPodから送信

Tragedy, Perseverance, and Chance — The Story of CAR-T Therapy

Tragedy, Perseverance, and Chance — The Story of CAR-T Therapy

最近はCAR-T技術を用いた医薬品(再生医療製品等を含む)の開発は内資を含め多くの製薬企業で進められていて、私がアドバイザーを務める製薬企業でも精力的に動いているのを感じます。(私は開発にはかかわっていませんが)かこに関連の学術集会等でも提示されています、Eilyの話は、何回か聞いたことがあります。でも、それとは別の登場人物の話は、この論文で初めて知りました。
ペンシルバニア大学のCarl Juneは、通常なら研究開発をあきらめるような場面で、粘り強さを見せます。妻を卵巣がんで亡くしたことからくる、新しい技術による治療を開発することにかける執念のようなものがそれを支えていたようです。
義理の娘を乳がんで亡くしたバーバラとエドワード・ネッターが新規の治療法を開発するためのアライアンス(AGCT -制限酵素Alu1でキレそうな名称) を立ち上げ、この研究に$1,000,000もの資金提供しました。なかなか、うまくいくかどうかわからないような事業に出資できるような金額ではありません。受け取って研究開発する側もそれなりに肩の荷の重い話だっただろうと思います。
ペンシルバニア大学でこの治療を受けた症例の臨床経過を見ますと普通なら亡くなってもおかしくないような危険な状態になっているのにもかかわらず、奇跡的なと言っていいほどの復活を見せる症例が多くいます。かかわっている人たちが執念を持ってケアしていたのかもしれません。サイトカインストームに見舞われ、IL-6レベルの上昇を見た際に、IL-6 pathwayを標的とするモノクローナル抗体であるトシリズマブが他の疾患に対する適応ではありますが承認され、医薬品グレードの市場で調達できる状態にあったのは時代のよいめぐりあわせだっただろうと思います。
ちなみに、途中でGelsinger君の話が引用されています。「彼が亡くなったことで遺伝子治療の開発が10年は遅れた」というような趣旨で引用されいますが、その当時私は、こうした治療法の監督官庁のFDAに勤めていて、ある日出勤するとメディアがFDAの入り口付近に集まっていたのを思い出します。この論文に書かれていることに、私は直接かかわってはいませんが、比較的私がいる空間の比較的近いところで起きた事なんだなと感じます。
最後に、いい言葉が書かれているので引用します。「Chance favors the prepared mind」【チャンスは準備された心を好む】 チャンスに備えて準備しておきましょう。

Ethics and the Legalization of Physician-Assisted Suicide: An American College of Physicians Position Paper

医師による自殺のほう助についてのポジションペーパーです。日本では終活として、尊厳死・安楽死の言葉もあいまいなまま議論がなされているような状況ですが、米国でのこの議論は一歩先を行きます。この記事でちょっと気になったのが、米国では自殺や自殺未遂は犯罪ではないという件があります。これまで、犯罪かどうかという観点で考えたこともなかったので、新鮮です。さらに、医師による自殺ほう助は犯罪である。しかし、ニューメキシコ州では無罪という判断がなされたものの、これは上級審で否定されたという話も、そういう論点での裁判所の判断を目にしたことがなかったです。

ACP Japan Chapter

ACP Japan Chapterの投稿をシェアいたします。リンク先のさらにリンク先の英語のサイトは登録ユーザー以外は見ることができないかもしれませんので、少しだけ補足しますと、9月は特に女性医師のこのパスウェイでのフェロー昇格を推奨していて、ACPのメンバー以外からの直接FACPへの昇格もあるということです。日本人は自ら手を挙げるようなことが苦手かもしれませんので、周りでFACPにふさわしいと思われるような女医さんがいらっしゃいましたら、周囲の方が積極的に背中を推してあげてください。
(PRC委員長 大島康雄)

Translate »