国際基準に基づく小奇形アトラス 形態異常の記載法 ―写真と用語の解説



口腔 2

口:定義

・歯槽堤融合(Alveolar ridge fusion):線維性癒合(Fibrous syngnathia)と同義

線維性癒合(Fibrous Syngnathia)
定義
完全または歯槽堤のほぼ完全な軟部組織融合(主観的)(図 19)。
コメント
上下顎の重度の運動の減少や欠如のある患児に認められる。口腔癒着(Oral synechiae)を含む重症型でも認められる。
同義語
歯槽堤癒着(Fusion of the alveolar ridges)
図 19 線維性癒合 口腔癒着も参照。

口腔内色素沈着(Hyperpigmentation, Intra-Oral)
定義
口腔粘膜の局所または全体の色素の増加(主観的)(図 20)。
図 20 口腔内の色素沈着
コメント
濃い皮膚の色素沈着のある人の歯槽堤に色素沈着を認めることはよくあることである。この用語は,雀卵斑から口腔全体の色素沈着までの幅広い色素所見を含む。
・巨口症(Macrostomia):幅広な口(Mouth, wide)を参照
・小口症(Microstomia):狭い口(Mouth, narrow)を参照
・鯉状の口(Mouth, carp):下向きの口角(Mouth, downturned corners of)を参照

口,下向きの口角(Mouth, Downturned Corners of)
定義
口交連が正中の口唇溝から下方に向かう(主観的)(図 21)。
コメント
口を閉じて,口唇は緩やかに接し,顔も安静にした状態で評価する。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
鯉状の口(Carp mouth),魚の口(Fish mouth)(軽蔑語)
図 21 口角が下向きの口・Mouth, fish:Mouth, downturned corners ofを参照

口,狭い(Mouth, Narrow)
定義
口交連間の距離が一般人の 2 SD 以下(客観的)(図 22)。または,口腔の幅が明らかに狭い。
図 22 狭い口
コメント
口腔の幅は,顔の動きにより変化する。そのため,安静な(落ち着いた)顔で評価すべきである。小口症,小さな口腔,「小さな口」という用語の代わりに「狭い口」という用語を使用すべきである。開口部が小さいことは「口の横幅が小さいこと」に対して二次的に生じているためである。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
小口症(Microstomia),小さな口腔(Small oral aperture),小さな口(Small mouth)

口,上向きの口角(Mouth, Upturned Corners of)
定義
口交連が正中の口唇溝から上方に向かう(主観的)(図 23)。
コメント
口を閉じて,口唇は緩やかに接し,顔も安静にした状態で評価する。上口唇が増大(腫脹)している時に上向きの口角があるかどうかの評価は困難かもしれない。
図 23 口角が上向きの口

口,広い(Mouth, Wide)
定義
口交連間の距離が一般人の 2 SD 以上(客観的)。または口腔の幅が明らかに広い(主観的)(図 24)。
コメント
口腔の幅は顔の動きにより変化する。そのため,安静(落ち着いた)顔で評価すべきである。この用語は広く開いている口全体を含み,巨口症,広い口,大きな口と置換される。外側方に口裂のある患者には用いない。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
巨口症(Macrostomia),広い口腔(Large oral aper- ture),大きな口(Large mouth)。
図 24 広い口 口の輪郭は容易に測定可能。

口小帯(Oral Frenulum, Accessory)
定義
歯槽堤から,上口唇または下口唇の内側表面へつながる余剰な組織ヒダ(客観的)(図 25)。
コメント
この所見は,口腔粘膜を歯槽堤から軽く話すように引っ張ったときに,より顕著となる。通常は, 2 つの切歯の正中に上顎と下顎の口小帯がある。副小帯に異常な歯槽堤を伴う場合があるが,別の所見として評価すべきである。
同義語
副小帯(Supernumerary oral frenulum),余剰口小帯(Extra oral frenulum)
図 25 違う患者の下唇の余剰小帯(A),上唇(B)・Oral frenulum, extra:Oral frenulum, accessoryを参照
・Oral frenulum, supernumerary:Oral frenulum, accessoryを参照

口癒着(Oral Synechia)
定義
上下の歯槽堤の粘膜表面を結ぶ線維性の帯(客観的)(図 26)。
コメント
これらの帯は舌と口蓋を結ぶ帯(舌口蓋強直)や,口腔底(舌口蓋下膜),口咽頭峡部(連続頬咽頭膜),下口唇からの小帯とは異なる[Gorlin ら,2001]。 上下の歯槽堤を完全に接触する軟部組織であれば,線維性癒着(Fibrous syngnathia)という。
図 26 口癒着 線維性の帯を認める。

U 字型の唇紅・上口唇(Vermilion, Upper Lip, U-Shaped)
定義
上口唇の唇紅の緩やかな上向きのカーブ,中央部は交連の上部に位置する(主観的)(図 27)。
コメント
テント状の上唇紅(tented upper lip vermilion)という表現があるが, U 字型の上部の唇紅では上唇紅はさらに丸みをおびている。
「cupid’s bow」の中央部分は本来くぼんでいるが,「U 字型の唇紅・上口唇」ではこの中央部分のくぼみを欠く。
過去に使われたが言い換えが望ましい用語
鯉の口(carp mouth),魚の口(fish mouthi;軽蔑語), U 字型の口(U-shaped mouth)
図 27 U 字型を呈する上口唇の唇紅
唇紅の輪郭と口径と形に留意。
口腔:定義・Aglossia:Tongue, smallを参照
・Alveolar ridge hypertrophy:Alveolar ridge over-growthを参照