A04・A05-2

A04/05-2 治療にとりかかる時期について

治療の時期については、話し方の学習をしている幼児の段階、つまり早い段階で、専門家がサポートを行う方が望ましいと、言語聴覚療法(ことばのリハビリ)の分野では言われています。幼児期に治ると、吃っていた記憶も残りません。

欧米では、吃音が出てから1年くらいは待つが、5歳頃までには治療を始めることとされています。幼児期には治療の有効率が高いからです。とは言え、幼児期は吃音が自然に治ってしまうことも多いため、日本では専門家に相談しても、比較的症状が軽い場合は、「様子を見てください」と言われて治療を受けられないことがあります(特に満5歳までは)。これよって、「専門家に見捨てられた」と感じる親御さんもいらっしゃるようですが、そうではありません。この言葉は、「もうこの子は見る必要がない」という意味ではなく、「ほとんどの場合は自然治癒するが、そうでないようなら再度来てください」という意味です。

就学の1年半前になっても吃音が軽くなる様子もなく続いていたり、逆に悪化したり、本人が話す時に困ったり苦しんでいるような様子があれば、再度、専門家に相談してください。
 また、悪化しなくても軽くもならずに続いているようなら、親御さんだけで様子を見るのではなく、数ヶ月に一度でも専門家と一緒に様子を見て、治療が必要な時期を判断するのが理想的です。
 ただし、このような対応方法は、現在、それぞれの専門家に任されていて、標準がありません。そこで、本研究では、吃音診療のガイドラインを作成することにしています。これによって、幼児期の吃音診療が円滑に行われるようになることを期待しています。

幼児期は自然治癒も多いですが、治療も有効率が高い時期です。しかし、8歳頃からは吃音が治りにくくなると言われていて、これ以降、専門家の治療によらずに、自然に、あるいは本人の努力で治る人は、半分位だと言われています。

治りやすい幼児期に治らなくても、その後も(大人になっても)、いつでも治療を受けて改善することは可能です。一方、小学校以降では、治療は本人がその気になって練習などをしないとできないので、周囲の希望だけでは治療はできません。

学校生活や職場で不都合があるとか、精神的に吃音が悪い影響を与えているようであれば、治療を早目に始めることも選択肢になります。

吃音のせいでからかいやいじめ、差別がある場合は、治療とは別に、周囲に対する働きかけ(環境調整)が必要になります(次ページ以降を参照)。

※ 幼児期の治療時期の考え方の明確化と、8歳以降の自然治癒、環境調整について追記しました。(2020年1月、森)