第7回 お子さんに沢山話しかけていますか?
メールマガジン第7号

お子さんに沢山話しかけていますか?

配信年月:2017年4月

保育の専門家からも「子どもに沢山話しかけて下さい」と言われることがありませんか。なぜ、沢山話しかけるのが良いのか、また、具体的にはどのように話しかけるのか、について考えてみたいと思います。

1. なぜ沢山話しかけるのが良いのでしょうか

沢山のことばを聞くことで子どものことばは育つのでしょうか。「子どもは環境から沢山のことばを取り入れることで、言語能力を発展させていく」ことを支持する最新の研究が発表されています。マサチューセッツ工科大学のLevy教授が率いるグループは、2歳くらいの子どもが文法機能を持つことば(英語で、名詞の前に「a」や「the」などを付けた単語)をどれくらい使用するかについて、約3年間の変化を分析しました。子ども達には文法の知識がなくても、大人が使う文法を使用しており、その割合は発達に伴い変化していました。このことから、子どもは周囲のことばを聞きながら、大人と同様の表現を使って育っていることが分かっています。

この結果にそって考えると、常に沢山のことばを聞いて育つのは、子どもの言語獲得にとって大切であることが分かります。やはり、普段から沢山のことばかけをすることが重要なのですね。

2. どのように話しかけるのが良いのでしょうか

既に「充分なお子さんへの話しかけ」を実践なさっている方も多くいらっしゃると思います。その反対に、「子どもに沢山話しかけるのは苦手で…、」という方もいらっしゃるでしょう。まずはお子さんの行動や感情に注意してそれを言葉にしてみたらどうでしょうか。お子さんの感情について代弁してあげることについては、第1回「3歳のイヤイヤ」でも紹介しました。その他、「あれ~?くつした反対にはいちゃったね~!(笑)」「もう1回!」「はい、はけました~。」など、日常生活で世話をしながら意識的に丁寧に話しかけることも大切です。日本語に特有でオノマトペと呼ばれている擬態語・擬音語(ピョンピョン,ゴロゴロゴロ~など)をリズムよく混ぜたり、体も一緒に動かしながら話しかけると喜んでお話に耳を傾けてくれると思います。

3.どんなことばを聞かせると良いのでしょうか

言語発達に関わる分野では、子どものことばより少しレベルが上のことばかけするのが良いと言われています。既に実践なさっている方は、お子さんのことばの発達に有効な手助けができていると思われますので、続けてみて下さい。難しいと思われる場合は、お子さんのことばをよく聞いてみて下さい。例えば、「(おもちゃをかしてあげていたのに…)○○くん、ぼくのおもちゃ、もってこなかったの~!」というお子さんのことばに対しては「そうか~。○○くんが、A(子どもの名前)のおもちゃをかえしてくれなかったのね~。」という具合に、少しだけ大人らしい表現に言い換えて返してみます。お子さんは、親のことばを聞いて、こういう風に言えば良いのか、と取り入れはじめるでしょう。これが行き過ぎると、お子さんにとってはハードルが高くなってしまいます。今のお子さんの話し方より少しだけ上で、ということを心がけてみて下さい。最初の話し(「2」の部分)に戻りますが、お子さんは聞いたことばを自分でも言ってみて、間違えたりしながら、正しい言い方を身につけていっていると考えられます。ぜひ、実践してみて下さい。

 

4. 参考図書

  1. Meylan,S.C., Frank, M.C., Roy, B.C., & Levy, R. : The Emergence of an Abstract Grammatical Category in Children’s Early Speech. Psychological Science, 28(2), 181-192. 2017.
  2. 中川信子.健診とことばの相談‐1歳6ヶ月児健診と3歳児健診を中心に.1992.ぶどう社.

文責:宮本昌子(筑波大学・分担研究者)

AMED研究「発達性吃音の最新療治法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」
 研究代表 国立障害者リハビリテーションセンター 森 浩一

 

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