第6回 こどもと向き合う時間
メールマガジン第6号

こどもと向き合う時間

配信年月:2017年3月

1. 向き合うことの意味

今、みなさまは、日々お子さんと向き合う時間がどのくらいあるでしょうか。お仕事をなさっていて、一日に短時間しか一緒に過ごせない方も、ほぼ一日中一緒に過ごしている方も、「向き合う」時間はどれくらいありますか?
ここで言っている「向き合う」とは、その他の作業を全てやめて、文字通り子どもの方を向いて、二人で(1:1で)一緒に遊んだり、絵本の読み聞かせをしたりして、邪魔されずに二人だけで過ごす時間を作ることです。忙しい日々の中、特に兄弟姉妹がいたりすると、一人ずつの子どもと1:1で過ごす状況を作るのは難しいのですが、毎日少しの時間だけでも向き合う時間を作ることが、子どもの育ちを大きく支えると言われています。どの程度の時間が必要かは、その子の置かれている状況や理解力・感じ方によっても違いますので、子どもが満足する様子を見ながら、ということになりますから、子どもによって大きく異なります。しかし、一般的には、例えば5分〜10分程度を多くの臨床家が勧めています(子どもが別のことをしたそうになったら長過ぎるというしるしかもしれません)。
前回のメルマガ(「絵本」をテーマ)で、お父さんお母さんが絵本を読んであげることは、子どもに「自分が大切にされている」ことを実感させると書きました。このような時間を毎日持つことは、子どもに「大事にされている」感覚を生じさせるのです。

 

2. 「大事にされている」感覚のもつ力

では、なぜ「大事にされている」という感覚が、子どもの育ちを支えるのでしょうか。この「大事にされている」感覚は、「自己肯定感(自分は大切な存在である)」という感覚を育てます。そしてそれは、生きるエネルギーとなります。例えば、日々の生活の中で出会う、新しいもの・人・場所・出来事などに対し、積極的に関わり学習していくための基礎的な力となるのです。逆に、指示が先にあり、その指示に従う経験が多くなりすぎると、子どもは「大事にされている」と感じられなくなり、積極的にものごとに関わっていくことが難しくなります。3歳という主張が強くなる時期、指示をしたくなる場面が増えると思いますが、一日に短い時間でも、子ども中心で過ごす「向き合う」時間を作ってみてはいかがでしょうか。必ず、子どもの生きる力となります。

 

3. 吃音(どもり)の豆知識(こんなとき相談)

「吃音(きつおん)」、いわゆる「どもり」は、ことばが急速に発達する2〜4歳の時期に多く見られる話しことばの特徴です。吃音の症状には波があると言われています。つっかえが多く話しにくそうな様子が一時期見られても、ある時期には全くつっかえがなくなることがあります。そのまま症状が消えてしまうこともあれば、またしばらくするとつっかえが現れてくることもあります。つっかえが何度か現れる場合でも、お子さんの成長とともに自然と症状が軽くなってくるようであれば問題ありません。幼児期の吃音は自然に治ることが多いと言われていますが、話すときに苦しそうな様子が見られるようになってきた場合は、ご相談いただくといいと思います。

(2022年8月2日追記)相談先としては、各都道府県にある言語聴覚士会に問い合わせていただくのがいいと思われます。言語聴覚士会の連絡先は、日本言語聴覚士協会の都道府県士会一覧から住んでおられる地域のリンクを辿ってHPからお問い合わせください。他の相談先については、本サイトにある幼児吃音臨床ガイドラインの添付資料4『お子さんがどもっていると感じたら』 家族にできるお子さんへのサボートについての4ページの最後にある「* 吃音の専門家に相談したい場合」をご覧になってください。

 

4. 参考図書

  1. サリー・ウォード著. 塩見稔幸監修.槙朝子訳.0~4歳わが子の発達に合わせた「語りかけ育児」. 2001. 小学館.
  2. 菊池良和.子どもの吃音ママ応援book.2016.学苑社
  3. E. Kelman & A. Nicholas “Practical Intervention for Early Childhood Stammering: Palin PCI Approach.” Speechmark, 2008. (専門家向けの英語の本です)

文責:森浩一(研究代表者)、酒井奈緒美(研究分担者):国立障害者リハビリテーションセンター

AMED研究「発達性吃音の最新療治法の開発と実践に基づいたガイドライン作成」
 研究代表 国立障害者リハビリテーションセンター 森 浩一

 

<前の配信> <メルマガ一覧に戻る> <次の配信>