呼吸器疾患領域の細胞診は腫瘍性病変の良悪判定や感染性微生物の検出、間質性肺疾患の活動性の評価など、多岐にわたり利用される有用な診断方法である。腫瘍性疾患の診断では、各組織型の細胞像を肉眼像と対比することにより、細胞診断の精度向上が期待される。
では、肺がんの肉眼像はどのように分類されているのであろうか。肺以外の多くの臓器では、各臓器の癌取扱い規約中に肉眼分類が項目として挙げられている。しかし、肺癌取扱い規約では病理に関する項目は組織分類と細胞診のみで肉眼分類は見あたらず、手術記載においても腫瘍割面の性状について記載する項目は見あたらない。種々の理由があるものと思われるが、肺癌の組織像は多彩であり、発生部によっても様々な形態像があることから、肉眼分類が作成されていない可能性がある。そこでこのコラムでは中枢性病変と末梢性病変に分けて、肺癌の肉眼像を検討していきたい。
中枢性病変の肉眼像は気管支鏡所見を基本としうる。中枢性非早期肺癌では粘膜型、粘膜下型、壁外型に分類され、粘膜型は更に肥厚型、結節型、ポリープ型に細分類される。粘膜型は真の中枢発生腫瘍を表し、粘膜下型や壁外型は末梢発生病変の中枢進展像を表す。粘膜型の多くは中心型(肺門型)扁平上皮癌である。気管支腺型腫瘍やカルチノイドはポリープ型になりやすい。肺門部小細胞癌はびまん浸潤型や腫瘤型を取りやすい。
末梢性病変の肉眼像はCT画像を基本としうる。1990年代以降、呼吸器領域では画像診断の発達が顕著であり、特にCTの発達にはめざましいものがある。CT画像上、腫瘍を大別すると、純粋なすりガラス状陰影(GGO)、充実成分を含むGGO、GGOのない充実性陰影からなる。GGOの部分は通常、肉眼的に灰白色調で気腔が観察される領域に一致し、置換増殖型腺癌を示す頻度が高い。充実性陰影を示す腫瘍は置換増殖型腺癌以外の腫瘍の可能性が考えられる。充実型となる各組織型の肉眼的特徴像を挙げると、末梢型扁平上皮癌では胸膜の平たい陥凹像が認められ、胸膜の肥厚を伴う。大細胞癌は典型像ではほぼ球形で、境界明瞭、凹凸は少なく、割面は膨隆性である。小細胞癌は境界の鮮明さをやや欠き、割面は象牙色、半透明で柔らかく、髄様で、みずみずしい外観を呈する。肉眼的に壊死は目立たない。大細胞内分泌癌は割面膨隆性で、黄色の点状病変が目立ちこれらは壊死巣を表す。
その他、日常の業務に役立つように肉眼像が細胞所見判読の補助となる症例を上げ、解説していきたい。
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