放射線治療科の紹介


1.ごあいさつ

 放射線治療科は、さまざまな腫瘍に対する放射線治療を担当している診療科です。放射線治療とは、エックス線、電子線、ガンマ線などの放射線を用いて、がんを安全かつ効果的に治療する方法です。放射線は、がん細胞内の遺伝子(DNA)にダメージを与え、がん細胞を壊します。放射線によって、正常細胞も同様にダメージを受けますが、がん細胞とは異なり自分自身で修復することができます。放射線治療によって、がんを治したり、がんの増大による痛みなどの症状を緩和したりします。

 がんの治療法には、手術・化学療法(抗がん剤)と放射線治療があります。放射線治療の特徴は、早期から進行の幅広いがんにおいてさまざまな目的で用いられることです。早期がんでは単独で根治目的に、進行がんでは疼痛などの症状改善目的に利用され効果を上げています。放射線治療を活用して最善のがん治療を提供するのが、私たち放射線腫瘍医です。肺がんは放射線治療を施行するがんの中で、最も多い腫瘍の一つです。肺がんの治療には、手術・化学療法・放射線治療があり、それらを単独あるいはうまく組み合わせることにより、個々の患者さんに最も適した治療を選択することが必要です。呼吸器グループでは、毎週キャンサーボードを行い、活発に意見を出し合い、十分に討論して患者さんの治療方針を検討しています。私たちも肺がん診療の専門家として、放射線腫瘍医の立場から積極的に意見を述べています。


2.当科の特色

(1)あらゆる種類の放射線治療が可能

 神奈川県立がんセンターの放射線治療部門は、光子線治療部門と重粒子線治療部門を有しています。光子線治療では最も一般的な放射線治療、X線治療を担当し、重粒子線治療部門では、炭素イオンによる重粒子線治療を担当しています。近年の放射線治療の進歩、機器の高精度化とコンピューターの高速化にはめざましく、放射線治療科では、肺がんに対する体幹部定位放射線治療(SRBT)や強度変調放射線治療(IMRT)などの高精度X線治療に加え、重粒子線治療を行っています。光子線治療部門には4台の放射線治療装置が設置され、平成27年度からは重粒子線治療施設i-ROCK(Ion-beam Radiation Oncology Center in Kanagawa)が稼働し、重粒子線治療を開始しています。

i-ROCKのイメージ図

(2)がんセンター併設型重粒子線治療

 主に重粒子線治療と呼ばれる炭素イオン線治療は、従来の放射線治療に対して、優れた線量集中性と強い生物効果を持っています。その特性を生かすことによって、従来の放射線治療と比べ、より低侵襲で、より局所効果の強い治療を行うことができます。世界の重粒子線治療施設の半数以上が日本にあり、日本が世界を牽引している医療技術です。現在は早期肺がんに対してのみの治療ですが、局所進行肺がんに対しても導入を予定しています。高精度X線治療と重粒子線治療を合わせた放射線腫瘍センターとして機能することで、個々の患者さんに最も適した放射線治療を提供することができます。

放射線治療の画像

(3)国内有数の治療経験

 令和元年度はX線治療と重粒子線治療合わせ、約2,000名の新規治療を行いました。神奈川県のみならず日本でも最大規模の放射線治療施設です。早期肺がんに対する重粒子線治療、SBRTから、局所進行肺がんに対するIMRT、進行期での緩和照射まで幅広く対応しています。最適なタイミングで、最適な放射線治療を提供できるよう、各診療科と連携して診療に取り組んでいます。

(4)安全を提供する放射線治療チーム

 放射線治療は近年めざましい技術的進歩を見せています。がんに対しより多く、周囲の正常臓器へはより少なく放射線を照射する高精度化を可能としました。一方、放射線治療の高度化、細分化、複雑化をもたらしました。安全な治療を提供するためには、機器の管理や品質保証がますます重要になってきています。放射線腫瘍医や放射線治療専門技師、医学物理士、品質管理士など、放射線治療を専門とするエキスパートが数多く働いています。看護師や事務員も含めて放射線治療チームとして、日々カンファレンスを行い、安心して放射線治療を受けていただけるように努めています。

放射線腫瘍医

放射線腫瘍医は、放射線治療全体を計画・管理する医師です。他のスタッフと共に、治療計画をスケジュールし、実際の治療が正確に行われるかを確認します。治療期間中および治療終了後も定期的に診察をして、治療効果や副作用を評価し、必要に応じた処置を行います。

放射線治療技師

治療方針に従い、放射線腫瘍医と共に治療計画を作成、治療計画に基づいた放射線治療とその記録を担当します。また、計画された治療を正確に行うために、治療機器の保守・点検を行います。

医学物理士

より専門的な知識を用いて、新しい治療を研究します。また、放射線治療システム全体の品質管理を行います。

放射線治療看護師

治療が順調に進むように、治療期間中・治療後も患者さんやご家族の相談にのり、副作用や生活上の注意点について説明します。どのようなことでも気軽にご相談ください。

放射線治療関連の有資格者

放射線治療専門医:加藤弘之(医学博士)、吉田大作(医学博士)、芹澤慈子(医学博士)、溝口信貴、高草木陽介(医学博士)

医学物理士:蓑原伸一(重粒子)、草野陽介(重粒子)、吉野慎一、楠輝文、江面崇智、塩入憲二、高山佳樹、井村航

放射線治療品質管理士:楠輝文、江面崇智、塩入憲二、高橋友、青木麻美

放射線治療専門技師:村田智津、伊藤和正、高橋友、吉野慎一、鴇矢祐治、青木麻美


リンク
JASTRO https://www.jastro.or.jp/customer/


〒241-8515
神奈川県横浜市旭区中尾2-3-2
TEL:045-520-2210(初診受付)
TEL:045-520-2211(問い合わせなど)
神奈川県立がんセンター
呼吸器グループ

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