食道がんの治療



    食道は咽頭と胃をつなぐ細長い臓器であり、そこに発生する悪性腫瘍の代表が食道がんです。食道がんの治療には、大きく分けて手術、薬物療法(化学療法)、放射線治療、内視鏡治療の4つがあり、それぞれの治療法の特徴を生かしながら、単独またはそれらを組み合わせた治療(集学的治療)を行います。治療方法は主に病期(ステージ)にて決まりますが、患者さんの希望や体の状態を考慮したうえで決定されます。


1.外科手術

    食道がんのステージⅠ~Ⅲで、この外科手術が行われる可能性があります。手術では、がんを含む食道と胃の一部を切除し、同時に定められた領域のリンパ節を一緒に切除します。そしてこのように食道を切除した場合は、食事が通る道を再建しなければならず、多くは胃を細長く伸ばした管(胃管)を作成、再建に必要な道をつくります。

    また食道がんの手術に伴う合併症には、肺炎、縫合不全(つなぎ目のほころび)、嗄声させい(声のかすれ)をはじめ、さまざまなものがあげられます。これらの合併症が死につながる確率は1.8%といわれており、他の消化管手術の中でも難しい手術とされています。当科では、食道がん治療のエキスパート(食道外科専門医)が、現時点で最良の治療で推奨される治療(標準治療)を、合併症の少ない緻密な手技で行うことを常に念頭におき、高い生存率を得ることを目標としています。

胸腔鏡下手術

    胸腔鏡下手術は、胸部に数ヵ所の小さな穴をあけ、そこから胸腔内に圧をかけた二酸化炭素を注入して肺を一時的に縮め、そこに小型のカメラ、鉗子かんし(手術用の器具)などを入れて行う手術です。カメラから得られる映像が画面に大きく映し出され、医師はそれを見ながら緻密な手術を行うことができます。従来の手術に比べて傷口が小さい手術とされ、比較的早期の食道がんに対してこの方法を用いた手術を行っています。


2.薬物療法(化学療法)

    がん細胞を縮小させる効果のある薬物を用いた治療であり、全身に広がったがん細胞に作用させることが目的です。細胞障害性の薬(抗がん剤)により行われる治療が主ですが、自分の免疫によりがん細胞を攻撃する薬(免疫チェックポイント阻害剤)を用いた免疫治療などが登場してきており、今後の治療開発が期待されています。

術前補助化学療法

    現在、ステージⅡ、Ⅲと診断された食道がんの術前に標準治療(効果・安全性の面で最も優れており、推奨される治療)として用いられています。現在は5-FUとシスプラチンという2種類の薬剤が用いられていますが、場合によっては更に別の薬剤を追加する治療もあります。

術後補助化学治療

    食道がん術後に、再発予防を目的とした化学療法を行う場合があります。この場合も5-FUとシスプラチンという薬剤が用いられています。

切除不能進行・再発食道がんに対する化学療法

    一般的に手術で切除不可能な患者さんに行われるのが化学療法や放射線治療、もしくはそれらを組みわせた化学放射線療法です。食道がんでは使用できる薬剤の種類が少なく、世界で臨床試験/治験が実施されています。その結果により将来使用できる薬剤の種類が増えていくことが期待されています。

一次治療

    現在、食道がんの化学療法にて最も用いられている治療方法は、5-FUとシスプラチンによる併用療法です。その治療にドセタキセルという抗がん剤を加えた3剤併用療法が行われることもあります。

二次治療

    5-FUとシスプラチンによる化学療法の効果がなくなった場合には、薬剤をドセタキセル単剤、もしくはパクリタキセル単剤に替えることにより、腫瘍の増殖を抑えることができる可能性があります。ただし二次治療としての標準治療は確立されておらず、これ以降の薬物療法は患者さんの全身状態と相談しながら、使用できる薬剤を適宜使用していくこととなります。


3.放射線治療

    外科手術と同様に、がんのある部位に対する局所治療であり、食道や胃、または喉頭(声帯)の機能を温存することが可能です。がんを治すことを目的とした治療(根治照射)とがんによる症状を抑えるための治療(緩和照射)の2種類があります。通常は連日のX線照射が行われ、最大6週間ほどの治療期間となります。また根治照射では化学療法と併用することにより効果の増強が期待できます。


4.化学放射線療法

    手術を希望されない患者さん、もしくは手術が不可能なステージの食道がんに対し、化学療法と放射線治療を組み合わせた治療を行うことがあります。ステージⅣaの標準治療として、化学療法と放射線治療を同時に行います。


5.内視鏡治療

    内視鏡治療は、口から挿入した内視鏡を用いて食道の内側からがんを切除する方法です。この方法が適応される対象は、リンパ節転移のないステージ0の早期食道がんです。切除された組織を顕微鏡で詳細に調べ、その結果治療後にがんが残っている可能性や、リンパ節転移の可能性が高いと判断された場合は、手術や化学放射線療法などを追加して行うこともあります。


6.臨床試験/治験治療について

    当科では世界的に重要な治験治療や臨床試験を実施・分担しています。治験治療や臨床試験に参加するには、事前にステージ・病状・体調等の審査を通過する必要があり、すべての患者さんが参加できるわけではありません。ただし患者さんによっては非常に有効であることも少なくありませんので、どうぞお尋ねください。また担当医からご案内する場合もあります。

なお、現在登録中の臨床試験/治験治療については、「臨床試験」をご覧ください。


7.ゲノム医療

    最先端医療のゲノム医療では、標準治療が終了した患者さんのがん組織から抽出した遺伝子を詳細に調べ、効果のある薬を探します。ゲノム医療は2019年より保険診療で受けられるようになり、高額療養制度が利用できます。当院はその拠点病院になっており、「ゲノム医療」も当院で受けられます。

ゲノム医療における遺伝子パネル検査の種類と費用
OncoGuideTM NCCオンコパネル システム
(遺伝子数:114、国内検査、採血あり)
FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル
(遺伝子数:324 、国外検査、採血なし)

保険診療:3割負担で168,000円(高額療養制度が利用できます)


8.その他

    現在、当センターでは食道がんに対する重粒子線治開始にむけて準備を行っています。従来の放射線治療よりもピンポイントでがんに対する治療を行うことができるとされています。治療が開始となりましたら、また詳細を発表させていただく予定です。

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