MENU

  • 遺伝性白質疾患
  • 先天性大脳白質形成不全症

治療ガイドライン

担当;小坂 仁

先天性白質形成不全症では、現在のところ根本的な治療がないため、各症状に対応した治療を行う。

1. 精神運動発達遅滞

知的障害に、運動障害を伴うことからもっとも罹患率の多い、脳性麻痺児と同様の療育を受けることが実際的である。保健所あるいは診断を行った病院より、療育センターや病院のリハビリテーション科を紹介する。聴性脳幹反応が異常であるために、聴覚異常と判定される場合があるが、通常聴力に異常は認めない。言語理解まで獲得された場合、表出性言語能力よりも受容性言語理解がまさっている。脳性麻痺との違いは、発達退行が脳性麻痺よりもはっきりと現れる点にある。

2. てんかん

てんかんが、先天性白質形成不全の何割にみられるのか、系統的な報告はないが、恐らく10-20%の間と推定される。治療は発作のタイプにより、部分発作にはカルバマゼピン( 5-15 mg/kg, 2X)を第一選択とし、第二次選択薬としてはラモトリジン、トピラマート(4-10 mg/kg, 2X)、ゾニサミド(4-10 mg/kg, 2X)、バロプロ酸(15-40 mg/kg, 3X)、クロバザム(0.2-1 mg/kg, 2X)等のベンゾジアゼピン系抗痙攣薬を用いる。全般発作には第一選択薬バロプロ酸、フェノバルビタール (2-5 mg/kg, 1-2X)を用い、第二次選択薬としてはラモトリジン、トピラマート、ゾニサミド、クロバザム等のベンゾジアゼピン系抗痙攣薬を用いる。

3. ジストニア

全身性のジストニアに関してはエペリゾン(ミオナール)(1-4mg/kg, 3X), ジアゼパム(0.1-0.3mg/kg, 1-3X)、バクロフェン(リオレサール)(0.1-0.3-0.6mg/kg, 1-3X)、ダントロレンナトリウム(ダントリウム)(0.5mg/kg-3mg/kg, 2-3X)、ジサニジン(テルネリン)(0.05-0.1-0.15mg/kg, 1-3X)などフェノバルビタール(2-5 mg/kg, 1-2X)を用いる。局所性のジストニアでは、ボツリヌス毒素(1-3U/Kg)を用いる(最大3ヶ月毎)。

4. 股関節の痙性脱臼

大腿骨が内転・内旋・屈位になりやすいためにおこる。外転位保持夜間装具が必要となる場合がある。高度例では整形外科的な腸腰筋延長・切離術をおこなう。

5. 呼吸障害・摂食障害

喉頭咽頭機能不全のために、誤嚥性肺炎を起こしやすい。経口摂取が難しい症例では、経胃管あるいは胃瘻からの栄養補給が行われる。筋緊張亢進のために、胃食道逆流を伴う症例では、噴門形成術を併用する。