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市民公開セミナー

第10回先天性大脳白質形成不全症市民公開セミナー報告書

はじめに

平成28年7月17日(日)に第10回第10回先天性大脳白質形成不全症市民公開セミナーが開催された。本セミナーは平成21年から本疾患の研究班の主催で毎年実施しているもので、本疾患の患者さんやそのご家族、患者さんの医療や療育に直接関わる者を主な対象としている。本疾患は稀少性疾患であるため、疾患についての情報を得られる機会が少ないという患者家族の声を契機に始められた。このセミナーは、疾患の特徴や医療・研究の現状を分かりやすく解説する場であるのみならず、本疾患の研究班の成果についても直接患者さんに説明をし、患者さんも疑問を直接専門家に聞くことが出来る場としても機能している。さらに、患者さんとそのご家族が一同に介し、親交を深めることが出来る機会としても重要な役割を担っている。さらに、本セミナーは本疾患の親の会の設立の基盤ともなっている。本年度の開催テーマは「進歩するソフトウェア・ツール」で、特別講師として福岡市立南福岡特別支援学校教諭の福島勇氏を招いた。例年通りの海の日の連休の日曜日の開催が定例化し、一家そろって毎年参加する家族が増えて来ている。

会場

会場は、昨年に引き続き、お台場近くの産業総合技術研究所臨海センターの会議室を利用した。十分な広さと設備を有しており、バギーをいれても余裕があるようなスペース配分で机を並べ、後方にヨガマットを敷き、乳児や疲れた病児を寝転がしてセミナーを聴くことが出来る。隣の別室におむつ交換スペースなどを設置し、こども連れで参加できるように最大限の配慮をしている。

参加者

セミナーに関する周知は、例年通りチラシを作成し、小児神経学会で配布するとともに、親の会を通じて患者会のメンバーに配布して頂いた。また、研究班のウェブサイトにも案内をアップした。その結果、本年度のセミナーでは患児16名を含む18家族59名に加え、遺伝カウンセリングや看護大学の学生、教諭や福祉施設職員などの一般参加者を合わせた65名が参加した。ボランティアの託児補助員24名、研究班員含むその他のスタッフが10名ほどいたので、総勢100名の参加者となった。

運営スタッフ

本年度のセミナーは、昨年度に引き続き、日本医療研究開発機構(AMED)および厚生労働省からの研究費を受けて実施されている2つの研究班(AMED難治性疾患実用化研究 井上班、厚労科研費補助金 小坂班)の共催、会場を提供した産総研の後援で実施された。研究班員も講演を行なった小坂と井上以外に、3名の班員が参加し、患者家族からの様々な質問に対応できるようにした。受付業務などは親の会の方と分業して行なうことで、スムーズに実施することが出来た。

診察

昨年度より本セミナー実施に合わせて、班員の小児神経科医師による診察と相談を実施しており、今回も事前申し込みにより12名の患児の診察を行なった。診察では、研究班で作成した重症度評価尺度を用いて診察を行なった。今回、2度目となる患児もおり、評価尺度の実用性の評価にもつながっている。また、家族にとっても患児の症状に関する疑問についても直接、専門医師に質問し、意見を聞くことが出来る貴重な場となっている。

講演

本年度は、4つの講演を実施した。研究班の班員である小坂および井上の講演は毎回の実施しており、それぞれ疾患に関する基本的な理解に関する講演と主に治療法開発や臨床評価に関する研究の進展についての情報提供を行なっている。今回、小坂は上記に加え、小坂班で整備したウェブサイトに関する情報や小児慢性特定疾病医療費助成および指定難病医療費助成制度など患者に役立つ情報の提供を行なった。一方、井上は研究班で実施されている治療法開発のための基礎研究の紹介とともに、基礎研究の成果として見出されたクルクミンの臨床研究に関する準備状況についても説明した。これらの講演に加え、今回の特別講演として、福岡市南福岡特別支援学校教諭の福島勇氏を3年前に引き続き再招聘し、「本体に触らなくてもスマホやタブレットが使えるテクノロジーの活用」という演題で、近年のIT技術を重症心身障害児の教育や生活の場に活用する最先端のツールの紹介に関する講演を行った。講演終了後には、実演、体験の場を設け、実際に患児が機材を使用した操作を行なうことが出来た。また、産総研の西田佳史氏は「IoTを活用して生活を科学するサテライト・リビングラボ」という表題で、AIを活用したビッグデータ解析によって可能になる生活環境における事故予防プロジェクトに関する講演を行った。最後に昨年から始まっている親の会のメンバーによる患児の紹介が行なわれた。これは、患者家族が自ら、患児の経過の紹介を行なうもので、これらのこどもたちが我々の中心にいるということを明確に認識・共有できる点で意義深い。また、まだ診断から間もない家族にとっては今後のための参考になると好評である。講演のあとに恒例の質問コーナーを実施し、日頃の疑問点などに班員が専門的な立場からアドバイスを行なった。

親の会の総会・意見交換会

親の会からは、昨年に引き続き、患者の親が自分のこどもと病気について、これまでの経緯などについてスライドを用いて、講演形式で発表した。今年は親の会会長による紹介の後、2名の親の会のメンバーが登壇した。この企画は、非常に好評で、発表者のモチベーションを高めるのみならず、聞いている家族も普段の生活の中での工夫や悩みなど、身近な問題に関して共有・共感できる点などが有用と意見が聞かれた。

託児

例年通り、親がセミナーに集中できるようにという配慮から、セミナー中にこどもたちを預かり、会場に隣接する科学未来館に連れ出して遊ぶという託児を実施した。班員の小児神経科医である出口医師をリーダーとして、看護師などの専門職を含むボランティアスタッフにより実施された。

セミナー終了後は、親の会主催で意見交換会が実施された。この意見交換会では、託児に参加したボランティアスタッフも参加交流することで、本セミナーに関わる人的資源が毎年充実していることを実感する。参加者が敷居を低くした交流を持つことが出来るため、セミナーとは別の意味合いで有効な取り組みになっている。

先天性大脳白質形成不全症市民公開セミナーの実施

井上 健
国立精神・神経医療研究センター 神経研究所
疾病研究第二部

出口貴美子
慶應義塾大学医学部 解剖学教室

市民公開セミナーは平成27年7月に東京、同年11月に大阪と2回開催した。東京では、昨年と同様にお台場の産業技術総合研究所の会議室を借りて実施。大阪では大阪大学医学部病院の会議室を借りて開催した。参加家族数は東京20家族、大阪15家族で、両方の開催を合わせた35家族の参加数は、年1回開催であった一昨年までを10家族以上も上回る。また家族以外にも教育・福祉・医療施設から患者の援助者の参加もあり、情報共有のネットワークが患者家族を取り巻く人々にも広がっている。講演は、疾患の理解を深めることと研究の最前線の情報を知ることという毎回希望の多いテーマを主体に主に班員の研究者によって行われた。東京では例年通り、特別講演を実施し、今年は患者組織の国際動向に関して、国立保健医療科学院の児玉知子氏に講演を依頼した。この招待講演を実施することにより、班員以外の臨床家・研究者とのネットワークを拡充している。また、今年からの試みとして、当事者として親の会のメンバーによる講演を実施し、好評を得た。東京での開催時には、例年通り15名ほどの看護師などの専門職を含むボランティアの援助により病児を含むこどもたちを預かり、遊戯に連れ出すことにより、家族が本セミナーへ参加し易い環境を提供するとともに、病児との接する体験を社会に提供する場にもなっている。このセミナーを基盤に産まれた親の会は年々その組織力が向上し、研究班との連携が充実して来ている。本セミナーの機会を利用し、患者家族の協力のもと「臨床応用にむけた治療評価尺度の作成と実効性の検証」が実施された。さらに2016年度に実施を予定している臨床試験への協力を要請し、良好な反応を得ることが出来た。

先天性大脳白質形成不全症市民公開セミナー

先天性大脳白質形成不全症の克服へ向けて~症状と診断、治療をめざした研究の現状と展望~第1回市民公開セミナーは、主催:厚生労働科学研究補助金難治性疾患克服研究事業「先天性大脳白質形成不全症の診断と治療に向けた研究」班 平成21年7月18日, 横浜 で行われました。
引き続き、H22年度も先天性大脳白質形成不全症の患者家族やケアスタッフを対象にした第2回市民公開セミナーを神奈川県立こども医療センターにおいて実施した。昨年度よりも多い、27家族を含む81人の参加者が、北海道から九州まで日本全国より集まりました。昨年度同様に、前半は班員によるセミナー、後半は患者家族によるディスカッションの形式で行なわれました。本年度の特徴として、昨年度のセミナー以降に家族間の自主的なネットワークが構築され、本セミナーに関する情報や、講演内容の希望などがあらかじめ出るなど、家族の主体的な活動が見られました。また、正式に家族会を立ち上げるための具体的な準備に取りかかることが、家族の中で取り決められるなど有意義なセミナーとなりました。

  1. H22セミナー報告書(班員代表、井上 健)
  2. 第2回先天性大脳白質形成不全症公開セミナーを開催して
    (ボランティア代表、認定遺伝カウンセラー 西川智子)
  3. 先天性大脳白質形成不全症市民公開セミナーの実施

H22セミナー報告書

はじめに

先天性大脳白質形成不全症は、非常に希少な遺伝性の難治性疾患であり、患者の家族のみならず、主治医も疾患に関する詳細な情報を持ち合わせていないことが多く、多くの患者家族が、相談相手や疾患に関する話題を共有する他の家族の存在もなく、地域に孤立していると考えられる。また、疾患に関する知識も一般的には入手することが困難であることから、患者の疾患の原因や治療法、ケアの方法や予後、遺伝カウンセリングなどについて、知るための機会がなく、不安の多い生活を送らざるを得ない実情にある。
そこで、我々は本研究班を立ち上げて研究を開始するにあたり、孤立している家族のコミュニティー形成の場として、またこの疾患の医療の現状や研究の進歩の状況について知ることが出来る場として、患者家族やゲアスタッフを対象とした市民公開セミナーを開催することを計画し、昨年平成21年7月18日に、第1回市民公開セミナーを神奈川県立こども医療センターにおいて開催した。この会は、予想を上回る30家族70人に及ぶ参加者で盛会であった。この際に、次年度の開催を希望する声が大きかったため、本年度の研究計画の作成に当たり、第2回の市民公開セミナーを行なうこととした。

準備

年度はじめに、開催日時と場所を決定した。十分な人数の収容が可能であること、気切患者もおり万一の際の医療処置が可能であること、ボランティアスタッフを確保しやすいことなどの要因を考慮し、本年度も昨年度と同じ神奈川県立こども医療センターで開催することとした。また、日時も昨年度同様と同時期の7月17日(土)とした。公開セミナー開催の知らせは、昨年度の会で家族のとりまとめ役にきまった家族代表に送り、さらにチラシを作成して、5月に行なわれた日本小児神経学会総会にて配布した。昨年度と同じ3名(後に4名に変更)の班員による講演内容についても、昨年度のセミナー後のアンケートを参考に、平易でわかりやすい内容にすることを事前確認した。また、家族の代表が取り上げてほしい内容に関するアンケートを行なったので、そのリクエストや諮問にも触れつつ講演を行うこととした。

会場

神奈川県立こども医療センター2階のセミナールーム(約100名収容)をメイン会場とした。講演はビデオ撮影し、これを隣の準備室に設置したテレビモニターで映し、ぐずったり泣いたりして中途でメインルームから出て行かざるを得ない家族も、そちらで子供の面倒を見ながら講演を聴けるように配慮した。また、これとは別にマットを敷いた部屋も用意し、飽きた同胞の子供達が遊べるようにした。これらの部屋にはボランティアスタッフが常駐し、安全に対する配慮も行なった。

構成と実施

当日は、27家族を含む87名の多数の参加者に恵まれた。第1部は、4人の班員による講演を1人約15分の持ち時間で行なった。最初の演者である小坂は、「診断のための検査と医療的ケア」と題し、疾患の概要についてQ&A形式でわかりやすく説明した。次に、高梨が「MRI検査でわかること」として、MRI画像診断の意義について実例をふまえつつ解説した。次に、黒澤が「こどもの健康と遺伝」と題して、遺伝についての考え方について実例を挙げてわかりやすく解説した。最後に、班長の井上が、セミナーの総括をしつつ、昨年度の研究班の成果について、特に実態調査に結果を報告し、合わせて治療法開発の世界の現状について、概要を説明した。 時間が押したこともあり、講演の後、短い休憩を挟んで、家族の懇親会として第2部に移った。第2部では、各家族が自己紹介と、自分が抱える問題について講演者などに質問するという形式で進められた。時間の制限など特別もうけなかったため、予定の時間を遥かに過ぎてしまったが、多くの問題が浮き彫りにされ、非常に有意義であった。問題点として、特記すべき事項として、

  1. 患者が小児病院から内科に移行する成人の時期に、障害者手帳の手続きや、小児慢性疾患受給手続きなど、制度の狭間で医療費の負担増などの問題が生ずる。
  2. 呼吸器あるいは消化器など疾患とは直接関連はないが、疾患のために濃厚な医療を必要とする状況での医療費の負担について、その扱いに地域差がある。
  3. 次子をもうけたいが、その子が罹患する確立は、あるいは保因者になる確立はどうなるのか。 その他にも、体温調節の問題や、股関節脱臼に対する外科的治療法などについての質問があがった。

最後に、家族のとりまとめ役の方から、家族会発足に関する提案があり、これについてのアンケート調査を行った後に、正式に発足の手筈を整える方向に入るとの話があった。合わせて、主催者側からのアンケートも行い、最後に、班長の井上が挨拶を行ない、公開セミナーは終了した。

考察

第1部の講演に関しては、各講演者とも昨年度よりも平易でわかり易い内容であったが、家族からの質問はほとんどなく、やや堅苦しい雰囲気であったのは、次回への反省点の一つである。 質問事項の中では、ケースワーキングに関する問題点が存在することが明らかになった。次回は、ケースワーカーの参加により、制度的な部分に関しての質問に、明確な回答を提供することが出来るようにしたい。 今回の最も大きな収穫は、家族会発足のための具体的な段取りが始まったことであろう。今後、さらに患者家族とのコミュニケーションをとりつつ、患者を取巻く医療環境や相互援助など様々な事柄について、改善していくための援助をしていくことが、本研究班の使命の一つと考えている。

第2回先天性大脳白質形成不全症公開セミナーを開催して

認定遺伝カウンセラー
西川智子

第2回先天性大脳白室形成不全症公開セミナーを、2010年07月17日(土)に神奈川県立こども医療センター講堂で開催し、27家族87人のご家族の参加がありました。これは厚生労働省の難病克服事業の一つであり、研究の推進と治療さらに研究成果の患者家族への還元を目的としています。先天性大脳白室形成不全症の中の多くは、X連鎖性劣性遺伝性疾患で、多くは母親を介して主に男の子に発症する病気です。病気の診断とともに、家族の心理的問題や次のお子さんを考えているご家族にとっては出生前診断への対応、さらに親族に関連する問題などが明らかになり、家族関係の調整や心理社会的問題への対応には専門家の介入が必須です。それとともに神経変性疾患であり介護も生活に密着した問題です。市民公開セミナーは二部構成で、一部は講演4題、二部は意見交換会でした。講演は当センター神経内科小坂医師より「診断のための検査と医療的ケア」、遺伝科黒澤医師より「子どもの健康と遺伝」、亀田メディカルセンター高桑医師より「MRIでわかること」、国立精神・神経医療研究センター井上医師より「先天性大脳白室形成不全症の全国調査について」お話がありました。第2部は家族間交流を目的とした意見交換会をおこないました。一部二部とも質問や意見交流が活発で予定時間を大幅に超過しました。第2部の家族交流会では疾患や遺伝性に関する医療者や教育関係者などの無理解や出生前診断に関する問題、家族や母親自身の葛藤、ごきょうだいの問題、青年期にさしかかった患者さんを取り巻く環境など多くの意見が聞かれました。それぞれのご家族で抱えている問題は違っていたり共通していたり、これから起こってくるであろう問題であったり、すでに解決された問題であったりと千差万別でしたがとても有意義な意見交換が行われました。ご家族の反応は良好で再会を約束して閉会しました。また関東圏内で勤務する4名の認定遺伝カウンセラーと遺伝カウンセリングコースの学生も参加させていただき、先天性大脳白室形成不全症の患者さんとご家族の実態および課題を再認識するよい機会となりました。