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遺伝性白質疾患ガイドライン

18q欠失症候群
Chromosome 18q deletion syndrome(OMIM.#601808)

疾患説明:18番染色体長腕q21からqterの欠失を原因とする染色体異常症。欠失領域18q23にあるMelin basic protein(MBP)遺伝子の欠失が18q欠失症候群にみられる先天性大脳白質形成不全の原因とされる。病理的にはdemyelinationに近い。難聴および大脳白質の異常のほかに、染色体欠失に由来する症状を伴う。

治療:対症療法と療育が中心となる。

1. 概要

定義

18番染色体長腕q21からqterの欠失を原因とする染色体異常症。最初に記載あるのは1964年。欠失によるハプロ不全が原因で先天性大脳白質形成不全症をもたらすMBPは、18q23(74.69-74.84Mb from 18pter)にマップされる。したがって、18q欠失症候群でも、欠失領域にMBPを含まない18qter領域の欠失は先天性大脳白質形成不全症を呈さない。

疫学

現在まで、300例以上が報告されている。約40000出生に1例と考えられている。男女比は0.71。

病因・病態

18qの欠失領域遺伝子のハプロ不全が臨床症状の原因となる。欠失領域が大きくなればより重度となる。18q21.2にはPitt-Hpkins症候群責任遺伝子TCF4があるので、Pitt-Hopkinsと似た顔貌を呈する。ミエリン形成不全は、共通する所見で、MBPのハプロ不全が原因と考えられている(Gay et a., 1997)。しかし、この場合のミエリン形成不全と精神遅滞の関連ははっきりしてはいない。MBP以外の欠失領域と症状の明確な相関は乏しく、同一家系内で臨床症状の幅が大きい家系の報告もある。てんかんを合併する例もある。

18q欠失症候群はdemyelinationの可能が指摘されている。Gliosisが進んでいることが指摘されているので、dysmyelinationというよりdemyelinationというべきかもしれない(Tanaka et al., 2012)。Tada & Talanashi(2014)やTassanoら(2016)も同様に、gliosisを指摘している。MBPのハプロ不全と難聴の相関は指摘されている。しかし、実際にMBPのnonsense変異によるtruncating variantは報告ないことから、本当にdemyelinationに直接かかわるか不明である。

臨床症状

顔貌:顔面正中の低形成、人中は目立たず、下口唇は反転し、上口唇は薄い。目は奥まった印象がある。4分の1以上で先天性心疾患を認める。側弯・後弯などの椎骨異常もある。第5指内わん、内反足、外反股などの骨格異常も伴う。男児の25%で尿道下裂をみとめ、男女両方合わせ、約10%で口唇口蓋裂がある。感音性・あるいは混合難聴がある。様々な眼科的異常もある。甲状腺機能低下症も起こる。精神遅滞は一般に重度。行動面では自閉症スペクトラムの要素が高い。

検査・画像所見

染色体G分染法で18q21より長腕末端部の欠失を確認する。ただし、18qter領域サブテロメア領域でMBPを含まない場合には、大脳白質異常をみない。微細欠失では、マイクロアレイ染色体検査で確認する。いずれにしても細胞遺伝学的に18q23のMBPを含む領域が欠失していることを確認する。頭部MRIでミエリン形成不全であることを証明する。

2. 治療・ケア

対症療法が中心。早期より細胞遺伝学的に診断を確定することは重要。乳幼児期には、親の需要を促し、定期医療管理に乗せる。療育リハビリ参加も重要。聴覚検診は注意する。先天性心疾患や口唇口蓋裂を合併する場合には、それらの治療を優先する。就学は環境や本人の能力なども考慮する。

3. 食事・ケア

口唇口蓋裂を合併する場合には、摂食訓練なども考慮する。

4. 予後

長期的予後は、合併症の内容による。正確な情報に乏しいが、合併症が比較的安定して管理されている場合には、生命予後は必ずしも悪くない。

5.鑑別診断

多くの染色体異常症。特に顔貌はダウン症候群と間違えられることもある。

その他のミエリン形成不全症

5. 最近のトピック

特になし。

引用文献(いずれもエビデンスレベル6)
  • Gay CT, Hardies LJ, Rauch RA, Lancaster JL, Plaetke R, DuPont BR, Cody JD, Cornell JE, Herndon RC, Ghidoni PD, Schiff JM, Kaye CI, Leach RJ, Fox PT. Magnetic resonance imaging demonstrates incomplete myelination in 18q- syndrome: evidence for myelin basic protein haploinsufficiency. Am J Med Genet. 1997 Jul 25;74(4):422-31
  • Tada H, Takanashi J. MR spectroscopy in 18q(-) syndrome suggesting other than hypomyelination. Brain Dev. 2014 Jan;36(1):57-60.
  • Tanaka R, Iwasaki N, Hayashi M, Nakayama J, Ohto T, Takahashi M, Numano
    T, Homma K, Hamano K, Sumazaki R. Abnormal brain MRI signal in 18q syndrome
    not due to dysmyelination. Brain Dev. 2012;34:234–7.
  • Tassano E, Severino M, Rosina S, Papa R, Tortora D, Gimelli G, Cuoco C, Picco P. Interstitial de novo 18q22.3q23 deletion: clinical, neuroradiological and molecular characterization of a new case and review of the literature. Mol Cytogenet. 2016 Oct 10;9:78.
文献検索

PubMed

  • “18q deletion” AND “MBP”
    19件
  • “MBP” AND “leukodystrophy”
    15件