MENU

  • 遺伝性白質疾患
  • 先天性大脳白質形成不全症

遺伝性白質疾患ガイドライン

遺伝性白質疾患はどのように遺伝しますか?

概要

遺伝性白質疾患の遺伝形式には常染色体優性遺伝、常染色体劣性遺伝、X連鎖劣性遺伝の3種類があるため、家系内のリスクを勘案する遺伝カウンセリングにおいては、発端者の正確な診断が必要になる。

分類

遺伝性白質疾患を遺伝形式で分類すると以下のとおりとなる。

X連鎖劣性遺伝 遺伝子座 原因遺伝子
ペリツェウエス・メルツバッハ病 Xq22 PLP1
MCT8異常症(AHDS) Xq13.2 SLC16A2
常染色体劣性遺伝 遺伝子座 原因遺伝子
ペリツェウエス・メルツバッハ様病1 1q42.13 GJC2
失調、歯牙低形成を伴う髄鞘形成不全症 10q22.3 POLR3A
小脳萎縮と脳梁低形成を伴うび漫性大脳白質不全症 12q23.3 POLR3B
先天性白内障を伴う髄鞘形成不全症 7p15.3 FAM126A
Hsp60シャペロン病 2q33.1 HSPD1
サラ病 6q13 SLC17A5
常染色体優性遺伝 遺伝子座 原因遺伝子
基底核および小脳萎縮を伴う髄鞘形成不全症 19p13.3 TUBB4A
脱髄型末梢神経炎、中枢性髄鞘形成不全症、ワーデンバーグ症候群 22q13 SOX10
その他 遺伝子座 原因遺伝子
18q欠失症候群 18q22 MBP

X連鎖劣性遺伝

X連鎖劣性遺伝を示す疾患においては、基本的に男性のみ発症する。多くの場合母親が保因者である。保因者女性から生まれる男性2人にひとり(50%)で発症する。保因者女性から生まれる女性2人にひとり(50%)は母親同様保因者となる。症状のある男性の次の世代においては、Y染色体を受け継ぐ男性には遺伝しないが、X染色体を受け継ぐ女性は100%保因者となる。

発端者がX連鎖劣性遺伝性疾患であることが明らかになった場合、リスクを勘案するために母親の保因者診断を行うことがある。発端者の同胞女性も同様である。ただし、未成年者においては、親の同意のみで行うべきではなく、成年期に達して自ら保因者診断を受けるかどうか判断するまで行うべきではない。

常染色体劣性遺伝

多くの場合両親がともに保因者である。血族婚の場合、ホモ接合変異を示すことが予測されるが、そうでない場合、多くは複合ヘテロを示す。発端者で変異が見つかっても、両親からそれぞれ受け継いでいることが確認されなければ診断が確定したことにはならない。両親がともに保因者の場合、こども4人にひとり(25%)が発症する。

常染色体優性遺伝

一般的に常染色体優性遺伝では、症状が親から子へ50%の割合で遺伝する。ただし、ここに挙げた遺伝性白質疾患はどちらかと言えば症状が重篤であり、症状を示す患者が次の世代の子をもうける可能性は低い。そのため、多くは突然変異で生じている。TUBB4A変異は遺伝性ジストニアと関連することもあるが、この場合、親から子へ変異とともに疾患も優性遺伝することとなる。

染色体異常

18q欠失症候群は、18番染色体長腕末端の欠失による。その多くは突然変異で生じる。ただ、親世代の18番染色体長腕に絡む均衡転座に由来する不均衡転座の場合、同胞内で反復して生じる可能性がある。18q欠失症候群を認めた場合、両親の一方が均衡転座保因者でないかどうか、確認しておくことが勧められる。

遺伝カウンセリング

遺伝カウンセリングは遺伝性疾患のリスクを勘案したり、それに基づいた人生の計画を立てるための選択を行う場合に、適切な情報提供を受けて利益と不利益を正しく理解した上で、遺伝学的検査を受けるべきかを決定し、その結果を生かしていくためのプロセスである。遺伝性白質疾患においては遺伝学的検査によって正しい診断が得られることが遺伝カウンセリングにおいて重要であるが、このことにより血縁者の遺伝的リスクも明らかになることがある。検査の結果は生涯変化することがないため、事前に遺伝学的検査の利益と不利益を十分理解しておくことが重要である。

家系内において反復リスクがある場合には、出生前診断という手段がとられる場合もあるため、倫理的な配慮も必要である。本邦においては、生命予後に重大な影響がある疾患に限り認められるという見解があるが、同じ遺伝性白質疾患であっても遺伝子変異によっては予後に差があるため、個々に判断する必要がある。

文献[1, 2]

(末尾に記載のないものは全てエビデンスレベル6)

  • Vanderver A, Tonduti D, Schiffmann R, Schmidt J, van der Knaap MS. Leukodystrophy Overview. 1993.
  • Numata Y, Gotoh L, Iwaki A, Kurosawa K, Takanashi J, Deguchi K, et al. Epidemiological, clinical, and genetic landscapes of hypomyelinating leukodystrophies. J Neurol 2014;261:752-8.
文献検索

PubMed

  • ("genetic counselling"[All Fields] OR "genetic counseling"[MeSH Terms] OR ("genetic"[All Fields] AND "counseling"[All Fields]) OR "genetic counseling"[All Fields]) AND (hypomyelinating[All Fields] AND leukodystrophies[All Fields])3件
  • ("prenatal diagnosis"[MeSH Terms] OR ("prenatal"[All Fields] AND "diagnosis"[All Fields]) OR "prenatal diagnosis"[All Fields]) AND (hypomyelinating[All Fields] AND leukodystrophies[All Fields])1件