4. パジェット病(Paget病)
主に汗を産生する汗器官由来の細胞が癌化する表皮内癌の一種です。パジェット細胞という癌細胞が増殖しますが、最初は表皮の中だけに留まっており、真皮には及んでいない状態です。進行して真皮まで腫瘍細胞が浸潤したのがパジェット癌ですが、一般にはパジェット癌も含めてパジェット病と呼ぶこともしばしばです。
原因
はっきりした原因は不明です。乳頭や乳輪に生じる乳房パジェット病と、陰部や腋などに生じる乳房外パジェット病とがあります。乳房パジェット病は乳癌と同じように扱われ、本項では乳房外パジェット病をパジェット病と呼び、これについて説明します。
症状
60歳以上の高齢者に多く発生します。陰部や腋などに赤くて湿った病変が生じ、表面にかさぶたがついたり、痒みがあったりします。見た目が湿疹やたむしに似ていることがありますが、薬を塗ってもよくならず、少しずつ広がっていきます。赤い病変の他に白色や茶色の病変も混じることがあります。進行すると病変内に結節や腫瘤ができたりします。
治療
原則として手術で切除します。病変の境界より1~3cm離して切除します。欠損が大きくなるため、多くの例でその被覆に植皮や皮弁などの再建手術が必要です。所属リンパ節に転移がある場合は転移の程度によりますがリンパ節郭清が必要です。本病変はときに病変の境界を見極めるのが難しい例があり、再発や転移も少なくありません。
リンパ節転移が広範囲に及んだり、臓器に転移がある場合は、化学療法を主体とした治療が行われます。