根治的前立腺全摘除術は前立腺がん治療の中心となる外科的治療法で、早期前立腺がんにおける成績はすこぶる良好です。
この治療では、患者さまの余命や手術に伴う侵襲を考慮し、70歳以下に適応年齢を絞る傾向にありますが、慈恵医大では75歳くらいまでの患者さまに行っています。副作用として、尿失禁やインポテンスなどが挙げられますが、慈恵医大では豊富な手術経験より副作用率はかなり減少しています。また、がんの部位によっては断端陽性(がんが残ってしまうこと)となる可能性もありますが、このときは放射線療法や内分泌療法による追加治療をお勧めしています。
根治的前立腺摘除術には大きく分けて恥骨後式前立腺摘除術(RRP)と腹腔鏡下前立腺全摘術(LRP)の2つがあります。
下腹部を縦に約15cm切開して、直視下に前立腺とともに精嚢を一塊として摘出し、膀胱の出口と尿道とを吻合する手術方法です。前立腺全摘除術に先だって骨盤内リンパ節摘出術を行い、リンパ節転移の有無を顕微鏡で検査します。早期前立腺がんに対する最も標準的な治療法の1つです。
皮膚にあけた3〜5ヶ所の穴からカメラと細長い手術器具を使用してお腹の中に炭酸ガスを注入して膨らませて体の外から前立腺とともに精嚢を一塊として摘出し、膀胱の出口と尿道とを吻合する手術方法です。出血量が少なく体に対する負担が少ないことが利点です。リンパ節に転移がないと考えられる、より早期のがんを対象にしています。
恥骨後式根治的前立腺全摘除術
腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術