最近、前立腺がんは急ピッチで患者さまが増加しており、その診療は高度専門化しまた多様化しております。このように昨今の前立腺がん診療が拡大し続けるなかで、大学病院などの基幹病院と医院・クリニックなどの診療所が、それぞれの役割を担い密接な診療連携を通して、適正かつ質が高く、効率的で円滑な医療を提供し、患者さまに一層満足していただけるような地域連携システムを構築することが切望されます。
東京慈恵会医科大学附属病院(慈恵医大病院)が所在する東京都港区では、2006年度からPSA測定による前立腺がん無料検診が導入されました。これを契機として私たちは医療機関の機能分化と疾病管理体制を確立することを目標に、国際医療福祉大学三田病院および港区をはじめとした診療所とともに、前立腺がんに対する地域連携診療ネットワーク:CaPMnet(Cancer of the Prostate Management Network)づくりに着手しました。すでに2007年4月からその運用を開始しています。
この地域連携ネットワークCaPMnetでは、私たちの大学病院と診療所、すなわち「かかりつけ医」の役割を明確化しています。すなわち、かかりつけ医よりご紹介をいただいた患者さまに対して、私たち大学病院は前立腺がんに対して専門的で質の高い医療を提供いたします。その後は紹介元の診療所に戻っていただき、「かかりつけ医」の先生方のもとで患者さまの普段の健康管理をしていただくとともに、前立腺がんの経過観察や継続治療も合わせて行っていただきます。大学病院では高度で質の高い医療を担い、診療所では日常診療を継続していただき、効率的で診療待ち時間が少なく、かつ患者さまには不安や心配もなく満足して継続診療を受けていただけるような病診連携体制を作り上げて行きたいと考えております。