心とからだ
将来のことが心配になったら
更新・確認日:2021年7月7日
人は、自分はなぜ生まれたのか、なぜ・何の為に生きるのか、という疑問を持つことがあります。特に思春期・若年成人(AYA)世代は、人生の様々な出来事を通じて、「自分とは何か」について模索する時期と言えます。この問いについて意識する程度は人によって様々ですが、「がん」の診断が、このような問いについて深く考えるきっかけとなることがあります。
AYA世代にがんを発症した場合には、これらの問いに加えて「なぜ自分が、この時期にがんになったのか?」という大きな問いを抱くことでしょう。しっくりと受け入れられる答えはなかなか見つからないかもしれません。また、問いの答えが見つからない時に、前向きな答えを見出しているAYA世代のがん体験記などを読むと、自分が未熟であるかのように感じてしまうかもしれません。それぞれがそれぞれの形で、時間をかけながら答えを探している人が多いと思います。生に関する大きな問いを大切にしながら、実際の生活面では以下のような点について丁寧に考えることが出来るとよいと思います。
将来を悲観しすぎる必要はありません
人生経験豊富な大人や高齢者であっても、検査・治療を乗り越えるのが難しいこともあります。ましてや、多くのAYA世代はがんと言う診断だけでも非常に大きな衝撃を受けるでしょう。また、検査や入院で社会から切り離された生活を送っていると、治療が終わった後の生活についてイメージできなくなってしまい、将来について悲観的な気持ちになることがあるかもしれません。がん治療には程度の差はありますが、様々な後遺症が残る場合もあります。それらが「可能性」であっても不安が高まり、将来が閉ざされてしまうように感じられることもあるでしょう。しかし実際には、がんを経験したAYA世代の中には、病気になる前とあまり変わらない生活を送っている人がたくさんいます。生活が大きく変化した人でも、時間をかけて、折り合いをつけて暮らしている人もいます。そのような人もいることを、心のどこかに留めておいてください。
将来の夢と目標をすぐにあきらめないようにしよう
がんとわかったからといって、すぐに退学を決めたり、将来の夢や目標をあきらめたりする必要はありません。高校・専門学校・大学等では、がんを発症した生徒・学生への対応経験がある教職員はほとんどいないのが現状です。一つ一つのお願い事が、その学校にとっては初めての経験になりますが、前例のないことが良い解決策を導くこともあります。健康面や進路の不安などで困った時は、教職員に相談してみましょう。病院では、ソーシャルワーカー(がん情報サービスへリンク)やがん相談員に相談してみるのもよいでしょう。すぐに決められない時は、可能な限り結論を先延ばしにするのも一つの考えです。
仕事をしている人は、当ウェブサイトの「キャリアプラン」 も参考にするとよいでしょう。
専門職にアドバイスを求めてみましょう
家庭・学校・社会生活での人間関係をどう維持するかについては、他のAYA世代の治療生活をよく知る看護師・ソーシャルワーカー(がん情報サービスへリンク)、心理士(がん情報サービスへリンク)などの専門職のアドバイスも役に立つ事があります。学業・仕事、趣味など自分らしい生活や人間関係を維持するためには、病気について他の人に説明する必要があることも出てくるでしょう。まずは、自分の思いや希望を医療者に知ってもらい、自分らしい生活を維持するための情報や手助けを求めてみましょう。信頼できそうな人を見つけ、自分の思いや考えを話すことは、自分を取り戻すための大切な一歩です。
同世代の仲間がいることも大切です
この世代のがんはとても稀(まれ)であるため、入院しても同じ世代の人と出会うことがなかったり、病気とどのように向き合っていけばよいのかについて、同じ立場で話し合ったりアドバイスをもらえる機会が少ないと言われています。しかし、若い患者同士が自然な形で出会う場を設けていたり、イベントを開催している病院もあります。また、全国にはAYA世代のがん経験者が集まるイベントや支援グループが多数存在します。同世代のがん経験者に会ってみたいと言う気持ちになるまでには時間がかかるかもしれませんが、仲間との出会いを求めてみて「良かった」という人は、たくさんいます。
参考文献
- 平成27-29年度厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)「総合的な思春期・若年成人(AYA)世代のがん対策のあり方に関する研究」班編. 医療従事者が知っておきたい AYA世代がんサポートガイド. 金原出版; 2018.
- AYAがんの医療と支援のあり方研究会編(ウェブサイト). AYA(閲覧日2018年9月5日)