第96回
2012年11月26日

死因究明2法についてAi学会としてなすべきこと

千葉県がんセンター 画像診断部
髙野 英行 先生

死因究明2法とは、

死因究明2法とは、平成24年度第180回国会にて、衆参議院を通過し、平成24年6月22日交付された「死因究明等の推進に関する法律」(「死因究明推進法」と略す)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/180/pdf/t051800121800.pdf
「警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律」(「警察関連死因法」と略す)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/180/pdf/t051800131800.pdf
の二つのことである。

「死因究明推進法」の要旨は、「我が国において死因究明及び身元確認の実施に係る体制の充実強化が喫緊の課題となっていることに鑑み、死因究明等の推進に関する施策についてその在り方を横断的かつ包括的に検討し及びその実施を推進するため、死因究明等の推進について、基本理念、国及び地方公共団体の責務並びに施策の基本となる事項を定めるとともに、必要な体制を整備することにより、死因究明等を総合的かつ計画的に推進しようとするものである。」

「警察関連死因法」の要旨は、「警察等が取り扱う死体について死因又は身元を明らかにすることを通じて、死因が災害、事故、犯罪その他市民生活に危害を及ぼすものであることが明らかとなった場合にその被害の拡大及び再発の防止その他適切な措置の実施に寄与するとともに、遺族等の不安の緩和又は解消及び公衆衛生の向上に資し、もって市民生活の安全と平穏を確保するため、当該死体について、調査、検査、解剖その他死因又は身元を明らかにするための措置に関し必要な事項を定めようとするものである。」

両者の違いは行政解剖か司法解剖かの違いに似る。

両者の違いは、警察取り扱うかどうか決まっていない死因究明であり、後者は警察が取り扱うことが決まっている死因究明である。行政解剖と司法解剖の関係に似ている。
後者の場合は、警察が扱う、つまり、事件性のある死因究明であるため、それ自体にあまり論点が無いため、法律として「平成二十五年四月一日から施行する。」とある。しかも、「警察署長は、死亡時画像診断その他の検査を実施することができる。当該検査は、医師に行わせるものとする。」とある。現況のAiを含めた死因究明制度を追認するものである。「政府は、実施体制の充実その他必要な体制の整備を図るものとする。」とあるが、費用負担については、記述がない。

「死因究明等の推進に関する法律」は、実はまだ何も決まっていない2年間の時限立法

一方、「死因究明推進法」は、医療関連死などを含むため、論点が数多く含まれるため、決まったことは、「内閣府に、特別の機関として、死因究明等推進計画の案を作成すること等の事務をつかさどる死因究明等推進会議を置く。」だけである。つまり、これから、死因究明のための法律を作るための会議を作りましょうと決めただけである。しかも、2年間で失効する時限立法である。

この死因究明等推進会議の中で、死亡時画像診断(Ai)に関して、診療放射線技師が撮影し、放射線科診断医が読影し、適切な費用負担をすることを訴えていかねばならない。そうしないと、現状の行政解剖の様に、やることは決まっているが、費用が出ないという状況が待っている。
これを機会に、病理学会もAi学会、放射線学会と連携し、費用負担を訴えるべきであるが、その声は聞こえてこない。

2つの法律に対する附帯決議

平成二十四年六月十四日参議院内閣委員会にて、上記2法案に附帯決議がなされた。
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/180/pdf/55180120.pdf
関連法制の見直しを含めた幅広い検討を行うこと。」「法律に規定された調査等の件数等の。」「遺族等に対し死因その他の説明を行うとともに、遺族等からの記録等資料提供の要請に応えること。」
これは、医師法21条改正や司法解剖結果の開示の遅れによる医療裁判等を踏まえた日本医師会の働きかけと言われている。日本医師会が、診療関連死を含めた死因究明に積極的に関わっていく姿勢が見える。

Ai学会は、日本医師会と連携し、死因究明等推進会議に積極的に関わるべきである。

日本医師会の平成25年度概算要求によれば、「2.良質かつ安全、安定した医療提供体制の実現」の中で、「(2)死亡時画像診断(Ai)にかかわる予算措置の拡充【継続】(医政局・総務省)「死亡時画像診断システム整備事業」補助金を、小児や心肺停止状態で救急搬送後の死亡例等の死因究明における解剖前スクリーニングとして、死亡時画像診断を実施しようとするすべての医療機関が利用できるよう拡充する。さらに、少なくとも小児の不慮の死亡例すべてについては、Ai の撮影、読影にかかる費用を国庫負担とし、特に児童虐待事例の発見と防止をめざす。」としている。
死因究明等推進会議における、発言力を考えれば、日本医師会と連携し、積極的に協力していくことが重要である。