福井大学 Aiセンター開設2年を振り返って
(放射線技師からの提言)
福井大学のAiセンターの開設は、平成23年10月であるが、平成22年9月より、特定診療科対象の解剖症例に対してCT撮影を実施しており、平成22年9月から平成23年9月まで病理解剖は25件、法医解剖22件実施した。MR撮影は病理8件、法医2件であった。救急部でのAi-CT撮影は、従来から臨床機で行っており、23件であった。平成23年10月より診療科の枠を取り払い、全科の剖検症例にAi撮影を開始して、平成24年10月までのCT撮影件数は、病理解剖は20件、法医解剖39件であった。CT撮影のみが9件で、平成24年4月から法医依頼のCT撮影のみの件数が増えている。
福井大学のAiセンターの特徴は、動物実験の撮影も可能なことで、ヌードマウス、ミニブタなども43件行っている。また、毎年、系統解剖前のご遺体の撮影を行っており、平成23年度は17体、平成24年度は15体行い、2体の胸部MR撮影も行っている。病理解剖後の臓器のみの撮影も積極的に行い、脳外科ではCT撮影10件、MR撮影2件、病理解剖でのMR撮影は、16件行っている。
開設して間もない頃は、撮影件数も少なかったが、平成24年4月から、法医解剖前のCT撮影、警察依頼のCT撮影のみも増加し、休日の撮影依頼も多くなり、平均すると2ヶ月に一回は休日の携帯電話に着信があり、ますます増える傾向にある。
以上、全撮影件数310件を超えた経験からの提言させてもらえば、診療放射線技師もご遺体を撮影するだけではなく、“ある程度の読影を行うべきではないか”と思う。「読影」とうと語弊があるがかもしれないが、近年、厚生労働省からの報告書1)にもあるように、画像診断における読影補助が求められており、Aiについても画像診断報告書の作成などは行わず、読影の補助を行っていくべきだと思う。「読影の補助」がどこまでを意味するかは議論のあるところかもしれないが、放射線技師も、ただ撮影するだけではなく、読影の補助ができるようになるために、Ai学会や、他の関連した学会に参加して、知識を得る努力をするべきだと考える。新潟市民病院放射線診断科、高橋 直也先生の「死亡時CT診断のためのチェックシート」は、読影の補助として貴重な資料であり、大変参考になると思う。
また、剖検後の臓器撮影や臓器の切り出しに携わった経験から、放射線技師も研究対象の臓器においては、画像だけではなく、直接に臓器を見て触って、解剖を知る事の重要性を感じた。技師教育に中にも、全部の臓器は無理でも、ひとつの臓器を直接に見てからCT、MRなどの画像教育に入るべきではないかと思う。
- 1) 「チーム医療の推進に関する検討会 報告書」厚生労働省(平成22年3月)