地方のAi
日本で行われているAiは、心肺停止状態で急患として搬送され、蘇生できなかった症例に対する死後CT検査が多くを占めます。全国の救命センターを有する施設の9割でAiの経験があるとされます。多数の心肺停止患者が搬送されるような救命センターでは、Aiの経験も豊富だと思います。診療にあたる救命医などの医師だけでなく、診療放射線技師や看護師も、Aiをごく普通の検査として取り扱えるでしょう。Aiのプロトコールも決められていて、Aiを見慣れている医師も多いと思います。その一方で、一般病院の約4割でもAiが行われているとされます。特に法的な剖検制度が十分でない「地方」の救急領域で多く行われている傾向があります。
筆者が住む新潟県や隣県である山形県の医師と話をすると、地域の中規模病院でも、救急患者に対するAiが行われていると耳にします。山間部や離島などでは、都市部の救命センターへ搬送される心肺停止患者は限られます。救急医療の大半は地域医療を担う中規模病院が担っています。病歴不明で死亡し、これまでなら「心不全」と診断されていた例でも、より正確な死因を要求されるようになってきました。一地方の個人的な感想ですが、Aiは想像以上に広い範囲で行われているようです。中規模病院では救命医や放射線科医が常勤していない場合があり、内科や外科の医師がAiを行っています。検査件数も多くなく、見慣れない画像を診断することになります。実際に、友人の外科医は「Aiガイドラインを活用している」と話していました。Aiを集中的に行う施設があることが理想ですが、地方の現状では困難です。
Ai学会員である皆さんは、Aiに対して興味や知識があるでしょう。また、救命医や放射線科医といったAiに接する機会の多い医師もAiの重要性を認識しています。これからはそうしたAiに関心のある医師だけでなく、一般臨床医もAiに関わる機会が生じてくると思います。
こうした状況では、判断に困った場合に相談できるAi情報センターの存在は貴重です。また、Aiの最初のフィルターともいうべき診療放射線技師の役割が重要になるでしょう。Aiに限らず、優秀な放射線技師は臨床情報から検査の本質を理解し、異常所見を認識しています。検査を担当する診療放射線技師がAiの良好な画像を撮像し、その上で基本的な所見の知識があれば、Aiに慣れていない臨床医にも大きな力となります。
Aiが周知される最初の段階を経て、ここ最近は新しい試みを行う大学病院や多数の症例を行っている施設などの視点で語られてきました。今後は、これまでの経験を還元し、より小さな一般病院などにも目を向ける必要も出てくるのではないかと考えています。