一般病院でのAiの適応
Aiを導入した施設が増加しており、Ai学会設立時から学会にかかわっているものとしては喜ばしい限りです。設立当初は法医学領域での参加が多かったのですが(註1)最近は救急医学にかかわっている領域での参入が多く、臨床の先生方にも普及していることを実感しています。CPAで搬入される患者さんや病院外で死亡した症例では、より正確な死因解明のために死後画像撮影を施行し、必要であるならば解剖に供することは当然のことと思われ、よりいっそう、Aiが普及していくものと期待しています。
当院では2002年に倫理審査委員会にて承認を得、以後計16例の死後画像撮影を行い、8例の病理解剖をあわせて施行しています。これらは全例入院患者さんであり、多くの先生方の目的とするところから少し離れているかもしれません。が病院内で入院患者さんがお亡くなりになった場合もAiを積極的に施行していこうと考えている施設や先生方に1つの指標としていただけるならと思い当院での傾向を提示します。
- 死後画像撮影はすべて勤務時間外に行われている。
- CTに関しては全例で施行されたがMRIに関しては撮影時間や技術的な問題で撮影できない症例がある。
- 5例は臨床的には死亡診断書作成困難な症例であり、1例をのぞき死後画像撮影により死亡診断書を作成できた。
- 臨床診断の確定している症例では、死後画像診断、主病理解剖診断ともに大きな違いはなかった。
- 臨床診断の不確定な症例では主病変部位に相違はなかったが診断に相違が見られた。
- 臨床的診断をつけることが困難であった症例では臨床診断と画像診断,病理解剖診断でも相違が生じ、特に消化管系の病変での相違が目立つ傾向にあった。
以上の6点が見出されています。これらのことから、
A)臨床診断の確定している症例(死亡診断書を作成することが容易にできる症例)に関しては画像診断,病理診断との相違は少なく、死後画像撮影を行う必要はない。
B)臨床診断の不確定な症例(臨床診断に(疑)のつく症例)では死後画像撮影は主病変部位の推定に非常に有意義な検査であると考えられた。
C)臨床診断困難症例(死亡診断書の作成が困難な症例)では死後画像診断だけではまだ不十分であり病理解剖が必要であると考えられた。
またB),C)の臨床診断不確定症例、臨床診断困難症例で病理解剖も施行した症例は全例病院CPCの症例となり教育面でもかなりの貢献がありました。
ただし当院では病理解剖前の読影は主として主治医と病理医にゆだねられているのが現状です。そのため読影能力が低いことも1つの要因と思われ、画像撮影後放射線科医による読影を行えば診断精度は向上すると考えられます。しかし全例時間外の撮影であり、病理解剖前あるいは死亡診断書作成前に読影を行う場合放射線科医の時間的・精神的な負担はかなり大きくなるものと思われる。また救命救急の現場でも放射線科の協力によるしっかりした読影が必要になってくると、より放射線科の負担は重くなり今後、Aiの読影に関してはいろいろな問題が生じてくるものと思われます。そのためにも先日発足したAi情報センターの活動への期待は大きく、今後の活動に関して注目しています。
註1:事務局より訂正 設立当初、入会者は多い順に、1病理医、2放射線科医、3法医学者 でした。