第75回
2009年11月30日

医学・医療に貢献するAiシステム構築に向けて
-Autopsy imaging(Ai)における診療放射線技師の役割-

佐賀大学医学部附属病院
阿部 一之 先生

社)日本放射線技師会Ai活用検討委員会の委員長の立場で、社会から評価されるシステム構築に向けた「X線CT撮像等のガイドライン案―Aiにおける診療放射線技師の役割」を策定したので、概要と今後の展開について述べる

1. 全国規模でのAi実施の実態調査と会員への啓発活動

日本放射線技師会では「Ai活用検討委員会」を立ち上げ(平成20年11月)、会員への実態調査を行なった。134施設でAiの実施が確認されたが、施設内での運用ルールの取り決めがなされていなかった施設が89%、また、86%がCT撮像のみなど、日本全体でのAi実施の実態が浮き彫りになった。さらにAi講演会を2回開催し、Aiに対する認識を深め、Aiにおけるガイドライン作成が最重要課題としてただちに取り組んだ。
次の段階として日本医師会「死亡時画像病理診断(Ai)活用に関する検討委員会」宛てに以下の内容の意見書を提出した。

  1. 既存のX線CT装置等を兼用する場合に、医療機関内でコンセンサスが必要である。
  2. 装置の運用と保守点検、放射線防護と被曝管理体制にかかる費用の負担、撮像に関わる診療放射線技師の必要数及び人件費についての検討と予算化が必要である。
  3. 装置の性能と撮像のプロトコールの標準化、撮像に関わる診療放射線技師に対する教育・研修システムの整備が必要である。
  4. 日常診療業務が多忙な診療放射線技師が負担を強いられる事態は避けなければならない。

2.X線CT撮像等のガイドラインの策定

本委員会では、「Ai(Autopsy imaging:死亡時画像診断)における診療放射線技師の役割- X線CT撮像等のガイドライン-中間報告(院内実施)」として、Aiガイドライン案を下記の内容で策定した。

  1. Ai実施時の基本事項、① Ai実施に向けての対応について②Aiのオーダ発生から実施までの流れ③医師、看護師などへのアナウンス方法 ④Ai実施時の留意点、
  2. 感染防止、
  3. 撮像技術の標準化①CT撮像ガイドライン②MRI撮像ガイドライン③一般撮影(小児)ガイドライン
  4. 画像データの保存・管理 ①フィルム運用の場合②フィルムレス運用の場合
  5. 教育・研修システム①業務に直接必要な教育・研修(Ai検査技術、Ai画像処理・画像管理、Ai画像診断)、 ② 基礎知識として必要な教育・研修(生命倫理学、死生学、微生物学、感染症学など)、③関連分野として必要な教育・研修(病理解剖、法医解剖、死後看護の理解)。

3.Aiをめぐる課題

日本放射線技師会雑誌の毎月号で「Ai特集論文」を掲載して会員への意識啓発と最新の知識の提供に努めている。しかし、Aiをめぐる問題点として、Aiに関するテキストも少なく、最適な画像診断や撮像法等について学ぶ機会が少ないのが現状である。
そこで、日本放射線科専門医会・医会Aiワーキンググループと共同して「Aiガイドライン」を出版した。早急な課題として、Aiについての専門的な知識と技能を高めるための教育・研修システムを構築して、更なるスキルアップを目指すための制度設計に取り組む所存である。
「死因究明制度」の構築に向けた「Ai」という新たな取り組みが緒についたばかりである。日本放射線科専門医会・医会(Aiワーキンググループ)、Ai学会、並びに日本医師会に委員を派遣して医学・医療の専門分野と連携を深めながら、社会から評価される診療放射線技師の役割はAiにおける医学・医療に貢献することにあると考える。