第65回
2008年10月1日

検討会に出席して学んだもの

鹿児島厚生連病院
鐘撞 一郎

2007年に学会に入会いたしました、鹿児島の鐘撞です。88年卒の放射線科医です。奈良医大で腹部IVRを、沖縄県立中部病院で救急放射線を勉学する機会に恵まれましたが、現在でも鹿児島大学の医局員として、現在の職場に出張しております。

2008年2月の第五回総会に出席し、皆様の真摯な討論にinspire され、本年の夏季症例検討会に、症例提示させていただきました。症例は数年前(以前の勤務先)の症例です。

乗用車の自損事故の後部座席に同乗していた、40代男性が、DOA の状態で、救急搬送されました。担当医は、挿管・血管確保を行い蘇生を試みましたが、昇圧剤他に反応しませんでした。担当医は、外観上外傷も目立たず、所謂ショック死として、死亡診断書を作成することに違和感があり、頭部から骨盤部までのCT をオーダーしたようでした。

放射線科医の小生がCTを読影いたしましたが、脳出血や心タンポナーデ、大動脈損傷、腹腔内血腫などの致死的病態を同定できませんでした。そこで、担当医は、死体検案書を作成し、警察に解剖を依頼いたしました。警察の結論は、一酸化炭素中毒死でした。

今回私は、CT所見陰性症例として、提示させていただいたのですが、検討会では、種々の画像所見をご教示いただきました。大変ありがとうございました。勉強になりました。

帰鹿して、画像を返却に行った際に、当該病院の放射線技師、医師に検討会での所見の読み方を伝えたところ、みんなにも大変感謝されました。彼らは、これからも県内の病院をローテートしますので、私が持ち帰ったことを、県内に広めることが期待できると考えています。特に、正円形のIVCのimpactが強かったようです。

私個人としては、通常半日くらいしてから、皮髄境界やレンズ核が不明瞭になるのに、本症例では、受傷から2時間以内にCT 施行されているのにもかかわらず所見が見られていることを、自省を含めて、他の放射線科医に伝えたいと思いました。死因がAi画像上特定できないことが、むしろ解剖へのハードルを低くするということにも、感慨をもっています。

事故死(ショック死)として、(真実と乖離した)死亡診断書を作成しなかった担当医は、真実を追究する医療人として、私自身も真似たいと思いますし、私は画像診断医としても、これからも自己研鑽を積まねば、と考えます。

口幅ったいですが、患者さんのためにも、自身のAi画像の読影能力を高めないと、せっかくのAi画像も、患者さん(方)の利益として、適切に評価されないと痛感しております。皆様方、今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。